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転生珍獣王女奮闘記  作者: 千里
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No.14 王子様達と晩餐会


色々な意味で疲労困憊した日の夜。

私を更に追い討ちをかけるかのごとく、お兄様が誘いにやって来た。


「もちろん、行くよね?」


サンエーリ様の晩餐に呼ばれているらしく、お兄様は笑顔で佇んでいる。

しかも、イエスしか聞かないとばかりの笑顔で。

まだ考えなきゃいけない事があるのに、お兄様の笑顔は有無を言わせない。


「…はい、行かさせて頂きます」


「良かった。サンとリーフが喜ぶよ。もちろん、僕もね」


美しい笑顔を見せるお兄様に、私は絶対敵わない気がする。

一応、作業用ドレスから晩餐用のドレスに着替える。

お兄様専用の侍女を用意する辺り、否はないと踏んでいたらしい。

お兄様の隙のなさに、驚くやら呆れるやら。

その間お兄様は、精霊に何かをお願いするとフワッと精霊が消えて、それに向けて頬笑む。

用意を終えると、お兄様は手を差し出してくる。

その手に手を添えると、握られてエスコートと言うより子供の手綱を握る親の構図。

逃げないのに…信用がないようです。

部屋に逃げ込めば、ハーツやユーリがいるから逃げられなくはないけど…今は逃げないよ?


賓客室は作業場から比較的近いみたい。

すぐエメラル国の騎士が、直立不動で立っている。

お兄様を見ると一礼して、恭しくドアを開ける。

そこに現れたのは、サンエーリ様とリーフ様。

飾りっけのないシャツにズボンなのに、二人の美形はかげる事を知らずに輝いている。

さすがイケメン。眩しいです。


「やぁ、待ってたよ」


「おう、ティアもディルもお疲れ。座って話そうぜ」


リーフ様に誘われて、席に着きます。

正面にはサンエーリ様とリーフ様。

横にはお兄様。

和やかに始まった晩餐は、穏やかに進んでいく。

その言葉を聞くまでは。


「ティアは治癒魔法も使えるんだね」


「あれは、すごかったよな~最後のヒールは」


「えっ、どうしてそれを?」


ちょっと待って!

どうして、そんな事まで知っているのでしょうか?

一緒に行動したのは、ユーリとハーツの二人のはずで。

まさか!と、思ってお兄様を見ると、あのキラキラ笑顔で首を傾げている。

これは確信犯の目だ。


「お兄様、いつから見ていらっしゃったのですか?」


「魔導師が側に寄る少し前から、かな?」


「ほとんど全部じゃないですか!どうして…」


面倒くさい事しちゃったんですか。

口にはだせないけれど、思わずにはいられない。

お兄様がいらっしゃったと言う事は、もしかしてお二人も?

そう思って見てみると、笑顔で縦に顔を振ります。


「ごめんね。部屋に戻るついでに、ティアの様子が見たくて」


「顔色悪かったし、心配にもなるだろ?」


「そうですか。心配おかけしました」


確かにあの時は、焦燥感でいっぱいで周りを気する余裕はなかった。

だから、気がつく人は気がつくのかも。

それが、サンエーリ様とリーフ様なのが、驚きで一杯になるけど。


「あの現場を知ってしまえば、誰でも顔色悪くするよね」


しごく当たり前に呟くサンエーリ様に、私も苦笑して頷きます。

治療は慣れているし、現場にだって行く。

でも、誰かの命が危ういのは慣れないし、慣れてはいけない。


「今日は比較的楽な方で安心したんですけどね」


これは本当。

大きな怪我の割には、我慢強く意識を保っていてくれたから。

治癒魔法もすんなり受け入れてくれた。

治癒魔法は、ある程度の信頼がないとダメだったりするんだよね。

途中で暴れたりされたら、私の魔法は断たれてしまう。

そうなれば、もはや私の手には負えない。


「今日の面子は、第二騎士だったから大丈夫だったでしょ?」


「第二騎士?」


サンエーリ様は不思議そうに、瞬きする。

リーフ様も同じで、私達の言葉を待っているみたい。


「叩き上げの精鋭部隊です。身分は塵ほども考慮されない、己の武力のみの隊で、皆さん実力者なんですよ」


「ティアと行動するのも、第二騎士が多いんだよ。第一騎士団は貴族が多くて、荒事にはむかないから」


そう第一騎士団は、主に貴人の護衛や王族の警護。

第二騎士団は、魔獣の抜刀から隠密行動まで。

ある意味幅が広いのは、第二騎士団。


「隠密行動までかい?」


「そうだね。ティアの行動に付いていけるのは、第二騎士団の中でも精鋭中の精鋭だから」


任務にもよるけど、だいたい毎回面子は決まっている事に、今更ながら納得してしまう。


「ティアはすごいんだね…。」


「そんな事ありませんよ?」


サンエーリ様の感心したような言葉に、私はどうだろう~と考えてしまう。

私的には、特に何かをした覚えはない。

父様を少しでも、お手伝い出来たらいいな位にしな思ってないし。


「王太子のお兄様に比べたら、私は気ままで自由ですから」


「ティアは気ままに暗躍しちゃうの?」


悪戯っぽく言うサンエーリ様に、私は困惑してしまう。


「それは…まぁ、きっと珍獣故かもしれません。華やかな表舞台より、父様の手伝いのほうが気楽なんですよね」


「まぁ、表舞台は腹の探りあいだからな。嫌気が差すのも分かる」


リーフ様の発言に、私は最もな意見に縦に首を振る。

腹の探りあいは、本当に面倒なんだよね。

口では親切そうでも、目がギラギラしていたり。

それは、成長するにつれて増していくし。

私でそうなのだから、お兄様や王族や血縁者になれば余計だよね。


「私はティアの生き方が好きだよ」


「へっ??」


突然のサンエーリ様の言葉に、間抜けな声が出てしまう。

リーフ様も頷いて微笑む。


「自分の役割を自身で切り開いて、突き進む姿が好きだよ」


「王女の役割だって、きちんとこなしてたしな。その上で突き進むのは、本当に難しいからな」


「王女業は最低限ですよ?それに、その他は趣味といいますか…えーと」


誉められ慣れない私は、しどろもどろになって否定するのに、お兄様を含めて三人の視線は優しく穏やかで。

余計に恥ずかしくなってしまう。

誉め殺し。本当にそれだ。


「照れなくてもいいのに」


「なぁ?本心で感心しているのに」


「無理です、照れます!慣れていないんですよ~」


なんですか、この甘い空間は!

色で表すなら淡いピンク。

フラグですか?

折り方を教えてください。


私は恥ずかしさに耐えながら、食事に手をつける。

味なんて分からないけど、とりあえず口に運んだ。

早く晩餐が終わればいいと思いながら。



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