発見!
万雷の拍手の中エドワードと同じく、ネイビーブルーの髪に真紅の瞳が特徴的な国王は上座にある豪華な椅子の前に立ち、ワインの入ったグラスを持ちながら挨拶と乾杯の音頭をとったあと、いよいよ待ちに待った晩餐会がはじまった!
晩餐会が始まると同時に国王の元に各国の来賓が挨拶の為に集まり出して行く。
その中には当然、あの馬鹿皇子もいるが何故か「雷光」の姿が無い。と言うよりも馬鹿皇子以外、帝国の人間が一人も見当たらない事に俺は疑問を抱いた。
幾ら馬鹿皇子だからといって、護衛の一人もいないのはおかしい。それも、あんな馬鹿げた言動を話すような危険人物を一人にさせるなんて考えられない。
(……まさか)
考えられる上で最悪の事態を予想した俺は、急いでエドワードかサラディンを探す。
もし俺の考えが当たっていた場合、ある程度の発言力がある人物の協力が必要だからだ。
会場内を捜索していると、ゴッテゴテに着飾った女性達に囲まれている特徴的なネイビーブルーの髪をしたイケメン、もといエドワードを発見した俺は、すぐにエドワードの側に行き肩を掴みながら
「エドワード!悪いんだけど力を貸してくれ!」
「えっ?!ケイタ?」
と言って、困惑しているエドワードを他所に人気のない場所まで連れて行く。
途中、囲んでいた女性達から「なに邪魔してんだよこのヤロー」と言いたそうな目で睨まれたり、一部の女性から「キャー!禁断の恋よ!」と黄色い声が聞こえてきたが今回は取り敢えず無視だ!
「どうしたんだいケイタ!いきなりこんな場所に連れてきて?」
人気のない場所に移動した後、俺は困惑しているエドワードを無視して幾つか質問をする。
「なぁエドワード。聞きたいことがあるんだけど、ウステム蕃国の王子、もしくは『雷光』のどっちでもいいけど会場で見かけたか?」
俺が質問するとエドワードは不思議がりながら
「えーと、バルバート王子は最初だけ居たんだけど体調が優れないと言ってすぐに退場してしまったんだよ。『雷光』殿に関しては見てないよ……でもなんでそんな事を聞いてくるんだい?」
「分かった!ありがとうエドワード!後、すぐに国王陛下を避難させるんだ!それと、来賓達も急いで避難させてくれ!」
「えっ?!ちょっと待ってケイタ!いきなりそんな事言われても」
困惑するエドワードを他所に俺はエドワードの肩を揺らしながら
「頼むエドワード!時間が無いんだ!」
するとエドワードは
「わかった!でも全部終わったらちゃんと理由を話してくれよ!」
「ああ」
そう言って会場へ戻って行くエドワードを見送ると、俺はスキル「千里眼」を使って二人の居場所を探す。
(違う……違う……居た!!)
