最初の革命
モンスターの買取を終えた俺達はギルドから剣爵邸のある貴族街の方へ向かう途中、カーラがいきなり
『ご主人!カーラは久しぶりにお肉のサンドイッチが食べたいです!』
と、目を輝かせながらリクエストして来たので俺は
「別に良いけど、本当にサンドイッチなんかで良いのか?卵も手に入ったし、サンドイッチよりもっと手の込んだ物を作ってやるけど?」
『カーラはサンドイッチが食べたいんです!絶対、絶対、絶対、サンドイッチが良いです!!』
「おお、そうか……それじゃあパンを買って帰ろう」
『はいご主人様!』
俺からの提案を押し退けて頑なにサンドイッチを譲らないカーラに対して、俺は少し戸惑いながらも了承すると、先日エドワードに教えてもらった美味しいパン屋へと向かった。
別に自分で作っても良いのだが、せっかくエドワードが教えてくれたので行ってみることにした。
◇◆◇◆◇◆◇
〜数十分後〜
エドワードに教えてもらったパン屋に到着した俺達はパン屋の中に入り驚愕した。
「す、すげー!なんだあのパンの長さは?!」
なんと5メートル近くあるフランスパンのようなパンが何本も並べられていたからだ!
「いやいやいや、なんてデカさだよあのパン!あんなの食いきれないだろ!それに保存とかどうすんだよ!」
俺はパンに対して何度もツッコミを入れていくなかで、ある事を思い出した。
それはたしか、17世紀のフランスでは現在のフランスパンよりもずっと長いフランスパンが作られていたと聞いた事がある。
何故ならば、長いフランスパンは保存が難しくて、贅沢の象徴とされていたからだそうだ。だが、それを嫌ったナポレオンがフランスパンの長さを現在の長さに決めたと言われている。
(成程、つまりこの長いパンは贅沢の象徴。貴族や金持ち連中向けのパンって事なのか!)
そう結論づけて納得した俺は、一般的な長さのパンを探しに店の奥へと入り、サンドイッチに合いそうなパンを探す。
「うーん。流石に貴族御用達だけあって、どれも中身は白パンな上、焼き上がりも悪くないパンばかりだが……」
俺は並んでいるパンを見ながら、店員に頼んで幾つかのパンを試食する。
「パク!もぐもぐ……やっぱり、どれも硬いな。それに、香りがほとんどしない。これじゃあどんなに良い具材を使ってもダメだな」
俺はわざと店員に聞こえるでパンを酷評する。すると、奥から職人らしき人が額に青筋を浮かべながらやってきて
「お客さん!あんたうちのパンに文句があるようだが、そこまで言うならあんたはうちのパンよりも美味いパンを作れるのかー?!!!」
どすの利いた声で聞いて来た職人に対して、俺は待ってましたとばかりに揚々とした声で
「もちろんだ!なんなら今から作るから厨房を借りても良いかな?」
「ほーう。良いぜ!!たが、不味かったらテメーは一生、うちの店でタダ働きだからな!」
「ああ、それで構わないよ」
俺はそう言って厨房へと向かい、パンを作り始める。
*******
何故、俺が面倒な事をしているのか皆さんは疑問に思うと思いますが、これにはちゃんとした理由があります。
お忘れかもしれませんが、俺がこの世界に転移させられた理由は、この世界の食文化に革命を起こすためです。まぁ、俺は面倒だからと拒否しましたが最近女神達からぶっ壊れスキルや最強装備なんかを貰ったので、一度くらいなら良いかなぁ〜と思い、ちょうどカーラがサンドイッチを食べたいと言って来たので、「剣聖」であるエドワードから教えてもらった貴族御用達のパン屋を利用してパン革命を起こそうと考えた訳です!と言っても、パン職人では無い俺では、せいぜい一般家庭で作る程度の知識しかないが、それでもこの世界のパンには負けないと自信がある。
俺はフルーツから作っておいた簡単酵母を生地に混ぜて一時発酵させた後、ガス抜きをして成形したら2時発酵した後オーブンで焼成をする。
今回俺が作ったのは、バゲットと中に肉が入っている饅頭、いわゆる肉まんだ。
バゲットは焼成の時に、水の入ったバケツを一緒に入れた事で水蒸気が発生し、クラストと呼ばれる外側の固い部分を作る事が出来る。地球ならば、オーブンに入れれば簡単に出来るが、この世界でバゲットを作るのに何度も試作した結果、この方法が1番美味しく出来る事が分かった。
次に肉まんだが、これは簡単だ!オークの肉と野菜をミンチにしてから炒めて味付けをした後、冷やして丸くする。
生地は薄力粉多めで用意して、つなぎに牛乳を入れて良く捏ねる。2回発酵した後、丸めた肉だねを生地に包んでから蒸して完成!
この時、ちゃんと包まないと肉汁が漏れ出ちゃうから注意してね!
完成した2種類のパン(一つは饅頭だけど)を職人は恐る恐る食べる。
すると……
「うめーーーーー!!!!」
店内に職人の大声が響き渡る。俺とカーラは咄嗟に耳を塞ぐが、店員の何人かは腰を抜かしていた。どうやら耳をやられて混乱してしまったようだ。
俺はパンをバクバク食べている職人からパンを取り上げながら
「どうだ俺のパンは?美味いだろ」
と聞く。すると職人はその場でジャパニーズDOGEZAをすると
「感服しました!図々しいとは承知ですが、どうか私に作り方をお教え下さいませんでしょうか!」
頭を下げながら懇願する職人に俺はとある質問をする。
「それは私利私欲の為か?それともパンを発展させる為か?」
この質問の返答次第で、俺はこの職人に作り方を教える気は無い。俺はあくまでパン革命を起こす足がかりとして、この店を選んだ訳であって技術を独占するつもりならば教える意味が無いからだ。
俺の質問に対して職人は数秒考えた後
「私は、私はこのパンを食べて、このパンは世界を変える事が出来ると確信しました!サクッと歯応えのある外側の生地に対して中はふわっとしたパンに、柔らかくもっちりしたパンとジューシーな肉が最高にマッチしたこのパン?!!私はこのパンを世界中の人達に食べてもらいたいのです!そして、私が感じたい感動を共有したいのです!どうか、どうか私に作り方を教えて下さいませ!」
俺は、何度も頭を下げる職人の肩に手を置きながら
「分かりました。お教えしましょう!」
と言って笑みを浮かべる。
我ながら少し芝居くさいがそれでも職人は
「ありがとうございます!ありがとうございます!」
涙を流しながら感謝の言葉を何度も述べる。
それを見た店員達は若干、と言うよりドン引きしていたが、俺の作ったパンを食べて同じように涙を流しながら感謝の言葉を述べて来た。どうやら相当俺のパンは美味かったようだ!
その後、職人を始め、全ての店員を交えてパンの作り方を指導したり、酵母に関して教えてから、俺はエドワードへの土産に新しくバゲットと食パンを作ってから剣爵邸へと帰った。
現爵邸へと帰ると、俺達の帰りか遅くなって心配したエドワードに軽い説教をされたが、お土産のパンを食べさせると満面の笑みを浮かべながら上機嫌で部屋に戻っていった。
余談だが、俺がパンの作り方を教えたパン屋はその後、瞬く間に超人気店になるが、職人は俺との約束を違わずに、パンの作り方をさまざまな人に教え、いつしかその職人は「パンの革命王」と呼ばれるようになり伝説となるがそれはまた別のお話。
この後も投稿しますのでよろしくお願いします。
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