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転生珍獣王女奮闘記  作者: 千里
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42/66

No.42 missionはウルフ


まず三人で移動してきたのは、多数の目撃があった場所。

本命である青の草原の北側。

馬なら数十分に場所は、踏み荒らされた草や花があるもののそれだけ。

今までだって、氷上ウルフの単独ならたまにいたらしい。

その場合は、生け捕りにして山に戻す。

一匹・二匹の単独なら、第二騎士団のメンバーがいれば簡単に終る。

人と距離を取りたがる氷上ウルフにしては、今回の集団での現象は本当に珍しいとか。

あんなに狂暴になるのも。


「ここには、気配はなし…と」


「そうじゃな。ハズレかの?」


周囲を見渡して各々呟いた私とおじじ様に、ノートに何かを書き込んでいたナルサス様は納得顔で言った。


「氷上ウルフの好物は゛負の感情゛。他者への積年の不幸への願望、禍々しいまでの死への願い。大きければ大きいほど、深ければ深いほど…一定の範囲を超えると、ご馳走になるとか」


「氷上ウルフとて、稀少種と言えど魔獣。極度の興奮状態だったのも、負のエネルギーを感じてだったのかもしれんな…」


「負のエネルギーって…」


「人の妬み嫉み。恨みもあるな。こっちの方向は、青の草原と直線上には城の南側か」


淡々と言うナルサス様に、私は軽く頭を抱えてしまう。

青の草原には誰も住んでない。

よって、簡単に根源が透けて見える。

城の南側は、王妃。母様の宮がある区域。

そこで、ローズニアも暮らしている。

私とお兄様は、東側の父様のメインに生活しているスペースで暮らしている。

妬み嫉み。恨みに怨み。

なぜ、今なのか?

答えは簡単。十五歳の今だから。

逆に今以上の機会はないのだから。


「……ふむ。これは思った以上に、手こずるかもしれんな……」


「餌に何かか見当つくのか?」


流石、仕事馬鹿が仕事意外には…疎いらしい。

私からしたら今更だから、驚きもしない事実だけどね。

母が私を憎んでいるのは、結構有名な話なんだけどな~。


「多分、母だよね…。この時期だしね」


「この時期?……ーあぁ、決まれば将来を左右するからか」


「じゃろな。子の行く末は、ある意味自身のステータスになるからの~。自分に似た娘を、いい国に嫁がせたい気持ちは分かるんじゃがな…」


「それも分からなくはないんだけどね~」


「ディルティア姫は、他人事みたいだな

」


ナルサス様の発言に、肩を竦める私。

だって、さっきも言ったけど今更だから。

産まれた瞬間に、存在否定されていたんだもん。

母の場合は、逆に優しくされた方が怖い。

何か大きな事を企んでいるんじゃないかって。

可愛くないと思われようとも、刷り込み式に否定され続けられてきた私に、母とは他人より遠い存在。

だから母からの仕打ちに対して、悲しいとか寂しいとかの感情は、イマイチ遠くて理解出来ない。


「まぁ、今更ですから。私の事は気にしないで下さい」


「そうか。……すまん」


「いえ。謝られる程の事じゃありませんし、結構有名な話なんで。それより…どうしましょう?」


このまま見つけられないのは困る。

民の誰かがケガしたら大変だ。

まずは探さなきゃ。

さて、どうしたものかと考えていると、ナルサス様は目を伏せて言う。


「大まかな候補は絞れる。後は地道に行かなければならないが」


「ナルサスの坊っちゃんは、探索系の機能が使えるんじゃろか?」


「もう坊っちゃんはやめてくれ、チェルシー殿。魔獣の探索くらないなら、ある程度なら可能だと思う。ディルティア姫も、それくらいなら可能じゃないのか?」


「私は一応。ただ、性能はあまり。そっち方面は、ハーツが得意なんで必要なかったんですよね」


「そうか。じゃ、俺が探索してみよう」


目を閉じて集中するナルサス様に、私とおじじ様は静かに見守る。

周囲は相変わらず静かで、集団がどこかに潜んでいるなんて信じられない。


「怪しい場所は三つ。この先の樹木の場所と、青の草原の奥にある花畑。この場所から右側に向かう岩場」


あげられた怪しい場所を弾き出して、効率の良い道筋を考える。


「近い場所から潰していきますか?」


「それだと…樹木からじゃな。次に花畑、岩場と行くとしようかの?」


「それで構わない。移動は刺激しないためにも、転移魔法はやめた方が良いな」


「たいした距離じゃないし、問題なしですよね。では、行きましょうか?」


私達は氷上ウルフを探すべく、徒歩で移動しました。

結果として、樹木と花畑はハズレでした。

臆病な魔獣がチラホラ。

岩場周辺に近付いた時、急に空気中に冷気が漂う。


「反応では…十五匹ぐらいだろう。ボス級になれば、対話が可能な個体がいるとか」


「よく調べましたね~。そこまで詳しい資料は、一部でしょう?」


「あぁ、まぁ。でも、閲覧可能な本の中で、一冊だけ詳しいのがあったのは幸いだったかもしれないな」


「助かりました。その情報がなかったら、ここまで簡単に来れませんでしたし」


私とナルサス様が話していると、おじじ様が急に剣を抜き構えた。

周囲には氷上ウルフ十五・六匹が、低い鳴き声で私達を見つめている。

さて、生かしたまま移動させるのは、どうしたらいいか?


