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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

美しき獣

作者: 新宿のママ

ホラーじゃないですかね?

 


  01

 

 某日



「あれまー、約束の時間になっても来ないななぁにやってるんだが」


 今日はどこかの大学生グループがコテージからチェックアウトする日の筈が定刻の時間になっても姿を現さなかった。

 コテージの持ち主は痺れを切らし、直接向かいに行く事にした。


「おーい、いつまで寝てるんだ! このお寝坊さん」



 ドンドンとドアを叩いて起こそうとしたが何も反応はない、疑問に思った持ち主はスペアキーで鍵を開け中に入ったが


「うわあああああああああ!!!」


 リビングには男女3人がなんともいえない姿で発見された、ただ通常の死体と違うところがあるとすればそれは……



 ――お互いがお互いの首を噛みちぎって絶命していた



 ここまでは第1発見者のコテージの持ち主の証言だ、まさかC県のI町で残酷な猟奇事件が起きるとは思いもしなかっただろう。

 私は朝から残業で警察署にいた為、この通報を聞いた時には正直少し笑いそうになったが(・・・・・・ )それを抑えて同僚を呼び急いで現場にいく


「しかし、まさかこんな町に猟奇事件を起こす輩がいるとは市長もご立腹だろうな」


「ええ、あの人が掲げているスローガンが台無しだわ」


 I町の市長が掲げているスローガンは《 都心よりクリーンで平和な町を 》と可愛らしいものだが彼は本気で目指している


「お話中のところすいません! 客室から3人の荷物とは違う荷物が出てきました!」


「……っ!?もう1人いたのか! だとしてもなにをやったらこんな死体になるんだ! 」


「翔、犯人は恐らくまだこの地域にいるはずだから私は市役所に行って放送で住民に通達するから貴方はこの辺りの出口封鎖しといて!」


「お、おい! お前1人で大丈夫なのか!?」


「平気よ、平気」


 私は急いで市役所に向かう事にした。現場から市役所まではさほど遠くは無い為、女の私でも15分ぐらいに着ける筈だったが……


「ヒッ……!!殺さないでくれ!!」


「…………」


 市役所に向かう森の中で偶然にも容疑者を見つけてしまったようだ。

 私は念の為懐にある拳銃に手を伸ばしつつ、茂みの中にいた彼に話をかけた。



「ねぇ、君なんで怯えているの?」



「俺は悪くない……アイツらが悪いんだ。俺は悪くない悪くない……」



 壊れたおもちゃのように同じ事をブツブツと繰り返している為、私は怪異の仕業と判断した。

 怪異に憑かれてしまえば普通の生活には戻れない、仕方ないが荒技で彼を助ける事にした。だが、その前に一つやる事がある。



「はぁ……いい加減出てきたらどうなの?怪異さん」


 私がなにもない空間に語りかけると突然彼の体から靄のようなのが発生し、形を整えていった。



『貴様、ワシが視えるとは只の人間ではないな?』


 私の目の前には動物でも人でもない「なにか」がいた、それは通常の人間なら死に至るような代物だと推測した。


「私は生まれつき貴方みたいな非現実的な物が見えるだけの只の人間よ」


 嘘偽りなく(・・・・・・・・・ )私の事を話した、なんとなく嘘を話してしまったら私も彼のようになってしまう気がするからそれだけは真っ平御免だ。


『まあ、良い。ワシはこの姿で顕現してしまった以上は嫉妬や恨みを持っている人間から精気を奪わなくてはならんからな』


「でも、何で彼をあんな風にしたの? 単純に殺して奪えば……」


 その後の言葉を言おうとした時、どうやら私は「なにか」の地雷を踏んでしまったようだ。


『ワシはアイツのせいで感情を喰わないと現世に残れなくなった!アイツが私の社に腐りすぎた感情を持ってきてしまったせいで穢れを負い、神としての威厳や尊厳を失ってしまった。ワシは願い通りにしたまでよ!! 』


