10,暴漢さん。
次の目的地は、ひとまず城郭都市ロウデといたしました。
ロウデまではいくつかルートがあります。
まず王国が整地している公道でして、キャラバンなども利用する運送路ですね。人通りが激しくにぎわっていますが、わたくし、今回は人通りの少ない道を選ぶことにいたします。
そちらのほうが、山賊などに狙われやすいでしょうか? 暴漢のかたに虐めてほしければ、夜道は一人で歩くものです。
それくらいの協力は大事でしょう。
そして、ロウデを目指して三日目の夜には、実際に暴漢のかたが現れまして、わたくしを襲ってくださりました。
わたくしの腹部を殴りつけると、短剣を突き付けてきまして、
「大人しくしやがれ。じゃねぇと、その可愛い顔に一生消えねぇ傷をつけてやるぜ」
それから、わたくしの衣服をはぎとりまして、裸にむいてしまいます。暴漢さんはにやにやしまして、
「おい、隠すんじゃねぇ。へっへっ、いい身体しているじゃねぇか」
あぁ。この羞恥心、はじめてあう殿方に見られていけないところまでシカンされ、辱められる。なんて、ぞくぞくするのでしょうか。
「じゃぁ、さっそく楽しませてもらうとするかね」
「いえいえ。わたくし、まだ処女を失うわけはいきません。というのも、『はじめて』は、もっと創意工夫のできるかたにささげたいのですわ。ただ衣服をむいて凌辱する、というのは芸がありませんことよ」
「なにを言ってやがる! いいから股を開きやがれ! 初物なら、たっぷり楽しんでやるぜ」
「あら、ではわたくしが、まずは楽しませていただきますわ」
「なんだ、てめぇもその気になったのか、ならこいつを咥えてもらおうか」
暴漢のかたが、両足のあいだのを強調されました。あら、そんなにもしてほしいのですのね?
ご要望におこたえしまして、〈獄神剣〉さんの刃で、撫でるようにします。
とたん、それがきれいに鮮やかに切断されまして、暴漢のかたの両足のあいだから、ぽとりと落ちました。
「???????……………あ、あ、あ、お、おれの、おれの、あああアンんんんんんんんんギャャャャャあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ああああああああああああああああああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」
暴漢のかたは嬉しそうに叫ばれまして、転げまわります。わたくしはしばらく微笑ましく眺めていましたが、眠くなりましたので、ひと眠りいたしました。
朝ですね。
目覚めますと、暴漢さんがうつ伏せになって倒れていました。どうやら股間の出血によって、失血死されたようです。
『サーリア、貴様、昨夜は汚いものを斬らせておって』と〈獄神剣〉さん。
「あら、それは失礼ですわよ。わたくしのお父様もぶらさげていたはずですもの」
『うーむ。そういう話ではないような気がするのだが……』
その後は、第二の暴漢さんが現れることもなく、旅は平和(刺激が足りませんね)に過ぎ、城郭都市ロウデに到着いたました。
「ここの冒険者ギルド支部に行きまして、ぞくぞくしそうなクエストを受注するとしましょうか。ですが、お金がありませんね。これでは宿に泊まることもできません」
数日ほど汚物掃除の仕事を請け負いまして、資金を稼ぎつつ、精神も満たされます。
旅の期間もあわせて、八日ほどお風呂に入ることかなわず、道行く人から、嫌な顔で見られます。あぁぁ♪ この汚物を見られるような眼差し、素敵です。
素敵すぎて、失神しそうです。
ですが〈獄神剣〉さんから苦情が入りましたので(剣って嗅覚がありますの?)、宿に部屋を取ったあとに仕方なくお風呂に入り、身体を清潔にすることにしました。
「さて、さっぱりしましたし、何かめぼしいクエストを受注しにいくとしましょうか」
冒険者ギルド支部に向かう途中、路地裏で人肉を貪っている人間のかたがいらっしゃいました。いえ、これは。
『おい、あれは食人鬼だぞ』
「あら、そうでしたの。わたくし、グールは初めてみましたわ。モンスターではなく、死人ウイルスに感染した人間が、人を食らうことでなるのがグール。ふむ。お声をかけてみましょうか」
『貴様、いま[目の前で自分の肉を食われる悲劇はゾクゾクすることでしょう]とか思ったな?』
「さすが〈獄神剣〉さんです。わたくしたち、もう以心伝心ですのね?」
『……』
わたくしの気配を察知したようで、グールの方が食事をやめて、こちらを見やります。こうして近づきますと、まだ13歳くらいの子供ですね。
食べられていた方は、このグールくんと似ています。年齢は上のようですので、この子のお兄ちゃんでしょうか。
グールに感染し、実の兄を食らってしまうなんて。
あぁ、なんて悲劇なのでしょう!
「……ですが、わたくし、他人の不幸ではぞくぞくいたしませんの。残念ですわ」
『そこまで残念がるでない、この変態が』
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