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15,聖猟騎士団。

 


 聖猟騎士団は気づいたらいました。認識を阻害するアビリティでも使われたのでしょうかね。


 城郭都市ロウデの各ブロックを見張れる位置に、騎士団員たちが立っています。彼らの実力は、冒険者ギルドランクでいえば、最低でもCランク以上。冒険者と違って、選抜試験をクリアしないと一員にはなれないと聞きます。


 ボードさんが舌打ちして、

「畜生。まさか騎士団どもが来るなんて。とんずらしたほうがいいんじゃねぇかな」

「ご安心ください、ボードさん。騎士団は、ボードさんのような小物の元盗賊は相手いたしませんので」

「……サーリアさん。あんたって、ドS成分も持ち合わせていますね?」

「はい?」


 都市の中心にある広場に、騎士団が市民を集めているようです。

 わたくしたちも広場まで向かいました。城郭都市の広場だけあって、かなり広々としたところですね。


 ふと見ると、ルーク君とそのご両親の姿がありました。

 ルーク君が頭を下げてきたので、わたくしは手を振って挨拶します。


 すると、フルフェイス型騎士団員の一人が、こちらにずんずんと歩いてくるではありませんか。


「貴様! 貴様、そこのお前だ!」

「わたくしですのね?」


 ところが、わたくしではなく、ルークくんでした。わたくしなぞは、眼中にもなかったようで、突き飛ばされてしまいました。

 あぁ、こんなぞんざいに扱われるなんて、いったいなんのご褒美でしょう♡ 


「弟がグール感染していた者だな。来い」

 と、騎士団員がルーク君を連行しようとします。

 父親が「おい、息子から手を放せ!」とつかみかかります。

 騎士団員は裏拳で、父親の顔面を殴りつけました。


 あら、羨ましい。

 ですが、これはまずいですね。STR数値からして、騎士団員の裏拳を無防備にくらえば、即死もありえます。


「父さん!!」


 悲鳴を上げるルーク君を抱えて、騎士団員が歩いていきました。

 わたくしはルーク君の父親のもとに駆けよりまして、容体確認。顔面は潰れていますが、息はあるようです。

《ゴッドヒール》は目立ちますので──騎士団の目がありますからね──《エンジェルヒール》で、回復いたしましょう。


「大丈夫ですよ。すぐに全快いたしますから」

 

 ところが治癒の途中で、肩をつかまれました。ルーク君を連れ去ったのとは別の騎士団員が、いつのまにかわたくしの後ろにいました。


「おい、お前、《エンジェルヒール》が使えるということは、〈セイント〉か? ちょうどいい。来てもらおう」

「少々、お待ちください。こちらの方の治療を優先させていただきますよ」

「騎士団指令だ。市民に逆らう権利はないぞ」


 騎士団員が肩を握る力を強めてきました。うーん。わたくしを悦ばせたいのなら、肩が潰れるくらいやっていただかないと。中途半端は嫌われますわよ? 

 その騎士団員の腕を、エミリさんの槍が払います。


「サーリアさんは、正式な冒険者よ。ただの市民と一緒にしてほしくないわね。そしてサーリアさんに乱暴するつもりならば、このあたしと、このおじさんが黙ってないわよ」

「な、なに、おれもか?!」


 そばで様子見していたボードさんが、ぎょっとしています。ですがここは拳をかためて、ファイティングポーズ。


「だが、おれも騎士団は嫌いなんだ。こうなったら、やってやろうじゃねぇか!」

「そのいきよ、おじさん!」


 ボードさんって、盗賊していたわりには、根が『人がいい』のですのね。もしや、ボードさんもわたくしの仲間? 虐めてほしい人?


『貴様の仲間にされたら、この間抜けな盗賊も気の毒だ』

 と、数時間ぶりに〈獄神剣〉さんの声が脳内でしました。

「あら、〈獄神剣〉さん。長らく留守にしていたのですか?」

『いや、貴様がほかの者と会話している間は、黙っていたのだ。われも会話に参戦すると、ほかの者たちが混乱すると思ったからな。貴様はわれとの会話時も、声に出しているが、われの声をほかの者は聞こえぬからな』

「はぁ。呪われた剣ですが、気がきく方ですのね。変な呪われた剣ですね」

『貴様に言われたくはない。そんなことより、どうするつもりだ? 一触即発のようだが。まさか騎士団にボコられたいからと、このまま放置するつもりではないだろうな? 貴様はともかく、貴様の新しくできた仲間は死ぬぞ』

「あら、ボードさんもエミリさんも、なかなかの使い手だと思いますのよ?」


 とはいえ、わたくしも、いまここでひと騒動起こすつもりはありません。


「こちらのかたの回復は終わりました。同行いたしますわ、騎士団のかた」


 ですが、すでに剣を抜いていた騎士団員は、すっかりバトルする気のようですね。


「いいや。われら聖猟騎士団に歯向かった以上、ただではおかん。斬り捨ててくれる!」


 では、わたくしが斬られましょう♪

 ここのところ肉体的苦痛という喜びが足りないと思っていましたので──ところが、斬り捨てられたのは、その騎士団員のかたでした。


「あーら?」

「な、なぜ、です、か……」

 と、背後から斬られた騎士団員が倒れます。回復は──いらないですね。

 ここで回復してしまうと、空気を読め、と怒られそうです。


 そして、別の騎士団員が歩いてきます。いま仲間の騎士団員を斬り捨てたたですね。

 いえ、厳密には『部下』を斬り捨てたのですか。この騎士団員の鎧には、隊長であることを示す紋章が輝いています。

 そしてフルフェイス型ではなく、爽やかな笑顔を見せています。


「これは、私の未熟な部下が失礼した。私はアベル。この伍番隊を率いている者だ」


 ああ、伍でしたか。それは残念です。


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