魔導の極地
街へと向かった2体のメフィストの内、一体は平民街の方へ向かい、もう一体は貴族街へと向かっていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇
平民街に到着したメフィストは、避難している住民や兵士たちに向かって爆弾ボールを投げる。
ドン!
バーン!
「大変だー!逃げろー!」
「助けて下さい子供が!」
と、パニックになる人を見て、メフィストは高らかに笑いながら
《ん〜ん!!さぁ、泣け!喚け!そして逃げまどえ人族ども!!》
と言って攻撃を続けていると、メフィストに向かって巨大な火の球が放たれた。
メフィストは火の球を相殺すると
《お〜お!小生をじゃ〜まするのは何者か〜な?》
と、言いながら魔法を放ってきた赤髪に白い髭が特徴の老人に質問をする。すると老人は髭をいじりながら
「ホッホッホッホ!念の為、平民街に来て良かったわい!儂はソラリア王国宮廷魔法師団団長サラディン・ゾルフじゃよ!見知りおく必要は無いぞ魔族よ!貴様はここで死ぬのだからな!」
サラディンはそう言いながら両手をメフィストに向けると呪文を唱える。
「《地獄の獄炎!!》」
詠唱破棄された上級魔法がメフィストを襲う。するとメフィストは右手に魔力を集めながら叫ぶ。
《奇術魔法イリュージョン!》
メフィストの前に大きな門が現れ、サラディンの魔法を消し去る。
すると新たに門が現れて、そこから先程の魔法がサラディンに向かって飛んできた。
「ほーう!なかなか面白い魔法じゃのう!じゃが、《氷瀑》!!」
サラディンは飛んできた魔法を凍らせると、連続で光の上級魔法を放つ。
「《聖天》、《白夜》、《光輪》」
サラディンの放った魔法に対してメフィストはナイフを投げて迎撃する。
《ん〜ん!人族にして〜は、なかなかやる〜ね!で〜も、その程度の魔法じゃあ小生に傷ひとつつけられない〜よ!》
余裕の表情を浮かべるメフィストにサラディンは笑らいながら
「ホッホッホッホ!!!嬉しいの〜う!久しぶりに本気を出せるわい!!」
と言いながらサラディンは、懐から指輪を取り出し右手の人差し指にはめる。
すると指輪が光だしサラディンの魔力が爆発的に上昇して行く。最終的に3倍ほどにまで魔力が上昇する。
《な、なんだその魔力は?!!》
驚くメフィストに向かって、サラディンは指輪を触りながら説明する。
「これは44聖魔武具の一つ【聖輪 ゼブル】
じゃよ!その特性は魔力の貯蔵と放出」
《貯蔵と放出?》
「そうじゃ、貯めておいた魔力を好きな時に放出する事が出来る聖武具じゃよ!ホッホッ!これほど魔法師にとって相性の良い武具は無いと思わんか?」
《たしか〜に、その魔力に〜は驚いたけれどそれ〜だけ〜では、小生に〜は勝て〜ないよ!》
まだ余裕の表情を見せるメフィストに対してサラディンは笑いながら
「ならば見せてやろう儂の最強の魔法を!!
《それは絶対零度の世界》
《それはこの世全てを停止させる力》
《我は全てを凍てつかせるものなり》
《煌めき、輝き、切り裂く大紅蓮の世界》
《地、水、火、風、全ては凍てつき》
《あらゆる鼓動は停止する》
《氷超級魔法 氷河地獄》
サラディンが呪文を唱え終わると、メフィストを中心とした半径100メートルが一瞬にして凍りついた。
《!!!!!???》
突然の事で動けなかったメフィストはそのまま凍りつく。
「ふむ。これで終いじゃのう!」
バキン!!
と言って、サラディンは凍ったメフィストを魔法で砕くと額にかいた汗を拭う。
流石の「魔導王」でも超級魔法を使うのにはそれなりの集中力と魔力が必要になる。
「さて、もう一人の方も行かねばのう。やれやれ!本当、老人使いの荒い事じゃ全く!」
そう言って、サラディンは貴族街の方へと向かおうとした瞬間、サラディンを中心として世界が変わった。まるでサーカスの会場の様な舞台、大玉に乗ったピエロの人形、宙をまうボールやナイフ、まさに奇天烈な世界だ!
「なんじゃと?!……これはまさか!まずい!」
そう言ってサラディンは自分の周りに結界を張った次の瞬間、サラディンに向かってナイフと爆弾ボールが飛んできた。
「なんの!」
サラディンはそれを全て防ぎ切ると宙に浮いている道化師を見つめる。
するとメフィストはサラディンに対して
《まさか魔術幻界まで使わされるとは思わなかったねぇ〜!小生にこれを使わせるなんて褒めてあげるよ人族!》
「まさか魔術師の極地と言われる魔術幻界まで使えるとは恐れ入ったわいのう!」
《ん〜ん!ま〜あね!》
魔術幻界とは、魔術師が魔力を使って創る人工的な空間の事で、膨大な魔力と緻密な魔力操作を持たなければ発動すら出来ない魔術の極地だ!!
ちなみに、どう見ても某有名漫画の領域に似ているが、領域と違い必中では無ないのでセーフだ!……多分……
次々と降り注ぐナイフや爆弾ボールに防戦一方のサラディンに対してメフィストは笑みを浮かべる。
《ん〜ん!どうだい、小生の『道化師の遊戯場』は!》
「クッ!!」
メフィストの怒涛の攻撃に対して徐々に傷を負って行くサラディン。
メフィストの魔術幻界『道化師の遊戯場』は、メフィストの思い描いた武器を具現化させ、自由に操る事ができる世界だ。つまりメフィストにとってのサラディンはまさにまな板の上の鯉の様に生殺与奪を握られている訳だ。
全身の傷口から出血して行くサラディンを見て、メフィストは下卑た笑みを浮かべながら
《ん〜ん!そろそろ終わりにしようかねぇ〜!!》
と言って、巨大なナイフをサラディンに向かって投げる。
サラディンは結界を集中してどうにかナイフの軌道を逸らす。
《ん〜ん!やるじゃないか!》
と、余裕の表情で笑みを浮かべるメフィストに対して
「調子に乗るなよ!小童が!!」
ついにサラディンがキレた!!
サラディンは【聖輪 ゼブル】に魔力を集め
「聖輪、解放!」
と、叫ぶ。
するとゼブルが光り輝き、サラディンを飲み込む。しばらくして光がおさまると、サラディンは両手に魔力を溜めながら
「ホッホッホッホ!魔族よ、お主は魔術幻界を破る方法を知っているか?」
《ん〜ん当たり前じゃな〜いの!幻界の主であ〜る術者を殺すか、より強力な幻界を創り出して破壊す〜る方法で〜しょ!》
「ならば魔族よ、お主は『魔導王』と呼ばれる儂が幻界を使えないと思っているのかのう」
《なんだと?!》
メフィストが驚いていると、サラディンは掌を合わせながら呟く。
「魔術幻界『炎氷世界』!」
次の瞬間、メフィストの創り出した世界が崩れ去り、極寒と溶岩の支配する世界に変わった。




