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私立御曽呂志学園オカルト研究会

こんにちは!

本丸茶一です!

拙い文章ですが、読んでいただけたら幸いです!

 鬼ヶ黄泉村おによみむら。食人鬼伝説の残るこの村は、数年前に起きた大地震によって一時封鎖。

 その地震によって村の上層部の住民や寺の住職などが死去した。

 その後、元々住んでいた村の住人たちが復興作業に携わり、村は元の平穏を取り戻した。

 しかし、その地震の後から村では奇妙なことが度々起こっているという噂が有名ホラー雑誌に記載され、村の伝説も相まってオカルトマニア達の来訪が後を絶たないという。




 「ってなわけで、今回のオカ研の合宿先は鬼ヶ黄泉村に決定よ!」


 今僕は、教卓の上に腰掛け、右手を力強く空中に突き出している神野会長を見上げている。

 神野遥かみのはるか。このオカルト研究会の会長にして、この私立御曽呂志学園しりつおそろしがくえんの生徒会長だ。


 「なによ大吉くん。あんまり乗り気じゃ無いみたいだけど?」


 「い、いや。そんなことはないですけど...」


 この神野会長と僕は家が近所という事もあり、昔から懇意にしてくれているのだが、歳が一つ上で昔から活発だった神野会長には何かと逆らえず、いつも振り回されっぱなしである。


 「にしても会長。鬼ヶ黄泉村だなんて、随分とミーハーな場所に行くんですね」


 「確かに私たちオカルトマニアから言わしてもらえばミーハーと言わざるを得ない村よ。しかし! 鬼ヶ黄泉村は今オカルトマニアの中でノリに乗ってる怪奇スポット! 行く価値はあると思うわ!」


 今、神野会長に意見したのは同じクラスの岩沢健吾いわさわけんご。僕と同時期にオカルト研究会に入会した所謂、オカルトマニアだ。


 「...ふむ。確かにその通りですね。まあ、実は僕も行きたいって思ってたんですけどね」


 「そう来なくっちゃ!」


 教卓の上で腕をブンブン回して合宿の話で盛り上がる神野会長は、時折バランスを崩しそうになっている。それにしても、この人達は、鬼ヶ黄泉村をミーハーだなんて言ってしまうような変わり者達だ。

 入学と同時に神野会長に無理矢理入会させられたオカルト研究会。特にオカルトが好きというわけでもないのだから、乗り気じゃないに決まっている。


 「他に意見がないなら鬼ヶ黄泉村で決定するわよ?」


 神野会長がオカルト研究会の一同を順に見やる。すると、教室の端の方で控えめに手を上げる姿が見える。


 「あ、あのぅ...」


 「どうしたの? 綾ちゃん?」


 藤崎綾音ふじさきあやね。僕や健吾と同じクラスで、僕達が入会した少し後に入会した女の子だ。

 藤崎さんはおずおずといった躊躇いがちな態度で、神野会長に意見する。


 「あっ、そのぉ...。鬼ヶ黄泉村っていったら、とても怖い場所ですよね? せっかくの合宿なんだし、もう少し楽しい雰囲気の場所がいいんじゃ...」


 藤崎さんの声は、話が終わるにつれて段々と小さくなっていく。


 「あのね、綾ちゃん。私達はオカルト研究会なのよ! 怪奇スポットに行かなくてどこに行くっていうの! その案は却下よ!」


 「で、ですよねぇ。...はぁ」


 藤崎さんは、神野会長に自身の発案をバッサリ切り捨てられ、あからさまに落ち込んでいる。


 「そもそもよ綾ちゃん。綾ちゃんって怖いのとか苦手よね? ならどうしてこの研究会に入ってくれたの? ...いや、あれよ! 綾ちゃんが入ってきてくれて、とっても嬉しいのよ? でも何でかなって?」


