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群青に月
暗くなって、ものの輪郭がわからなくなった部屋で、スマホをいじっている。
夏の日が沈み、ようやく息つける涼風が入ってくる。
スマホの電池残量は16%、コンセントまで2メートル、這いだすという気持ちも見当たらない。
窓の外は群青の空。夏至を過ぎて暗くなっていく。
今日もなにをする気力もなかった。死なないために水ばかりは飲んだ。
文字も思い浮かばなくて、スマホに入っている数少ない音楽を聞いていた。
暑い日の中で、雪の曲を聞いていた。
汗も出ずに熱だけがこもっても、体は冷えきって水分を溜め込む。
流れることのない汗と涙と夏の曲が、出口を探して暴れている。
出たい、出たい、出たい、と暴れている。
スマホの充電をしないまま窓際で青黒く浮腫んでミイラになった僕の耳から溶けた脳髄と一緒に透明なやつらが流れ出す。
誰にも見えない透明な瀑布を月だけが見るのだ。