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団長と副団長


〜王城〜


時刻は午後4時

エドワードに用意してもらっていた馬車に乗って王城にやって来た俺は、正門前にて招待状の確認とボディチェックを済ませた後、王城の中へと入っていく。


王城はこの前来た時よりも煌びやかになっていら反面、至る所に警備が立っていて独特の緊張感が漂ってくる。

晩餐会の会場へと向かう途中、俺は偶然にもこの前出会った赤髪と長い白髭が特徴的な「魔導王」サラディン・ゾルフがエドワードと同じ腰まであるネイビーブルーの髪に真紅の瞳が特徴的な女性に怒られている場面に出くわした。


(えっ?!あの爺さんってたしか、宮廷魔法師団の団長だったよなぁ?それがなんであんなに怒られてるんだろう?)


俺が不思議がりながら見ていると、偶々サラディン・ゾルフと目があってしまった。


(ヤベッ!)


俺はすぐに目を逸らし、急いで会場の方へと向かおうとした瞬間、後ろから俺の事を呼ぶ老人の声が聞こえてきた。


「おおケイタ殿ではないか!!まさかこんな所で出会うとはのぅ!」


知らんぷりをしようとした俺であったが、すでに時すでに遅しと言うべきか俺に対して周の視線が集まっている。


(あっ、これもう逃げられ無いやつだ……)


諦めた俺はサラディン・ゾルフに挨拶をする。


「お久しぶりで御座いますサラディン様」


「ホッホッホ!幾ら王城の中だからと言っても儂に対してそう硬くなるな必要も無いぞケイタ殿!」


「いえ、そう言う訳には……」


「何を言うか、お主は儂の恩人じゃ!それにお主とこうして話していれば、面倒な仕事もせずに済むしのう。ホッホッホ!!」


俺に聞こえる程度の小さい声で話すサラディンに対して俺は呆れた表情をしながら


「それではまた、先程のように叱られてしまいますよ」


と言う。するとサラディンは


「これケイタ殿!儂は別に叱られていた訳では無く……そう、ただちょっと、ちょっとだけ小言を言われていただけじゃよ」


と、訂正してくるがどう見てもあれは叱られていただろうと思う。


「そうですか。それにしても、サラディン様に小言を言えるあの女性は一体どなたなのですか?」


俺が質問すると、サラディンは意外そうな表情をしながら


「なんじゃ、ケイタ殿はリリアナ嬢の事を知らんのか?」


と聞いてきた。残念ながら知らない俺は、軽く頭を下げながら


「申し訳ありません。なにぶんこの国に来てからまだ日が浅いもので……」


「そうじゃったのか、ならば仕方ないのぅ……よし、それならば儂が紹介してやろう!おーい!リリアナ嬢!」


サラディンは女性に向かって手を振りながら名前を呼ぶ。すると女性は早足でこちらに向かってきた。


そして俺たちの側にやってくると


「どうしたんですか師匠?まさかまたサボって……あら?そちらの方は師匠のお知り合いですか?」


「うむ。そうじゃよリリアナ嬢!こちらにいるケイタ殿は儂の命の恩人じゃて、粗相のない様にな!」


サラディンの言葉を聞き、リリアナと呼ばれる女性は背筋を伸ばし優雅に


「かしこまりました師匠。お初にお目にかかります。私は宮廷魔法師団副団長を務めさせて頂いておりますリリアナ・アル・ソラリアと申します。どうぞ気軽にリリア、もしくはリリアナとお呼び下さいませ」


そう言って軽くお辞儀をするリリアナはなんとも気品に溢れていた。そんなリリアナに対して俺も軽く一礼してから


「お初にお目にかかりますリリアナ様。私はCランク冒険者のケイタと申します。どうぞお見知り置きを」


軽めの自己紹介をするとリリアナはどこか納得した表情を浮かべながら


「ああー!貴方が師匠を王城まで案内して下さった方なのですね!その節はうちの師匠が大変ご迷惑をおかけしました。師匠ったら、仕事が嫌だからって私が目を離した隙に隠し通路を使って逃げたんですよ!それも私に仕事を押し付けてですよ!!もう信じられますか?信じられませんよね!ね!ね!」


最初は穏やかな口調で話していたリリアナだったが、段々と口調が荒くなっていき最終的にはどこか殺意のこもった視線をサラディン・ゾルフに向けながら話すリリアナを見て、俺は自然と自分の顔が引き攣っていたのに気づいた。

ちなみに、当のサラディンはと言うと下手くそな口笛を吹きながら自慢の髭を触っている。俺は、そんなサラディンを呆れた目で見ながら心の中では


(おい爺さんこっち見ろよ!なに、自分は関係ありません見たいな態度をとってるんだよ!つーか、逃げるのに隠し通路まで使うとかどんだけ仕事したく無いんだよ!魔法師団長がこんな本当に大丈夫なのか?)


と疑問に思った俺だったが、その後リリアナが諦めたように


「まぁ、この国に師匠以上の魔法師はいませんからどうしようもないんですけどね。それに、実力もそうですが教育者としても一流ですから」


呟やくリリアナに俺は


「そうなんですね。流石は『魔導王』と呼ばれる方ですね!そんなサラディン様のお弟子であるリリアナ様も相当な腕だと予想しますが如何ですか?」


俺の質問に対してリリアナはどこか寂しそうな笑みを浮かべながら


「そんな事はありませんわ。たしかに私は魔法師団の副団長ですがまだまだ師匠の足元にも及びませんし……」


沈んでいるリリアナに向かって俺は笑みを浮かべながら


「そうですか。では、いつの日かリリアナ様がサラディン様のような魔法師になれる日を心待ちにしておりますね!それでは失礼します」


「こちらこそありがとうございました。どうぞ晩餐会の方を楽しんでくださいね」


「ありがとうございます」


互いに挨拶をした後、リリアナはサラディンを連れて元の場所へと戻り、俺は会場の方へと歩いていく。


**************



会場に入った俺が最初に驚いたのは、ついこの前に決闘をした馬鹿皇子こと、ライナー・フォン・ヴェルダンが数人の女性を伴ってワイン片手に楽しげに話していた。

よく見ると切り落とした筈の腕があり、ぱっと見だが義手では無いようだ。どうやら切り落とした腕は魔法で繋げたみたいだ。


(うわ〜、のっけから見たくも無いやつの顔を見ちまったよ)


正直殺してやりたい気持ちもあるにはあるが、そこは「雷光」と手打ちをした以上こちらから手を出す気は無いので、俺は馬鹿皇子とは反対の方へと進みながらお目当ての料理を探す。


「えーと、料理はどこかなぁ〜?」


俺が料理を探していると、恐らく司会役だろう男が話し出す。


「えーご来場の皆様、本日は国王陛下誕生祭にお集まり頂きまして誠にありがとうございます。これより国王陛下の登場で御座いますので、どうぞ盛大な拍手をお願い致します!」


「「「「「「ワー!!!」」」」」


パチパチパチパチ!!!


司会が話し終わると会場中から盛大な拍手が巻き起こり、一番大きな扉から国王が現れた。



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