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はじまり3

 当たり前のことを当たり前にするっていうのがどれだけ難しいのか。竜崎 ハヤト十六歳。現実という名の暴力を突きつけられる。


 がっくりと項垂れたドラゴン。いや、羽根つきトカゲだ。いくら頑張っても唾しか吐けないドラゴンなんてトカゲで十分だ。


 あれから何度も思考錯誤を繰り返したのだけれども、一向に火が吹けない。


 火が吹けないドラゴンなんて、地球ファンタジーRPG的にはアウトでしょう。ロマンが無さすぎるよ……


 そもそも自分の中のドラゴンのイメージとは、大きくて空飛べて火を吹く恐ろしいトカゲだ。


 自分のような一般の高校生にすら認知されているファンタジー生物。それがドラゴンなのだ。


 こんな火も吐けなきゃ、生の魚も食あたりが怖くて食べれないドラゴンなんて、理想ブレイカーもいいところだ。


 辺り一面唾だらけの草原で、さらに落ち込む羽根つきトカゲだった。


「こんにちは」


 ふと、鈴の鳴ったようなキレイな声に、どこか宙へ浮いていたような意識が呼び戻された。


 美人を匂わせる声に、思わず高速で振り返る。


「ドラゴンさんよね。こんなところで何をしてるの?」


 その美しい声の持ち主が、親しみのこもった声で再度呼びかける。


 え。この人普通にドラゴンに声かけてるけど、怖くないの? だってドラゴンだぜ? 作品によっては街とかブレスで燃やし尽くしちゃうようなやつだぜ? 俺、火吹けないけど……


 若干、ブルーな気持ちになりながらも、その人を注視する。ハヤトのファッションチェック!


 野暮ったい黒のローブに包まれながらも、そのローブの間から見える身体はスタイルの良さを強調するような格好をしていて、これはこれでファッショナブルに見える。中に着ている服も黒で統一しているので、一瞬ではスタイルの判別はつきづらく、逆に男の視線を集めるのではないだろうか。チラリズム的な感覚で。いや、足長いな。ほんと。


 着物の袖レベルでブカブカなローブの袖からは、これまた黒くぴっちりしたロンググローブに覆われた手がちょこっと露出していた。


 そして、シルクのような高級感漂う質感をした長い髪を、どうやら肩甲骨の当たりまで伸ばしているようで、クリーム色の髪と真っ黒なローブとのコントラストが非常に美しい。さらさらとしたストレートロングの髪が、黒いキャンパスにひろげられる様は、もはや芸術と称してもいいだろう。


 そんな彼女の髪の上。そこには全体のシルエットを整えるかのように鎮座する、黒い幅広のとんがり帽子。ワンポイントすらない漆黒のお帽子には、どこか洗練されたこだわりを感じる。

 

 最後になるが、男子ならば一番気にせざるを得ないパーツをチェックする。顔だ。ファッション関係なくない? とか、フェチ系男子の『顔より○○が重要』的な小賢しい反論とか、細かいことは置いておく。捨て置くという意味で。


 まずはあの鈴を思わせるような声を発した唇。みずみずしいピンクに彩られた小さな唇は、少し薄めだと感じさせるが、それが上品さを醸し出すのに一役買っている。そして、現在は唇の端を少し上げており、穏やかな微笑を演出している。


 もうこれだけで、美人だと雰囲気でビンビン伝わってくるね。


 少し視線を上げると、そこには小さいが高めの鼻。地球にいた頃では、海外のモデルさんとかハーフのモデルさんぐらいしか持ち合わせていないような鼻だ。正に高嶺の花のような、存在感を放っている。


 そして、そんな鼻の上に掛けられた、銀色の物質。


 まるで、オペラの世界から抜け出してきたような高級感とセレブリティ(偏見)が溢れている。それは日常と隔絶された世界を生きるため、己の現実を守る手段として創られたもの。舞踏会でお馴染みの(自分のイメージだけど)オペラ仮面が圧倒的な異質さを放ちながら装着されていた。


 そんな彼女は、目の前の巨大な存在に物怖じすることなく、小首を傾げ、微笑しながら質問の答えを待っている。


 ハヤトのファッションチェック総評!


 超うさんくせぇ!!

 

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