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高1の壁。

作者: 天原歌音

「はぁ…。」

 聡は今日8度目となるため息をついた。

 鞄を机の横にかけるとそのまま机に突っ伏す。

 あー、もう、どうすればいいんだよ…。



「おはよう。ってお前、朝から暗いけど大丈夫か?あー、分かった。1限、苦手な数学だから気分乗らないんだろ。」

 いや、そんなことなら乗り越えられてるって。

 数学なんか当たらない限り寝てればなんとかなるんだし。

「いや、これだよ、これ。」

 聡は鞄から透明なクリアファイルを取り出し、慶太の前に突き出した。

 一番上に挟まれているのは進路相談調査票と書かれた真っ白なプリント。

「あー、それまだ書いていなかったんかお前。今日提出だぞ。」

「だから悩んでるんだわー!」

 俺は慶太の頭に一発食らわせた。

「もー、何書いたらいいかわかんねぇ!」

「そんなもん適当に書きゃいいんだよ。なんとなくこれやりたいっていう学部選べば。」

「だから、それがわかんないんだって!!」

 ったく。いいよな、夢が決まってるやつは。…うん?

「そーいえば慶太はなんて書いたんだ?」

「俺か?俺は簡単だ。第一志望は医学部、第二志望は教育学部、第三志望は薬学部だ。」

「は?お前が医学部?確かに慶太はどう考えてもバリバリの理系だし、頭いいけど医学とか薬学とか全然興味無いように思ってたんだけど?ってかお前、政治に興味あるって言って無かったっけ?」

 俺は目を丸くした。

 慶太が医者?想像できん。文系じゃなくて理系なのはあの数学の超高得点をみれば納得できるけどあいつが人助けするなんて考えられない。まだ政治家になってがーがー大勢の前で言ってたほうがまだ想像できる。

「お前…。俺に対してなんか失礼なこと考えていないか?」

「そ、そんなことないって。」

 慌てて頭をぶんぶん振る。

 なんて勘のいい奴なんだ!

「慶太って医者になりたかったのか。初めて知ったわ。」

 慶太は俺を見てにやりと笑った。

「よく考えろよ。俺が本当に医者になりたいわけないだろ。」

「…は?」

「お前さー、親に夢は大きく持てって言われたこと無いか?」

「うん。今も言われるけど?」

「そ、そうか…。じゃあさ、もし聡がミュージシャンになりたいって言い出したら親や先生はなんて言う?」

「えっ!ミュージシャン?」

 俺は驚いて慶太を見た。

 慶太は小馬鹿にしたように俺のほうを見る。

「仮にだよ、仮に。で、何て言うと思う?」

「そりゃあ、お前。反対するだろ。現実見ろって。」

「そうだな。でもそれって矛盾してないか?」

「えっ?」

 慶太は相変わらずにやにやしてこっちを見ている。

「だって夢が無いときは大きく夢を持てって言うじゃん。だけど大きな夢を持った途端、現実を見ろ、だぜ?矛盾してるじゃん。」

「あ……。」

「だからさぁ、結局親が納得するような職業を選ぶってなると安定した公務員になるんだって。でも、第一志望は公務員って書くと『ありきたりの答えだ』って言われるだろ?となると残りは安定しているけど夢がある医者や教師になるんだ。」

 確かに矛盾している。

 でも大人の手の中で踊らされるのもちょっとなあ。

「で、今の市議選とか見てみろ。候補者ほとんど医者や校長だった奴だぞ?」

「はぁ、本命はそこってことか。」

「でもな。医者はやっぱりちゃんと覚悟あるやつしかやっちゃいけないとも思うし、俺の学力も医学部受かるほどあるとは思えない。俺んちそんな金ないから進学するなら国公立じゃないとあんなバカ高い学費払えねえし。でもまだ高1なんだからまだ変更は可能だ。とりあえず医学って書いただけだ。」

「そこまで考えてたのか…。」

 うーん。慶太らしいっちゃ慶太らしいけどよく考えられてるなあ。

 俺も慶太と同じにしよっかな。

「あ、俺とおんなじ進路は駄目だぞ。」

 鋭い!鋭いよ!

「聡、数学苦手じゃん。で、得意科目は日本史だろ?誰がどう見ても文系じゃんか。俺の写したってばればれだわ。先生に呼び出し食らうぞ。」

「うっ、それはやばいは。数学の授業中に考えよ。」

「そうしろそうしろ。お前数学いつも寝てるだけだから授業中何してても変わんないわ。」

「ひどっ!図星だけどひどっ!」

 筆箱からシャーペンを取り出す。

 俺は進路調査票のプリントとにらめっこを始めた。



「さて、HR始めるぞー。書いてきた進路調査のプリント教卓の上に出せー。」

 うん、これでいいかな。最後に名前を書いてっと。


~進路調査票~

 組・番号: 2組27番

   氏名: 中畑 聡


 第一志望: 教育学部

 第二志望: 法学部

 第三志望: 文学部

 ゆとり世代の誰もが、いやゆとり世代でなくても一度は思ったことがあるのではないかな?と思うことを書いてみました。

 ただ単にこのネタを書きたかっただけなのであまりオチもなくすみません。

 読んでくださり有難うございました。

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