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手打ち


「はぁー!!」


「ひぃぃぃ!!」


「そこまでだねぇ〜!!」


「??!」


俺がライナーの右足に剣を振り下ろした瞬間、何処からか聞き覚えのある声が聞こえる。俺は寸前のところで剣を止めると声の主の方へと視線を向ける。するとそこには長い金髪を後ろに纏めて、腰に刀を差した武士風の男こと、「雷光」ムサシ・カゲミツがいた。俺は剣の鋒を「雷光」に向けると何故決闘を止めたのか理由を聞く。


「『雷光』殿。これは俺とライナー皇子の正当な決闘ですよ!何の権利があって貴方に止める権利があるのでしょうか?」


すると「雷光」は右手で頭を掻きながら困った表情をして答える。


「いや〜。本音を言えば、自分としても皇子が勝手に始めた決闘を止めるつもりは無かったんですけどねぇ〜。けれどヘンリック君が皇子が死ぬのは流石に拙いと言うから仕方なく止めさせて貰う事にしたんだよねぇ〜」


「雷光」がそう言うと後ろに控えている若い騎士が何度も頷く。どうやらこの騎士が話に出ていたヘンリックのようだ。


「ふーん……それで、『雷光』殿はどう責任を取るつもりなんでしょうか?言っておきますけど、俺は例え天下の6騎将が相手だとしても引き下がるつもりはありませんよ!この馬鹿皇子は越えちゃいけない一線を越えた以上、必ず報いは受けてもらいますよ!」


俺はライナーを一瞥した後「雷光」を睨みながらそう告げると、腰を抜かしたまま震えているライナーが口を開く。


「お、俺は帝国の皇子だぞ!!皇子である俺を殺してみろ、皇帝(父上)が帝国の威信をかけて必ず貴様を殺すぞ!!」


震える声で脅しをかけてくるライナーに対して「雷光」は手で顔を覆い、俺は呆れながら告げる。


「・・・」


「はぁ、まさか今更そんな脅しで俺がビビると思ってんのか?いいか馬鹿!こっちは、はなっからそんな事覚悟の上なんだよ!」


俺はライナーの胸ぐらを掴むと首筋に剣を当てる。


「ヒィー!!や、止めろ!止めてくだいさい!助けて下さい!!お願いしますーー!!」


あまりの恐怖からライナーは涙を流しながら命乞いをして来た。


「ふん!もう遅いんだよ馬鹿皇子が!」


俺は思いっきりライナーの首に向かって剣を振る。


すると……


キン!!


俺が振り抜いた剣はライナーの首を切る直前、「雷光」の刀によって塞がれた。 


その刀身は美しい黄金色に輝き、まるで雷のような波紋が波打っている。


「へぇ〜、それが【魔剣 麒麟】の刀身か!流石44聖魔武具だけあって迫力があるな!」


俺が感心していると「雷光」は困った表情で


「いやはや、まさか自分がこの刀を抜く事になるとはねぇ〜。本当、勘弁してほしいねぇ〜」


「軽口が叩けるなんて随分と余裕そうですね?」


「いやいや、これでも結構一杯一杯なんだけどねぇ〜!」


「それならそこを退いてもらえませんかね?」


「貴方が剣を納めてくれるのでしたら、自分としても喜んで退かせていただくところですけどねぇ〜」


「嫌だ!」


俺が嫌だと言うと、「雷光」はやっぱりと言う表情をしながらある提案をして来た。


「ですよねぇ〜!でしたら、自分が皇帝陛下に掛け合いますので、その代わりに皇子の愚行を許していただけないでしょうかねぇ〜」


「雷光」からの提案と言うのはつまり、この馬鹿皇子を見逃す代わりに皇帝から好きな物を貰えるように計らうと言う意味だ。


(うーん、どうしようかなぁ〜)


俺はしばらく考えた末、剣を鞘に納めると溜め息をつきながら


「はぁ、分かったよ。今回は「雷光」、貴方の顔を立てる事にするけど、これは貸しだよ!」


すると「雷光」も武器を仕舞うと頭を下げながら


「もちろんですとも、この借りは必ずお返し致しますからねぇ〜」


「「……ふふふ」」


お互いに笑いながらその場を後にしようとすると、馬鹿皇子が空気を読まず口を開く


「ふざけるな!おい『雷光』!何をしているあの男をころーー!!!」


「馬鹿が!!」


ドカ!


「雷光」はライナーが喋り切る前に気絶させた後、もう一度俺に頭を下げる。


「本当に申し訳ないねぇ〜。この馬鹿皇子は自分がちゃんと矯正しとくから許して欲しいねぇ〜」


俺は頭を下げる「雷光」の姿を見て同情した。こんな馬鹿のお守りをしなければ行けないなんてとんだ貧乏くじを引いた物だ。


「ま、まぁ、頑張って下さい。いくぞカーラ!」


『はいです!!』


俺は「雷光」に励ましの言葉は伝えると、カーラを連れて屋敷に戻った。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


〜ムサシside〜


圭太がいなくなったのを確認したムサシは、自分の部下であるヘンリックに命令をしてライナーを運ばせる。


「ヘンリック君。悪いんだけど、皇子を城まで運んでくれないか!ついでに切れた左腕も繋げておいてくれ!綺麗に切れてるから、多分簡単に繋がると思うよ」


「かしこまりました団長!」

ヘンリックはムサシに敬礼をした後、部下に命令してライナーを城へと運ぶ。


「悪いね!全く、ベナパルトの旦那もとんでもない仕事を押し付けて来やがって!後で文句言ってやる!」


ムサシはライナーを睨みながら恨み言を呟く。すると、ヘンリックが申し訳なさそうな表情をしながら


「申し訳ございません団長。父がご迷惑をかけてしまい……」


と言って頭を下げる。


「別にヘンリック君が悪い訳じゃないさ!一番の問題は第二王妃が皇子を甘やかしたせいだしね!」


「ちょっ!団長、あまりそう言う事は口走らないほうが宜しいかと……」


ヘンリックは焦ったように周りを確認する。

もし誰かに聞かれでもしていたら大問題だ!

だが、当の本人はのほほんと空を眺めていた。そんなムサシにヘンリックは軽く頭を下げた後


「それではお先に城の方へ戻っていますね!あっ!それと、いつもの口癖がとれてますよ!」


「ああ、別に気にしなくていいよ!ただのキャラ付けだから」


「そうでしたね。では失礼します」


と言って、ヘンリックと数名の騎士はライナーを連れて城へと戻っていった。


残ったムサシは、空を見上げながら


「こんなんで本当に計画がうまくいくのだろうか?」


と、小さな声で呟くのだった。




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