No.3 ストーリーがスタートするようです
生きるいる事に感謝する毎日を送って、とうとうやってきたした十五歳の誕生日目前。
父の執務室に、私と宰相さんのブロッサムさん、兄様がいます。
嫌な予感で今すぐに、出来ることなら逃げ出したい。
「さて、私がティアを呼んだ理由は分かるかな?」
「いいえ、全く検討もつきません」
「本当に?僕の妹は賢いはずなんだけどな~」
月の化身と言われている父と兄を見て、私は曖昧に笑顔を浮かべる。
頭の中で警報が鳴っていますよ。
赤ランプ点灯して、嫌な汗が流れている。
「では、父様から二つのお願いを聞いていてもらおう」
「…はっ?」
間の抜けた返事をする私に、父は気にする事なく満面の笑顔で話を続ける。
ちょっと拒否権は…ないよね。
「ティアは、エメラル国の歴史はしっているいかな?」
父の突然の言葉に、私は頭の中の記憶を掘り出す。
エメラル国は、魔力の先進国である伝承が残っていた。
魔女の呪い。話をザックリまとめると、魔女の逆恨みから、女の子の出生率を下げる呪いと、王族の血を引く男子は愛する者を持てない呪い。
呪いを解くのは、神に愛された奇跡が現れた時。
記憶をたぐり寄せられた内容は、これくらいだ。
「でも、もう何百年の前の話ですよね?」
私の言葉に父は難しい表情のまま、首を横に振る。
「それがまだ続いているんだ。そこで、彼等を助けてあげて欲しい」
「ティア様は金色の瞳の持ち主で、金色は神の祝福を受けている証」
「いえいえ、宰相さん無理ですよ?私は日々、自分と仲間達の事でいっぱいいっぱいですから!」
今度は私が左右に首を振る。
生き抜く事に全力を注いでいるのに、仲間以外の人を助けるなんて、キャパオーバーになる。
生きるか死ぬかの毎日に、更に負荷は遠慮するよ。
毎日、生きている事に感謝して眠りにつく私に、これ以上は本気で無理だ。
「大丈夫だよ。スノーリーと仲良くなれて゛愛しい子゛と言わしめたんだから」
「スノーリー様は、エメラル国の兄王でしたから。呪いかあるのもかかわらずに、ティア様を愛していらっしゃたったのですから」
「ちょっと待って下さい!先生が兄王って……いえ、父様の親友なんだからありかなしかで言えば…いやいや、ちょっと待って下さい」
「僕もスノーリー先生だったけど、ティアと先生はいつも楽しそうで、ちょっとだけ妬けたな~」
「そうですね。毎日、お二人とも楽しそうで微笑ましかったです」
確かに可愛がってもらいましたが、信愛に近いのでは?
大きなくくり過ぎて、愛とはなんぞや?状態。
難しい表情の私に、 兄様は花が咲き乱れんばかりの笑顔を向ける。
綺麗な笑顔も今は恐怖でしかない。
誰か助けて~!なんて、無駄だと分かってても考えちゃう。
「だから、僕の親友達を助けてくれないかな?」
その言葉に、ピシッと私は固まります。
だってそれは…ヒロインに兄が言う言葉だよ?
間違えても、姉の私が言われる言葉じゃないよ!
この言葉から、ストーリーがスタートすると言っても過言じゃないのに!
あの妹がこの機会を逃すはずがないし。
死亡フラグが立つとか、本気で勘弁して欲しいのに。
私は目立たずに、独り立ちしてゆっくり余生を送るつもりなのに!
「私じゃないとダメですか?」
「ティアの他に誰がいるの?」
コテンと首を傾げる兄様は美しいね。
でも、言ってる事は悪魔の囁きだよ!
否定の言葉を探そうにも、兄様と父様の前では強く言えない…。
普段薬師と街に出入り出来ているのは、父様と兄様が黙認してくれているからで。
敵わないのよ、この二人には。
「じゃ、会ってみるだけでいいから」
「…それぐらいなら…」
苦笑する私に、兄様はまたキラキラ笑顔で頭を撫でてくれます。
兄は小さい時から変わらず、私の頭をよく撫でたり抱き締めたりする。
私も嬉しいからそのままだけど、誕生日からは気を付けなきゃ。
誰の目にとまるかは分からないから。
「では、もう1つのお願いは分かるかな?」
「え…と、まさか今回の誕生日に関係ありますか?」
「もちろん。国が傾きそうで、頭を悩ませてる事態だよ」
賢王の父様が頭を悩ませてる事態。
それだけで、分かってしまう自分が悲しい。
きっと妹か母の事だね。
母もさることながら、妹・ローズニアは小説ファンが見たら泣いちゃうレベルで、甘やかされて自分に正直過ぎる残念な人に成長してしまった。
ヒロインの影があるのは、外見の金髪に赤い瞳の美少女な顔立ちくらい。
赤いドレスが大好きな彼女は、父様や宰相さんが頭を悩ませてる問題児に立派?に成長していた。
「…他国に迷惑かけるのは避けなければならない。多少の事なら相手もローズニアを許すだろうが」
「嫌がる相手にこそ、ローズニア様は闘志を燃やしそうでして…」
「特にエメラル王国は魅力的だから心配なんだ。僕の親友達を彼女には渡せないし、彼等も節穴じゃないからね」
「そこで、ティアの出番だよ。ローズニアが暴走したら、知らせてくれ。どうせ、エメラル国の面々はティアが気になって一緒に行動するだろうし」
「ちょ、気になる事前提ですか?!」
「うん、もちろん」
行儀が悪いかもしれないけど、飲みかけた紅茶を吹き出してしまう。
さも、当然みたいに言われても、どう考えてもパンダみたいに聞こえる。
あ、珍獣だからあり?
珍獣と言われるのには慣れてるけど、猫ぐらい被れるよ?
頑張れば…多分。
口をハンカチで拭きながら、父を拗ねた気持ちで見る。
「大丈夫だよ。僕も手伝うからね?ティアは、いつも通りに過ごして」
「えぇ、ユーリやハーツ殿もいますし」
「私の可愛い自慢の娘だから、心配いらないよ。丸っとまとめると、ディルアルの親友達をもてなす役目だと思ったくれたらいいよ」
父は極上の頬笑みを浮かべる。
この頬笑みはダメ。危険すぎる。
『庭の花を摘んできてくれる?』ぐらいの軽さで、暗殺者を生捕り命令が出る時と同じ表情だ。
気合いを入れないと、即天使とご対面☆コース。
嫌だ、嫌すぎる。
「緊急時はティアの金狼を使うといい」
「金狼…はい、わかりました」
ガチで気を抜いたら、フラグが立つ。
金狼とは、私の契約精霊を筆頭とする諜報部隊。
彼等は私を支えてくれた大切な仲間達だが…使い方が難しい。
父にも気に入らないと無視する、不敬なメンバーもいる。
だから、有事の際にしか使わない。
それを使用する=危険度MAX決定。
まさかの展開で始まったストーリー。
これを無事生き抜けば、きっと平和な日常があるはず!
そのために頑張ろう。
とてつもない不安しかなくても。
神様、ギフトをつけるなら平和なスローライフな日常が良かったです。