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13,パーティ結成いたします???

 

 エミリさんには、死ぬほど拒否されましたので、同性婚することは諦めました。


 それにしても、そんなに嫌がってくださるなんてエミリさん、尊いですわ。尊い!


「あんたって見た目は美女路線なのに、頭はおかしいのね」

「言葉責めしていただけるとは、エミリさんはお優しいかた。そんなに、わたくしを惚れさせたいのですの?」

「……それにしても、あんたが生きていたからくりは説明してもらってないわよ」


 わたくしは、《レイズ》によって蘇ったことを話しました。べつだん隠すことでもありませんし。


「死者蘇生魔法の《レイズ》っですって……。他人には使えないということだけれど、自分で自分に使えるほうが怖いわよ。それってつまり、あんたは死を超越しているってことでしょ? にわかには信じられないわ」


「でしたら、信じなくても結構ですのよ。わたくしは偽りは述べたくなかったので、真実を語ったまでのこと。そうですね。では、わたくしだと思った肉塊は、わたくしではなかった──そう考えてもよろしいのではないでしょうか? わたくしは死んではいなかったので、《レイズ》で蘇る必要もありませんわ」


 エミリさんは腕組みしまして、

「うーん。その説明のほうが現実味はあるんだけれど。しっくりはこないのよね。なぜか、あんたが《レイズ》で肉塊から蘇った──という話のほうが、しっくりくるのよ。あんたを前にしているとね」

「あら、そうですの?」


 このときボードさんは、自棄になったようにビールを飲んでいましたが。

「なぁ、嬢ちゃん。このサーリアさんって、人はな。イカレているのと同じくらい、白魔法の実力は確かだぜ。おれの目の前で、あんたを助けたのは、この人だ。蛆虫みたいに這ってきたあんたをな」


 エミリさんはハッとした様子で、

「蛆虫……そう、なの。確かにリザードマンたちに両手足を切り落とされて、いたぶられたような記憶があるわ。あなたが救ってくれたのね。サーリア、感謝するわ。ありがとう」

「いえ、わたくしは元〈セイント〉として、当然のことをしたまでです」


 リザードマンたちにいたぶられていたことを羨ましがっては、いけませんね。……ああぁ、羨ましい。


「ようやく分かったわ。リザードロードの生首を、あの場においていったのも、あなたなのね?」

「え? ああそのことですの。確かに、リザードロードの生首はおいていきましたが。無事に換金できました?」

「……どうして?」

「はい?」

「どうしてそんな、博愛主義的なことを? 誰に頼まれたのでもないのにリザードロードたちを駆逐し、その名声と報酬を他人であるあたしに渡し、自分は何も得ることがなく立ち去るなんて」

「それは名声や報酬に興味がないからですのよ」


 興味があるのは、気持ちのよいことだけですものね。


 たとえば名声など得てしまっては、誰もわたくしを虐げてくれなくなってしまいますわ。

 そんなことは拷問ですもの。

 念のため言いますと、この『拷問』は、気持ちのよくない『拷問』ですのよ。

 たしかに名声を得てから、わざと名誉を失墜することをしでかし後ろ指さされまくる──というのもゾクゾクしそうなプレイではありますが。

 ただやはり手順がありすぎますし。


「……サーリア。あなたのおかげで、あたしの冒険者ランクが上がったわ。冒険者ギルドは、あたしがリザードロードたちを駆逐したと思っている。あたしも、あえて否定はしなかった。誰がなんの目的で、あたしに手柄を譲ったのか分からなかったから」


「新しいパーティを築くにあたって、あなたのランクが高いことはプラスに働くはずですわね」


 エミリさんは仲間たちを皆殺しにされてしまいましたが、まだ冒険者として果たすべきことがあるご様子。

 でしたら、エミリさんの冒険者ランクが高く、リザードロードを駆逐したという功績は、新たなパーティ仲間を集める助けとなるでしょう。


「ええ、そうね。それも、お見通しだったのね。あたしは、リョウと約束したの。〈牙突の天〉のような、SSRパーティになるって。リョウは死んでしまったけれど、その志はあたしの中に残っている」


〈牙突の天〉ですか。ふうむ。わたくし、そこから脱退したことを話すべきでしょうか? いらないですね、そういう情報は。


「では、あなたの健闘をお祈りしますね」

「まって。これから、どうするの?」

「はい、喉も潤しましたし──グールを探そうと思います」


 わたくし、生きたまま食べられるというのは、どんなに気持ちがいいものでしょうか? 

 いまから、楽しみ過ぎて、あ、よだれが。


「じゅるり」


「分かったわ。あなたの目的は、名もなき正義の味方なのね。ここでも、町がグール汚染される前に、グールを駆逐しようというのね。さすがだわ」

「はーい?」


 ボードさんがうんざりした様子で、

「それは勘違いだと思うぜ」


「酔っぱらいは黙っていなさい。サーリア。あたしを、あなたの仲間にさせて! あたしと、あなたで、パーティを結成するのよ! そして、いつかはあの〈牙突の天〉よりもビッグなパーティになるの!!!」


 困りましたね。こういう『困った』は、とくにと気持ちよくありません。

 真面目に困るだけですね。

もし良かったら、ブックマークや評価をしていただけると嬉しいです。感想もお待ちしております。ありがとうございました。

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