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転生珍獣王女奮闘記  作者: 千里
1/66

No.1 終わりは始まりです


ゆらゆら微睡みの中。

最高級に心地よい空間を、邪魔する様に遠くで聞こえていた声が、段々と近くなってくる。

少年とも少女ともとれない声が、微睡みを遠ざけていく。


『もしもーし、起きてくだーいっ!』


邪魔された事に苛立ちながらも、仕方なく目を開けた私の目の前には…金髪・碧眼の美少年が1人。

寝っ転がっている私と、正面にある美少年の顔。


『やっと起きてくれました!なかなか起きないので、またミスがあったのかと心配しちゃいました!』


「それは…ごめんなさい?」


謝りながらも、頭の中で疑問がいっぱいだよ。

まずは、重力を無視した登場の仕方。


「ちょっと待て。なんで浮いているの?」


今、現在。寝ている視線の先で美少年が浮いているのを見てしまった。

そんな彼は、さも不思議そうに首を傾げた後にニッコリ微笑んだ。

アイドル顔負けの微笑みにつられて、私も笑顔を張り付ける。


『えーと、天使なんで!貴女の天使ですよ!』


「…お休みなさい」


私は笑顔を張り付けたまま目を閉じる。

気配で自称・天使が慌てているのを感じているが、起きてやる気なんてない。

今どき、中二病の1人や2人いても驚かないよ?

実際私も中二病とまでは行かなくても、立派なオタクだし。

マンガも小説もゲームも好き。

仕事の休みさえあれば、趣味に没頭する非リア充だった。

でも、中二病MAXは遠慮したい。


『あ、あの!中二病じゃなくて、本当の天使ですから!』


「思考ダダ漏れてる?」


『はい。で、ですね!お知らせがあります!』


また正面に浮かびながら、私が目を開けたのを確認すると、自称・天使は早口で言葉を続ける。


『貴女は神々の悪戯、ちょっとしたミスで29年の生涯を終えました。それで』


「ちょ、待って。サラッと、流しているけど神々の悪戯って何?!」


『えーと、聞きたいですか?本当に些細なミスだったんです…上司にとっては』


「上司って神様?」


『えぇ、腐った人ですが神様です!で、聞きますか?』


私が無言で頷くと、自称・天使が話始めましたよ。

地球の神とある世界の神2人が、小さな事で言い合いをしある賭けをする事にした。

もし勝てたら、相手側にいる人間1人をもらえる、と。

そして賭けに負けた地球の神は、1人の人間を選ばせた。

選ばれたのは特に代わり映えのしない、普通の29歳・社会人の女性。

特別な人物な訳じゃないと、躊躇うことなく了承した地球の神。

ある世界の神は、大変喜んだ。


『゛やっと見つけた、と。』


ふぅーと、溜め息を吐き出した自称・天使に、私も魂が出るような溜め息を吐き出す。

あ、今が魂だったか!と現実逃避してみたり。


「ねぇ、今更だけど…見つけたってなに?」


地球の神を殴り倒したい衝動はあるものの、現状把握が必要だと思うのは…悲しいかな29歳故だね。


『そこで、先程の話が繋がります!貴女はよく知る魔法と剣、時々暗殺者のいる世界に転生します!』


「えっ?!最初から死亡フラグ?!」


マジで神を殴り倒したくなった!

普通に生きていた私が、いったい何をしたんだよ!


『あ、大丈夫です!あちらの世界の神様は、こっちよりはマシですよ!ちゃんとギフトを付けてくれるみたいですから』


「マシって…」


『貴女には迷惑をお掛けしたので、クソ上司からもギフト貰っときましょうね!』


「ソーデスカ…」


爽やかに言い放つ自称・天使の背景が、一瞬真っ黒になったのは気のせいだよね?

仮にも天使なんだよね?!

私は乾いた笑いしか出ない。


「……辞退は?」


『出来ません。一応、上司達が決めた事ですから。本当に申し訳ありません……』


美少年の憂い顔は威力半端ないです。

意味の分からない罪悪感が沸いてくる。

なんか、彼も被害者なのかもしれないと思うと微妙な心境になっちゃう。


「…君もお疲れ様です。」


『貴女程ではありませんよ。僕は仕事ですから』


「仕事、乙です」


微妙な空気の中で、リンリンと涼やかな鈴の音が耳に届きます。


『あ、お時間のようです。次は生きて幸せになって下さいね!僕もずーと見てますから!』


「……死なないように頑張ります……」


ヒラヒラ手を振る天使の声に答えながら、意識は真っ暗な世界に落ちた気がした。



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