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モンスターは美味である


深い森の中


いきなりだが、今俺の前には体長が二メートルを超える豚のモンスター、オークロードとその取り巻きのオークたちが、立ち塞がっている。


どうやらオーク共は、俺を今夜の晩飯にするつもりらしい。

逃げられないと分かった俺は(逃げるつもりも無いけど)右手を前に出して何かを握るポーズをとり呪文を唱える。


「こい牛刀!」


俺の言葉に呼応するかの如く、虚空から一本の包丁がでてくる。

この包丁は牛刀と言って、刃渡り約24センチ程の包丁で主に洋食のコックが使う事が多い。


俺は牛刀を握ると、取り囲んでいるオーク共の首あたりに向かって真横に振りながら一言


捌く者(さばくもの)


ゴト!


すると、一筋の線が現れ、次の瞬間オーク達の首が胴体とお別れした。


次々と死んでいくオーク達をみてオークロードは叫びを上げる。


ブヒーーー!!


恐らく、仲間を殺した俺に対して何かを伝えたかったのだろうが、俺は無慈悲にオークロードの首に向かって牛刀を振る。


ブウウウッヒー!!


そして、オークロードは断末魔を上げて死んだ。


「ふう、これでしばらくは食材に困る事は無くなったし、とっととコイツらを仕舞っちまうか!『解体』『収納』」


俺が呪文を唱えるとオークロード達の死体がバラバラになり、亜空間へと消えていって、後には血の一滴すら残っていない。


「よし、それじゃあ帰るとするか!」


俺は寝床にしている場所へと向かう。


そこは俺が魔法で作った簡易住居で、間取りは2LDKだ。


荷物を置いて、キッチンに向かった俺はまず今日の戦果であるオークロードとオークの肉を亜空間からとりだしてみる。


「おお!これがオークロードの肉か!なんてきめ細かい脂肪サシ!そしてこの香り!間違いなくA5の肉となんら遜色ない肉だぞこれ!それにオークの方も、間違いなく高級肉に分類されるレベルの肉だ!マジで異世界やべーな!!」


みなさんはもうお気づきだと思いますが、ここは異世界アライートと言う地球とは別の世界です。そして、俺こと相田圭太あいだけいたはこの世界に無理矢理連れて来られたいわゆる転移者ってやつだ!

何故俺がこの世界に転移させられたのかについては、また後で説明するが、今はまずこの肉を使って晩御飯を作っていこうと思う。


「よし、こい!鍋達!」

俺の言葉によって目の前にフライパンや寸胴鍋などが現れる。


すべての用意が整ったので、俺は調理を始めた。


俺はまず、オークの肉をダイス状にカットしていき、数種類の野菜と一緒に炒めた後、オークの骨から取った出汁を入れて、塩と胡椒あとハーブと一緒に煮込む。


「よし、次はお待ちかねのオークロードの肉だ!」


俺はオークロードの肉に下味をつけた後、オーブンに入れてじっくりと焼いていく。


「そしたら付け合わせ(ガルニチュール)を作っていくか!」


ジャガイモに似たポーテトを湯掻き、皮を剥いてから潰していく。それに、切った野菜を混ぜてから自家製のマヨネーズを加えてポテトサラダをつくる。


次に、ニンジンに似たキャーロットを切ってから湯掻き、砂糖と水で軽く煮ていく。


付け合わせが終わったタイミングでオーブンの肉を取り出して、カットすると中は輝く赤い色をしていた。


「すげー美味そう!!あとは盛り付けてと!

よし!オークロードのロティとオークのシチューの完成!!」


ちなみにロティとはフランス語で焼く事を意味し、主にフライパンで焼いてからオーブンで焼いていく調理法だ!


今、俺の目の前のテーブルには完成した料理が並んでいる。


どれもとても美味そうだ!


俺は食べる前に、一食分の料理を石で作った祭壇に乗せて両手を握り祈る。


すると、天空から光が伸びて料理に当たる。

しばらくして料理が消えると、天から女性の声が聞こえてくる。


先に言っとくと、この声の主は女神だ。


「あーん、うま!なにこれ、凄い柔らかいお肉!!ズズズ!それにこのスープも美味しい!!もー幸せだわ!」


とても女性の声とは思えない声と、音に俺は若干引きながら食事を始める。


「いただきます!パク。うーん、上手い!!オークロードの肉やばいな!噛むたびに肉汁が口いっぱいに広がり、肉はすぐに溶けていく。それなのに油っこくなくて、いくらでも食えるな!!

それにスープも、オークの出汁が出ていて上手い!」


俺はひたすらオークロードの肉を食べ続ける。


「ふう、食った、食った!!ご馳走さまでした」


俺は手を合わせてご馳走さまをしたあと食器を片付けてる。


さて、腹も膨れたのでそろそろなんで俺が異世界にいるのかを説明しようと思う。


思い出せばあれは1週間前の事だ!


いきなり女神に、強制的にこの異世界に転移させられたのは・・・






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