 「えっ? えっとそれは...」


 神野会長の問いかけに少し悩んだ藤崎さんはこちらにチラリと視線を移すと、慌てて神野会長に向き直った。

 どういうわけか、藤崎さんのあのような態度は日常的に見かける。


 「こ、怖いものが苦手なので、このオカルト研究会に入ることで苦手を克服できるかなぁ...って」


 「そういう事だったのね! 任せなさい綾ちゃんっ! 私が綾ちゃんを責任もってオカルトが好きで好きで堪らないオカルトマニアにしてあげるからねっ!」


 「そ、そこまではして欲しくないような...」


 藤崎さんは、手を握ってぐいぐいと顔を寄せてくる神野会長から若干顔を逸らしている。


 「ということで! 夏休み中の我がオカルト研究会の合宿先は鬼ヶ黄泉村に決定ね! 詳しい話はまた後日ってことで...解散っ!」




 後日、僕達のクラスに神野会長が訪れてきた。


 「どうしたんですか会長?」


 お昼休みの教室。お昼ご飯を食べ終えたクラスメイト達で賑わう教室に訪れてきた神野会長は、僕達三人を呼びつけた。しかし、呼びつけておいたにもかかわらず、ニヤニヤとして一向に話をしようとしない神野会長に、これは聞くまで答えないパターンだなと察した健吾が健気にも話しかける。


 「ごほんっ。よくぞ聞いてくれました! 昨日話した合宿の話がまとまったから放課後、研究会室集合ね!」


 僕達はだいたい予想がついていたので、あまり大きなリアクションをすることなく了解の意を伝える。


 「もう! 反応薄いんだから! まあ、そういう事だからよろしくね!」


 そう言い残すと神野会長は駆け足で去っていった。あなた仮にも生徒会長でしょうが。この御曽呂志学園で廊下を走っている生徒は神野会長くらいだ。


 「会長楽しそうだったね」


 藤崎さんは笑顔で会長の背中を見やる。


 「そうだね。まあ、遥ちゃ...会長はいつもあんな感じだけど」


 僕は昔の癖で神野会長のことを下の名前で呼んでしまう。子供の頃はよく遊んだのだが、小学校高学年になると女子と遊んでいた僕をクラスの男子達がからかいだした。僕はそれがすごく嫌で、あまり神野会長と遊ばなくなった。中学校に上がる頃には全く顔を合わせることも無くなっていた。

 高校に入り、久しぶりに神野会長に会い、そのままオカルト研究会に入会させられたのだが、神野会長は昔と何も変わっていないので、つい下の名前で呼んでしまいそうになる。神野会長は気にしないと言っていたが、流石に歳上の先輩を、それも生徒会長を下の名前で呼ぶわけにはいかない。


 「八神君って会長と幼馴染なんだよね?」


 「うん。まあ、子供の頃遊んでただけで、高校に入って久しぶりに会ったんだけどね」


 「そ、そうなんだね! あっ、それより次の数学小テストだったね! 私少し予習しなきゃだ!」


 藤崎さんはそう言うと、自分の席に戻っていき、友人と共に小テストの予習を始めた。


 「大吉、俺達も予習するか」


 「そうしようかな。健吾や藤崎さんと違って僕は勉強得意じゃないからね」


 健吾と藤崎さんは二人とも成績優秀で、テスト後に貼り出される順位表ではいつも上の方に名前が書いてある。

 それに健吾は勉強だけでなく運動も得意で、体育の授業の時は同じクラスの女子のみならず、ほかのクラスの女子までも見学に来るほどだ。


 「そうか? 大吉もそこそこ勉強できるじゃん」


 「まあ、それなりには家で勉強してるけど。健吾達と比べられるとね」


 僕と健吾は自分たちの席に戻ると数学の教科書を開き、小テストの予習する。

 

 「...そういえば大吉。お前、綾音ちゃんの気持ち気付いてんの?」


 ノートに数式をぎっしりと書き込んでいた健吾が急に顔を上げて問いかけてきた。


 「藤崎さんの気持ち? なにそれ?」


 僕が何のことだかわからないという態度をとると、健吾はすぐにノートに向きに直る。


 「いや、何でもない。それより、そこ間違ってるぞ」


 シャーペンの先を僕のノートに突き出し、間違えた箇所を教えてくれる。


 「え? ここ違うの?」


 「そこはな────」




 そんなこんなで小テストも午後の授業も終わり放課後になった。

 僕達は神野会長に言われた通り、研究会室に向かう。本来なら水曜日である今日の研究会は休みだ。今日は合宿の話だけだそうなのですぐに終わるだろう。

 

 


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