夢見たものは
目が覚めた。
頬が痒いと思ったら、泣いていた。
「なんだろ……」
僕は起き上がる。
涙で濡れた世界は眩しかった。
机に置いた封筒。
「ああ……」
不合格通知。昨日届いた。
『大丈夫だよ』
笑った僕の顔。食器棚のガラスに映ってた。
眉が下がった情けない作り笑い。
『そんなに心配しないでよ。来年もあるんだからさ』
来年もある。もちろんある。
だけど僕に残されたのは、来年もう一度だけなんだ。
年齢制限。
どうしようもない。
身長不足。
どうしようもない。
天球儀、机に置いてる。小学生のころから。
朝日に光ってる星たち。
そこへ行くのだと決めていたのに。
僕にはもう船に乗る資格がない。なくなってしまう。
ため息もでない。ベッドに座ったまま。
カーテンの隙間から漏れいる朝日。
あと一年。
背が伸びれば、船に乗れる。
成績をあげれば船を作れる。
一臣は行ったんだ月へ。僕を置いて夢へ。
『一臣はすごいよ。僕はダメだ』
一臣は笑った。
『なにも宇宙だけがすべてじゃないさ。他にも夢はいっぱいあるだろ』
夢?
そんなの一つしかない。一臣だって知ってる。
諦めさせようとしてくれてる。
無駄に時間を使うなと。
あきらめる?
それってなに?
無駄な時間ってなに?
僕にはこれしかないんだ。
つかめなければ、他のものはいらない。
他のなにものも代わりになんかならない。
痛い。
ヒリヒリする。
欲しくて欲しくて今にも吼えそうだ。
窓に飛び付く。窓を開ける。
朝の月が白く薄く見える。
「そこに行くんだ!」
思わず叫んだ。
思わず吼えた。
「そこに行くんだ」
痛い。
痛い。
痛いくらいに、拳を握りしめた。