紙上人生
月曜から金曜まで、毎日朝の七時起き。
学校では退屈な授業と、友達との下らないおしゃべり。
時々気になるアイツと目が合っちゃったり……
まぁ、これが私の日常。
365-(土日祝日+夏&冬&春休み)日繰り返される行動。
まるで紙に書かれた人生のよう。
「あーあ、なんかこう……すごい出来事とか面白いこと起こらないかなぁ」
腕を頭の後ろで組み、足を机の上に投げ出す。
「何も起こらないからこそいいんじゃない」
前の席に腰かけている友人の真美が苦笑混じりに口を開く。
「え~っ!そうかなぁ~……」
私は続けて文句を言おうと口を開いた。
その時、なんだかモヤがかかったように頭がボーッとした。
しばらくして頭のモヤが晴れるも、相変わらず私は女子らしからぬ、机に足を投げ出す格好をしていた。
前の席には誰も座っていない。
イスには、ひんやりとした冷たさがある。
……私、さっきまで誰かとしゃべっていたような。
しかし、それが誰だったのか、何を話していたのか思い出せない。
こういう事は割とよく起こる。
……物忘れがひどいわね。
まぁ、こういうことがあっても時間は過ぎていく。
帰り道。
私の隣には気になるアイツ。
ドキドキ鼓動がうるさい。これ、聞かれてないよね?
急にヤツが立ち止る。そしてじっと私を見つめてくる。
ヤツが一歩近づく。
これって……キス!?
私は顔を真っ赤にしながらも、顔を少し上に向け瞼を閉じようとした。
が、急に体の自由が奪われる。
自分が石にでもなったように、瞬きすることも、呼吸することも出来なくなった。
ヤツも少しも動かない……
『顔を少し上に向け、瞼を閉じようと……』
彼女は、そこで万年筆を投げ出した。
こんな話ではベストセラーは駄目だ。
くしゃくしゃと原稿用紙を丸め、床に放り投げる。
タイトルは『ある女子高生の平凡な人生』であった。