 突如、怒り狂ったメンヘラみたいに感情を露わにしていた。所詮は怪異、幾ら神だったとしても彼の腐ってしまった感情の前に立てば威厳もない。

 あろうことか「なにか」は先程の老人口調から少年口調にそして青年口調へと変えようとしたが



「やっぱり気持ちが悪いから喋らなくていいよ」



 懐に入ったままの拳銃を取り出し、汚らわしい物が喋ろうとした瞬間に1発、2発と弾をブチ込む。

 それだけで死ぬとは思わないが一応は姿は消えた。



「さて、問題は彼だ」


 アレが消えても彼の身体には怪異の心臓ともいえる物が埋め込まれている、除去しなきゃまたメンヘラ節が始まるのは御免だ。

 彼は今だに気絶していて起きる気配はない、そして私の解呪方法を止める者はいない。



「さあ、楽しい楽しい解呪の時間だ」


 まず、私は彼の背中から首にかけてゆっくりと舐めずるよう見ていくがない。もしやと思い、体をひっくり返すと彼の胸部にはくっきりとデカい目玉が張り付いていた。

 私はその目玉を物理的に切り取ろうとした瞬間、頭の中に複数の情報が流れ込んで来た。



  02


 男女四人、少女漫画にありがちで2組カップルが出来やすい人数だが現実はそう甘くはない。

 青年と他の四人はどうやら小中高大いっしょらしく第三者から見ても今どき珍しい4人組だった。

 小中は恋愛感情もなく、ただ「好き」という感情だけ。だけど高校から性の価値は変わり、お互いを男と女として見始める。


 ――これは普通の場合のみ適用される


 彼らの場合は少し特殊だった彼というのは分かりにくいので青年A、B、女B、Aとしよう。彼らは複雑な四角関係で青年Bは同性のAの事を好きで女Aは同じAを好きという奇妙さをだし、女Bは自分以外のどちらかを食べようか品定めをしていた。

 大学に入ってからもその関係は続くと思われたが長くはなかった。

 サークルの先輩から合宿地の視察として男女四人を行かせ、先輩としてはカップル誕生させようとしたがそれが間違いだった。

 青年Bと女Bが少し席を外すと、女Aと青年Aは自分の見ていた「彼」とはかけ離れていた気色悪い愛し合いをしていた。

 事実を知った2人は酷く絶望し、やがてなにを思ったのか合宿地にまつわる呪いを実行しようと……


「あとは大体想像できるわね」


 どうせ、無駄な葛藤をして人間の汚いところを見てしまった青年Bは酷く酷く絶望してしまったのだろう。

 私は時間を無駄な記憶に削られた為、急いで処理を施し青年Bが目覚めるまで


「痛いけどあの人の為なら……」


 自分の腕に残りの弾をブチ込む、その日は弾を少なくしていた為2発で済んだ

 かなりの激痛だけど急所は外したから恐らくは死にはしない。私は残った力で彼の手に拳銃(・・・・・・ )を握らせた


 ―――――――



 これはあとから聞いた話だが私が撃たれて数分した後に翔達が来て救急車を呼んでくれたらしい、少し遅かったら死んでたと言うがまあ今のところは死なない予定だし大丈夫。

 でも今、私はこの上ない幸せを感じているので「彼」の事や死について考える事はやめていた。



 「綾!大丈夫かい!?」


 私の病室の扉を勢いよく開けた貴方は私の元に駆けつけ、体を抱きしめてくれた。


 「君はいつも無茶をする……私だって女であり人間だ、唯一の親友の綾を心配しない訳がない」


 「ごめんなさい……私貴女の為に頑張ったつもりなのに」



 「でも君が無事で良かった、少し遅かったら君は……」


 本当に本当に優しい人、市長でありながら私を心配してくれる貴女を私は好き。


今日もI町は《都心よりもクリーンな町 》です。


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