新・アネット爆誕 1
転生したのだと気付いたのは、十二歳の頃だった。
起端は登城した際、階段を登りきろうとしたところで、すれ違ったパトリスと肩が当たって転落し後頭部を打ったのが原因だ。
アネットは日本からの転生者である。
日本での人生は、それなりの人生だった。良くもなければ悪くもない、というには少々語弊があるかもしれない。
幼少期はこの上ないほど最悪だったと記憶している。
しかし、大人になってからはそれなりの人生であった。
日本人としての記憶では、彼女が小学六年生で修学旅行から帰って来ると、両親と小学校に上がったばかりの妹が親戚の叔父に殺されていた。
そんな事があり、彼女は婦警を目指した。
強行犯を捕まえることが出来るだけの力をつけるため、体を鍛えて鍛え抜いた。
しかしそれも、銃の前では役に立つことはなく、強行犯を追い詰めたところで、隠し持っていた手製銃で撃たれ一生を終えた。
そんな人生であったが、人並みの娯楽もそれなりに嗜んでいた。
そのうちの一つが、乙女ゲームだ。
イラスト専門サイトをネットで見ていると、素敵なオヤジ達が戦場を駆ける美麗絵に惹かれ、タグに書かれていた乙女ゲームをネット通販で即買いした。
アネットは前世からの、筋金入りのおっさんフェチである。
しかし、プレイするうちにあることに気付いた。
それは、中年以上の攻略対象者がいないということ。
スチルや物語の中には、ナイスミドルは登場するのに、登場するだけで攻略は出来なかったのだ。
アネットは前世を思い出して、放った第一声は、
「オヤジをくれ」