傷心?幼馴染との昼食
キーンコーンカンコーンと4時間目の終わりを告げるチャイムが鳴った今、僕のテンションはかなり上がっていた。
だって、好きな女の子の手料理を食べられるんだよ?これでテンション上がらない奴は、下の方も上がらない男失格の奴だけだろう。
まぁ、その人達は男の方でテンションが上がるので絶対僕は関わりたくないんだけどね。とどうでもいいことを考えていると愛菜が普段よりも段の高い弁当を持ってこちらにやって来た。
「紅、約束通りお昼一緒に食べましょう?どこで食べましょうか」
「うん〜…人目につかない所…がいいよね」
「…別に私は人目についていいですけど、紅君の周りにいる野獣どもを牽制するために…」
愛菜は紅から一瞬だけ外を向いていたので、この呟きはほとんど聞こえていない。しかし、愛菜が外を向いたことで、どこかいい場所でもあるのかと勘違いした紅は愛菜に質問した。
「ん?…どこかいい場所…あるの?」
「え、えっと中庭とかどうでしょうか?」
「えぇ…あそこ沢山人居るけど…」
「此間、友達と昼食を取った場所は人目につかず落ち着いた場所だったので大丈夫ですよ!」
愛菜は何故か中庭に行くことを望んでいるようなので、そこで食べることにした。
やはり、愛菜と2人だけで行動すると男子共の嫉妬の視線がもの凄い量増えた。朝は生徒の視線しかなかったけど学校に来たことで教師の視線も加わり、視線に慣れているといってもこの量は流石にいい気はしない。
これで付き合ってたら、これが僕の彼女だと胸を張って歩けるんだけど今はそんな関係になれる目処はないから、無いものねだりなんだけどね。
「紅、あそこですよ」
「ヘェ〜…ここなら確かに…人目につかないね」
僕が愛菜との現在の関係を考えて少し凹んでいると、どうやら目的の場所についたようだ。
連れて来られたのは、中庭の端の方にある花の菜園だった。
庭師さんが木や草を手入れしているのでとても綺麗で、しかも花のアーチが四方を囲んでいるのでこれなら確かに人目には付かない。
「いい場所だね…今日はここで…寝ようかな」
「ふふっ、気に入って頂けたようで何よりです。あそこの、椅子があるのでそこに座りましょう」
笑っている彼女に少し見惚れたけど、長年の経験によりなんとかポーカーフェイスを崩さず2人が並んで座れる椅子に腰かけた。他の人なら顔を真っ赤に染めて数分動けないだろう。
「では、お弁当食べましょうか。って紅、自分のお弁当はどうしたんですか?」
「家に忘れちゃってさ…だから今日は…愛菜がお昼分けてくれるって…聞いて丁度よかったんだ」
「なら、沢山食べて下さいね」
愛菜がそう言って弁当のふたを開けると、彩り豊かな料理が目に入った。アスパラのベーコン巻きやハンバーグにほうれん草のお浸しや卵焼きなどなどどれも美味しいそうなものばかりだ。特に僕の好きなハンバーグが入っているのはとても嬉しい。愛菜の料理の中で一番好きだからね。
「じゃあ、はい。アーン」
「えっ…!?」
「えっじゃないですよ!私箸を一つしか持ってきてないんですだからこうやって食べるしかないんです!」
「本当に?…」
「ほ、本当ですよ!別に実は箸を二本持ってきてたけど紅をからかいたくてこんなことしてるわけじゃありませんからね!」
僕が本当なのかどうか確認すると分かりやすく、目線が泳いでいるので嘘なんだろうけど朝確かにからかい過ぎたしこれくらいのことは受け入れないといけないかな。
「紅はやっぱり私にアーンされるの嫌ですか?」
と不安そうに上目遣いでお願いされれば僕は頷くしかなかった。
「…やった!…じゃあまずこれですよ?はいアーン」
そう言われて僕の口に一口台に切ってあるハンバーグを運んできたので僕は恥ずかしがっているのをなんとか隠すためにポーカーフェイスを維持しながら愛菜からのアーンを受け入れた。
確かに美味しい、けど緊張からいつもと同じように味わうことは出来なかった。それでもどうにか感想僕は感想を口にした。
「美味しい…」
「本当ですか!じゃあ次はこれをどうぞ?」
僕の感想が嬉しかったのか愛菜はその後、雛鳥に餌を与えるように次々と僕に料理を食べさせてきた。一つ一つ食べるたびに『サッパリしてて…良いね』、『味がしっかり染み込んでて…美味しい』と丁寧に感想を言って言ったのも原因の一つなんだろう。でも彼女が朝早起きして作ってきてくれたのだ、これくらいはきちんとしておかないと。
その後僕が、お腹いっぱいになると今度は愛菜に僕がアーンをしてあげようとしたけどその時授業が始まる前のチャイムが鳴ったので、昼食はそこでお開きになった。
「大丈夫なの?…一口も食べてないけど…」
「私の方はお昼がなくても大丈夫ですよ」
「でも…僕がお弁当忘れなかったら…食べれてたでしょ…そう考えたら申し訳なくって…」
「そう思うなら、今日も一緒に帰りませんか?私行きたい所があるんですよ、紅はその時荷物持ちをしてくれたら、この話はチャラです。どうしますか?」
「分かったよ…じゃあ放課後デートだね…」
「で、で、で、デート!あーもう気にしないようにしてたのに紅は意地悪ですね」
「ゴメンゴメン…ついね」
心の声が出ちゃったよ。何とかその一文を僕は抑えた。
愛菜が可愛いくって口が少しすべちゃったな。気をつけないと。
「と、とりあえずそういうことです。集合は校門前ですよ!忘れないでくださいね!」
「了解であります…」
愛菜は決闘を申し込んできた、噛ませキャラみたいな感じの言葉を残して顔を真っ赤にしながら僕を置いて教室に向かった。
僕はその後ろ姿を見ながら、今日のデートができるのが嬉しくって小さくガッツポーズをするのだった。
毎日投稿3日目。
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