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今日は気晴らしにハヤシライスをつくった。
玉ねぎを2玉細く切って、バターを沢山使い炒める。マッシュルーム、エリンギ、舞茸、大好きな茸と安かった牛肉を2パック鍋に放り込み、続けて炒めた後、水を入れて煮込む。
アクを取り、火を止めてルーを入れるととろみと光沢が現れる。だがここでは食さない。煮込む。赤ワインを100円均一で買った透明なコップに注いで呑み、鍋から漏れる音を聞く。
数時間がたった。外から差し込んでいる日の光がオレンジ色に変わる頃、出来上がる。お気に入りの深い木でできた皿にご飯を乗せて、ルーを盛り付ける。
光沢が完璧だった。匂いも味も旨く仕上がっていて、自分で言うのも恥ずかしいが完璧だった。
毎回口に運ぶ度に、納得が行く味だった。
全て完食し、タバコをふかしていると、やはりあの老婆が脳裏に過る。
納得が行っていなかった。
満腹感に酔い、酒の微睡みを楽しんでいても、それを覆い尽くす程の恐怖。頭を抱えて打ち震えていると、ふと高校の時にいた先生の言葉を思い出した。
「対象の確認、実験の設定、注意深い観察と測定」
僕は昔、工業高校の科学専攻科にいた。そこで担当していた先生は研究の上の基本ルールを口ずさんでいた。
つまり何が言いたいかと言うと、知らないままでいることが恐怖になると気づいた。ぼくはあの老婆を研究し、絶対に正体を掴んでやると決めたんだ