「無傷と言うのは、難しかいかもしれんのう」


「ボスを探してみるしか…」


私も杖を構えながら、間合いを確認する。

何時でも魔法を撃てる態勢で、氷上ウルフを見つめ続けていると


「この中で、ボスはいないか?俺達は話したいだけだ!」


ナルサス様が、奇想天外と言うか合理的と言うべきか。

真っ直ぐ過ぎる言葉に、奥にいた白い毛の艶やかな気だるげなウルフが歩み出てきた。


「なんだい騒々しいね。ボスって響きは嫌いだけど、この群のリーダーは私だよ。」


驚いたよ、マジで!

問いかけに律儀に答える、群のリーダー。

気だるさが色気漂わせてる、大人な女性のリーダー。

これなら、もしかしたら…。

私も気を取り直して、構えていた杖をポシェットに片付けて向き直ります。


「初めまして、私はディルティア。私は貴女達を討伐したくありません。どうしたら、元の巣に戻ってくれますか?」


「最初に私等を起こしたのはお前達さね。さて、お前達は私等に何をしてくれる?」


「皆さんの欲しいモノを、私の出来る範囲で渡します。」


リーダーさんは、少し考えて怪しく目を細める。


「極上の魔素を。もちろん、ワタシ等全員にだよ?」


うん、魔素=魔力。

極上の魔素とは、純度の高い魔力。

それなら、私でも用意出来る。


「分かりました。私のでよろしければ…それなりに満足して頂けると思いますよ?」


両手に魔素を溜めて練っていく。

綺麗な淡い金色に輝く丸い魔力のかたまりが出来ると、リーダーに差し出す。

リーダーはクンクンと匂いを嗅いだ後に、パクパク無言で食べ始めた。

お気に召した様で一安心。


「ティア、大丈夫か?わしも手伝いしようかのう?」


心配気味に私を見ているおじじ様に、私は笑いながら首を振る。

両手では魔力を溜めて練り続けながら。


「力つきたら交代ヨロシクです!それまでは頑張ります!」


「力つきたらダメだろ。その前に合図しろ」


「……善処します」


「なんで微妙に後ろ向きなんだよ…」


「 そうでもないですよ?前は言わないでブッ倒れてましたから!」


「絶対、ブッ倒れる前に言え。魔力を空にする訳にいかないからな」


一応ナルサス様に頷きながら、私は淡い金色の魔力を練っては渡していく。

数十分かけて魔力を溜めては練る。

練っては渡す。

繰り返して十六回目。

ちょっとダルさを感じながら渡し終わると、毛ずくろいしていたリーダーが私を見て満足そうに目を細める。


「アンタの魔素は甘味だね。柔かな甘さで味も文句なしさ。お腹もふくれたし約束だ、ワタシ等は巣に戻るとしようかね」


「お褒めにあずかり光栄です!」


合格だとばかりに、次々と魔素を完食したウルフ達が山を登っていく。


「一つババァの忠告だ。くれぐれも周囲に気を付けな。アンタには、負の破片がいっぱいこびりついていからね」


リーダーは最後に、そう言って私達に背を向けて山に帰って行った。


「こびりついているって…」


言葉を濁そうとするナルサス様に、私は苦笑してしまう。

そりゃ、今までだって色々狙われていたからね。

強引な手に出てきたのは、本当に最近だけど。


「生きていればハッピーって事ですよ」


「まぁ、ザックリまとめるとそうじゃな」


「ねぇ?単純だけど大切な事ですよね~」


おじじ様と頷き合っていると、ナルサス様から微妙な視線が。

コメントに困った時の顔だ。

そりゃ、困るよね~年下に、生きてるだけでハッピーとか言われたら。

おじじ様は、私を知っているから平然としているけど。

微妙な空気ごめんなさい。


「さて、ウルフさん達の移動確認して帰りましょうか?」


「あ、あぁ。そうしよう」


「ティア、身体は大丈夫かの?」


「ちょっとダルい程度だから、大丈夫!ただ、もう今日は大きな魔法は使いたくないかもです」


帰りの転移魔法でギリ。

溜めて練っては、意外にも魔力を使うのですよ。

今、寝て良いって言われたら、寝ちゃえる自信ある!


「じゃ、帰りの転移魔法は俺が発動させる。立候補で来たんだ。少しは仕事しないとな」


「それがいい。ティアは少し休んでいるといい。確認はわしとナルサスの坊っちゃんでしようとするかね」


「じゃ、行ってくる」


「よろしくお願いします!」


二人が消えてる間私は、岩場に座りながらウトウト。

日差しといい、心地良い温度といい。

私は最高のウトウトを満喫した。


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