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母と父の話

 「お初にお目に掛かりまして光栄でございます勇者さま。

 私、王宮でメイドをさせていただいております。

 名をコッタと申します。 

 本日、私が勇者ライト様の元へ参りましたのは、

 我が主、南の覇者、ナンス帝国の王。

 シーザス様より勇者さまに言伝を伝えるためでございます。」

 コッタは、緊張した様子で、勇者ライトと、その従者アルトに、自身の目的を伝えた。


 「えーと」

 困惑気味の勇者ライト。


 「ゴメン、何言っているか全然聞こえなかった。

 距離が遠いし、声が小さいし、何より、

 

 なんで土下座?小さい声がこもって、より一層聞こえにくいよ?」


 コッタは、勇者達から一番遠い距離を保てる場所。

 入ってきた入口側の、部屋の四隅の一番端で、地面に顔を付け、

 その小さい体をさらに小さく丸めていた。


 イッツ土下座。


 いや、だって、正直あんなもの正視できないって。


 超イケメン二人の立ち姿。


 勇者さまを見ただけで、このねずみのような小さい心臓が、

 それこそねずみの心臓のようなスピードで鼓動するんですよ?


 アルト様も加わって、倍率ドン!さらに倍!


 そこに、先ほどのホモォな妄想も加わるのだ。


 今勇者さま達を見たら、きっと私の心臓は一生分の鼓動を使い切ってしまう。


 コッタは一心不乱に、勇者の家の、大理石で出来た白い床を見ていた。


 ああ、母なる大地よ。父なる海よ。と地面を母に例えた歌があったが

 今ならその例えが、どれほど適切なモノであったのか、

 分かりすぎるほど理解できる。

 

 全身で地面を感じる事が、これほどの安らぎになるなんて。

 母に抱かれているようだ。

 私に母親の記憶なんて無いけど。

 このまま地面と一体になって、そのまま地面に埋まりたい。

 うふふふふふふふ……


 コッタ。王宮メイド。美少女。ロリ。巨乳。ドM。ショタコン。腐女子。ネクラ。


 「アルトさん。あの人を、そこのソファに座らせてください。」


 勇者はアルトに指示を出した。


 「了解。」


 アルトは、うずくまり現実逃避をしているコッタの手を右手でとった。


 「ほら、そのままじゃ話が出来ないから、こっちに来い。」


 ぶんぶんぶんと顔を横に振り、拒絶を示すコッタ。


 無理無理無理。接客用のソファに座れってことでしょ?近いって!

 勇者さまの1メートル圏内に近づいちゃうって!

 今なら、勇者さまの匂いをかいだだけで、失神出来る気がする。


 ぐいぐいと手を引くアルトに精一杯抵抗するコッタ。

 体を傾け、全身を使ってアルトの誘う方向と逆の方へ力を込める。

 縄引きのように。


 「い・い・か・ら・こ・い!!」

 しつこいコッタの抵抗に、イライラするアルト。


 「い・や・だ・ぁ!!」

 全力で抵抗するコッタ。


 ぐぎぎぎぎぎと両者の間に効果音が出ている。


 「あーもーめんどくさい!」


 とうとう耐えきれなくなったアルトは、引いていた右手の力を弱めて、空いていた左手でコッタの足を抱え、宙に浮いたコッタの上半身を右手で支えた。


 俗に言うお姫様だっこである。


 「ちょっ!どこさわってんのよ!あん!」

 初めてのお姫様だっこを味わう暇も無く、すぐにソファに落とされたコッタ。

 アルトに肩を抑えられて、勇者を見るように強要される。

 「ほら、ちゃんと聞こえるようにお話しろ!お前がココに来た目的はなんだ?」


 コッタの耳元まで顔を近づけ、恫喝するようにコッタに言ったアルト。

 しかしそれは逆効果だった。


 コッタの好きな男性ランキング一位が勇者ライトであっても、

 アルトが他を超絶したイケメンであることに変わりは無いのだ。


 そのイケメンが、イケている顔を自分の顔に近づけた。

 そして、耳元で、お言葉を発せられたのだ。

 ちなみにアルト。その名にふさわしく、低目の渋い良い声をしている。

 

 その行いが、男性経験に乏しいコッタの鼓動を限界まで高め、

 自身の血管を破壊するほどまでの血流を送りこむ要因になったのは、

 当然のことであろう。


 つまりコッタは鼻血を出して気絶した。


 深紅の液体が、コッタの旅用の服を夕陽のように染め上げ、

 それでも止まらない生命の体液は、白に輝く大理石の床に痴血なる海を作り上げた。


 「ぎゃーーーーーーーー血が!血が!ちょっと、それ止めて!止血!止血!」


 あわてふためく勇者とアルト。


 布を用意したり、コッタの鼻を抑えたりするために

 てんやわんやの大騒ぎである。



 「騒がしいぞ。どうしたんだライト」


 応接間の入り口から、180センチほどの大きさでやせ細った体のくしゃくしゃの黒い髪をした優しそうな男性が入ってきた。


 「兄ちゃん!」

 勇者ライトがその可愛い顔を、よりいっそう輝かせた。


  







 

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