城に張られている結界のせいで探すのに時間はかかったが、ようやく二人を見つけた俺は急いでそこへ向かう。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
〜バルバートside〜
アリバイ作りのために最初だけ顔を見せた後、バルバートは自室へと戻り厳重に封印されている箱を持つと指定の場所へと向かった。
指定された場所は城の地下にある石造りで出来た部屋だ。事前にルートを知らされていたのでここまで誰にも会う事なく到着したバルバートは恐る恐る部屋の中へと入る。
するとそこには既にヴェルダン帝国6騎将の一人、「雷光」ムサシ・カゲミツが数人の部下と一緒に待っていた。
「いや〜、お待ちしておりましたよバルバート殿下。その様子ですと、なんの問題も無く無事にここまで来れたようですねぇ〜」
ムサシが相変わらず軽薄な笑みを浮かべながら飄々と話し出す。一見すると心配しているような口振りだが、そんな事露にも思っていないだろうがと内心思いながらもバルバートは
「ええ、お陰様で無事にくる事が出来ましたよ。それにしても、よくこんな場所を知っていましたね?流石は帝国が誇る情報部隊と言う所でしょうか」
「いやねぇ〜。流石にうちの情報部隊でも他国の城の中は調べられないよねぇ〜」
「では一体どうやって?」
「うちにはこの城の事をよく知っている人物がいるからねぇ〜。今回の作戦の為に色々と教えてくれたんだよねぇ〜」
そう言ってムサシは懐から紙を取り出すとヒラヒラとバルバートに見せる。
バルバートは納得すると、箱を持ち上げながら
「成程……それでは早速、始めましょうかムサシ殿」
「ええ、そうですねぇ〜バルバート殿下。では例の箱をそこの石壇へ置いてくださいねぇ〜」
「分かりました。ですが本当にこの部屋にいれば大丈夫なんですか?信用してない訳では無いですが、やはりどうも不安でして……」
「ご安心くださいねぇ〜。この部屋は完全に外界と隔離した部屋ですから外から瘴気が入り込む事もありませんからねぇ〜」
「そう、ですか。では」
バルバートは箱を石壇に乗せると封印を解除させる呪文を唱える。
“我は災禍を望む者 我は呪災を望む者”
“深淵より来たり深き闇よ我が問いに答えよ”
“理より外れし魂の怨念よ我が元に集え”
“其の命を持って真なる悪を呼べ”
“全ての悪を解き放ち者”
ビキッ!バキッ!
呪文を唱え終わり箱の封印が解け始めた瞬間、ムサシの部下であるヘンリックを始めとした数人が石壇に手を付き魔力を流し始める。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!
すると石壇が動き始めた。
「おおー!凄いですねムサシ殿!」
「そうですねぇ〜。あとはタイミングを見て移動させればいいだけですねぇ〜」
この石壇は最初からこの部屋にあったわけでは無く、ムサシたちヴェルダン帝国が持って来た古代遺物だ!
このアーティファクトは魔力を使って石壇に置かれている物を石壇と同じ石で出来ている指輪の元に転移させる事が出来ると言う便利機能があるが、その反面石壇から指輪への一方通行なので使い勝手はそれ程良くない。そして、今その指輪は馬鹿皇子ことライナーが持っているのだがライナーはその事を知らない。
つまり、封印が解けた「怨霊箱」はライナーの意思とは関係なく送り届けられるのだ。
もしそうなった場合、ライナーを中心に王都中の人間が「怨霊箱」の影響を受けて死に絶えると言うことだ。そう、ライナーは始めからこの為の捨て駒だったのだ!!
だからムサシはケイタに殺されそうになっていたライナーを助け、腕を繋げるように部下に命令したのだ。もちろんこの事をヴェルダン帝国皇帝は知っている。むしろ今回ライナーを捨て駒に抜擢したのは皇帝だ!
皇帝は、第二王妃に甘やかされ育ったライナーの事を酷く嫌悪しており、今回はちょうどいい厄介払いとしか思っていないのだ。
なんとも哀れなライナーだが、その事を知るのは皇帝とムサシだけなのがせめてもの救いだ。
石壇の魔力が貯まり、いよいよ転移させようとした瞬間
ドカン!
と、部屋の扉が壊れる。
「な、なんだ?!なにが起こったんだ!!」
「大変だ!早く塞がないと!!」
「中止!転移中止!!」
「うわー!終わりだー!!」
「拙いぞ!どうするんですかムサシ殿?!」
シェルター代わりとなる筈の部屋の扉が壊れたことで慌てふためくバルバートや部下達を他所に、ムサシは先程までの軽薄な笑みをやめ鋭い目つきで扉の方を睨み
「一瞬、『剣聖』かと思いましたが、やっぱり貴方でしたか……はぁ、やはりあの時、貴方は始末しとくべきでしたねぇ〜」
悔しそうに話すムサシの視線の先には
「ふぅ、なんとか間に合ったみたいだな!
ラッキー!ラッキー!」
戦闘用に服を変化させた圭太が右手に持った無名の剣を肩でトントンさせていた。




