表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/42

9,また会いましょうね。

 


 ボードさんが生きていましたね。

 手足を切断されて、人肉置き場に放り込まれていましたが。

 

 ほかの人肉は残念ながら命がないようです。わたくしもいまのところ、死者蘇生の《レイズ》は『自分限定』ですので、生き返らせることはできそうにありません。とりあえず、ボードさんに《ゴッドヒール》をかけて、手足を再生いたします。


「ボードさん、しっかりしてください。手足が戻りましたよ」

「あ、あああ、お、おれの右手左手右足左足、おおおおおお、あ、あいつら、刃の錆びたでかい包丁で切断しやがって。すぐに切断してもらえず、とんでもなく痛かったじゃねぇか」

「はい、気持ちよかったのですね♡」

「……サーリアさん、おれはもう、あんたに付き合うのはこりごりだ!」

「はぁ」


 ボードさんに同行を願ったのは、洞窟までのはずだったのですが。しかしながら、いまは何かに怒りをぶつけたいご様子。手足切断が気持ちよくないかたもいらっしゃるのですね。それくらい、わたくしも理解しているつもりです。そういう変わり者さんがいらっしゃることくらいは。


 その後、まだ気絶しているエミリさんに、二体のリザードロードさんの生首を置いておきます。これで討伐クエスト成功の報酬を受け取ることができるでしょう。


 エミリさんのお仲間はすでに殺されてしまったというので、せめて報酬だけでも受け取って、再起のための資金にしてほしいものですね。


「ではボードさん、わたくしたちも──あら?」


 ボードさんの姿がありません。どうやら先にお帰りになったようですね。では、わたくしも帰還するとしましょうか。


〈ガルダ洞窟〉から道は二つにわかれています。わたくしが暮らしていた王都に戻るより、ここは新たな町へと赴くべきでしょう。新たな出会い、新たな痛み、新たな苦痛、新たな気持ちよさが待っていることは間違いないのです。


 あら? 右手の崩壊現象がとまらず、胴体まで浸食していきます。どうやら常時 《ゴッドヒール》を使っていたことで、ついにMP切れを起こしてしまったようですね。


 それによって、〈獄神剣〉の『装備者の肉体を崩壊させる呪い』を中和することができなくなったのです。


 あああぁぁぁぁ全身が崩壊していく、この痛み、それを止めることができず、自らが肉塊になるのをただ見ていることしかできない、この悲痛と絶望感。

 なんて、気持ちが、いい♡♡♡♡。


 ──エミリ──


 エミリが目覚めると、手元にはリザードロードの生首が転がっていた。


「きゃぁぁ、な、なんなのよ、いったいこれは」

 見回すと、リザードロードやリザードマンのバラバラ死体が散乱していた。

「だ、誰が、こんなことを──」


 エミリが意識を失っている間に、上級パーティがやってきたのだろうか。このダンジョンの難易度は、推定より何倍も跳ね上がっていた。

 リザードロードという上位個体だけではなく、通常個体のリザードマンも、エミリが知っている個体よりも何倍も強かった。

 それらのリザードマンの群れを皆殺しにできたということは、よほど腕のたつ者たちのパーティだったに違いない。

 仮にソロだったとしたら、それはもうSランクの冒険者ということになる。


「だけど、どうして討伐の証であるリザードロードの頭部を置いていったのかしら?」


 エミリは、どうも記憶が曖昧だった。

 確か、リザードロードに致命傷を受けたはずなのだが──凄まじい痛みに苦しんだはずなのだが──それとも、すべては夢だったのだろうか。胴体を袈裟斬りにされていたはずなのに、いまはかすり傷ひとつない。


「そういえば、サーリアは?」


 やがてエミリは、サーリアの残骸を見つけた。

 通路に肉塊が落ちている。

 それがサーリアと分かったのは、肉塊自体では見分けがつかないが、まずその肉塊のまわりにある衣服。そしてサーリアが装備していたボロの剣が、落ちているから。


「サーリア……誰が、こんなエグいことを? ひどいわ……」


 エミリは、ボロの剣を手に取ろうとした。だが寸前でやめた。サーリアの遺品として持ちかえろうと思ったのだが、サーリアは望んでいないかもしれない。


「サーリア。あなたは風変わりな人だったけれど、嫌いじゃなかったわ。もっと付き合いが長ければ、親友になれたかも。残念ね……」


 エミリはリザードロードの生首二つ(かなりの重量)を持って、〈ガルダ洞窟〉を後にしたのだった。



 ──サーリア──


 やがて切れていたMPが満タンに戻りましたので、わたくしは《レイズ》を発動いたしました。わが肉塊が再構築されていき、復活いたします。

〈獄神剣〉を拾い上げまして、また肉体崩壊を《ゴッドヒール》で中和いたします。ところで中和はされていますが、全身への痛みは激しいのですよ。

 なんて、甘美なご褒美♡♡♡


「さ、〈獄神剣〉さん、まいましょうか」

『う、うむ……そういえば危ないところだったぞ。エミリとかいう小娘が、危うくわれを取るところだった。触れるだけならセーフだが、すっかり柄を手にとれば、それは[装備]したとカウントされるからな。数秒で、肉体崩壊して死んでおるところだった』

「あら。エミリさん、肉体が崩壊する快感を味わいそこねましたのね。おかわいそうに」『……………………』


 エミリさんとは、また近いうちに再会する気がしますね。わたくし、こういう直感はよくあたるのです。

面白かったらブックマーク登録、下の評価、お願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