快適な外敵。
ブログをスクロールする田中の細い指が止まる。そして画面に記載された「占いババァ」を指差して、視線を隣にいるミシェルへと移した。
ミシェルは腕組みを解かないまま、一呼吸したのちに言葉を垂らす。
「占いババァ。魔術師のばぁさん。斎藤が居住している近辺ではもっぱらの噂となっている人物だ。」
「それはどんな噂だ?」
「呪いの品々だ。」
呪い。科学技術では考え付かないオカルトな単語に、田中は眉間に皺を寄せる。だがそんな様子もおかないましに話続けた。
「"ネックレスを買ったら幽霊が消えた"とかそんなこんな。だが一貫して全てがオカルトな噂ばかりで、どれも科学的でないものばかりだ。」
「素性は調べたのか?」
「調べたがわからん。こっちがしりたいぐらいだ。」
そうか、と呟いて画面に向き合う田中。彼の寂しげな横顔に、ミシェルはふつふつと沸く疑問を投げ掛けた。
「…魔法って存在するのか?」
スクロールしようと曲がる指が止まり、動きが少ない口がゆっくりと開く。
「ではまずどこまでが"科学"で"魔法"なのか、君に線引きができるのか?」
「…」
科学とは、人間が断りを理解して技術にしたものだ。それはつまり"わかってしまえば科学"ということになる。状況を理解できるのなら骨董無稽な事象でも科学になる。いくら奇跡や魔法などというオカルト性に突飛していても。わかってしまえば科学に化けてしまう。
それを理解したミシェルはアイコンタクトを走らせる。
「了解。ブログの閲覧を続けよう」