オーガの話
「うひゃひゃひゃ」
体中を触手でくすぐられながら運ばれていくコッタ。
く、くすぐったい。
ここは、
いやぁん、えっちー
とか
そこはだめぇー
なんて言いながら、触手に体を弄ばれれば、なんか喜ぶ人がいるんだろうけど、
だめだ。
ただただ くすぐったい。
コッタは爆笑しながら触手に運ばれていくと、森の木々が少ない、まるでフェアリーサークルのような場所に着いた。
その中心に、異様な臭気をまとった、2メートルほどの黒い毛むくじゃらの獣がいた。
「オーガ、か」
コッタは、その触手と思っていたモノが、貪欲で、凶暴で、紳士とはほど遠い存在にいるこの獣の舌であることが分かり、戦慄する。
って事は、私、つばまみれかよ!汚い!
コッタが、自身の体に付着した液体に不快感を示しているころ、
人の欲望から生まれたこの獣、オーガは、
久々に捉えた、美味しそうなこの獲物をどのようにして、
いたぶろうかと思案するために、コッタを自身の上空1メートル程につりさげて、
まじまじと見つめていた。
やわらかい
オーガは、その長い舌でコッタの体を蹂躙する。
「ひゃん!」
運ばれている時とは違い、明らかに触手、舌の動きが丁寧になって、まさしく全身を舐めまわすように自身の肉体を確認されて思わす変な声を出してしまうコッタ。
い、今の声は良い声だった。
コッタはつい口から出てしまった自身の甘い声に合格点をだした。
やわらかい体、若い雌。このまま喰らうには惜しいか。
オーガは、人間の欲望が生み出した化け物である。
人間の欲望で、もっとも基本的で、最も強い欲望が、
睡眠欲 食欲 性欲である。
オーガは、人の欲望で出来ている限り、やはりこの3つの欲望が強い。
寝て、ヤッて、食べて。
コレがオーガの一日であり、オーガの一生だ。
ムキムキと、股間に血流を送るオーガ。
自然と、全身から集められた血流が、大きくなるべきものを肥大させる。
ゴクリ とつばを飲むコッタ。
うわーお。
へー。
ぶっちゃけ始めてみた。
そうか、コレが……
コッタは、生まれてから、ずっと王宮でのメイド生活だったので、
父にお風呂に入れられた--のような、ありたいていの事が無かった。
なので、勉学では、知識ではソレがどのような形状で、どのような機能を有しているのかは知っていたが、実物を見るのは、オーガのモノといえど初めてであった。
ちなみに、オーガは人の欲望から生まれているので、そのモノの形状も人の男性が有しているソレに限りなく近い。
そのモノの存在する意義を果たすことはめったに無いのだが。
オーガは、ある決まりごとで生きている。
睡眠欲を満たしたら、性欲。
性欲を満たしたら、食欲。
食欲を満たしたら、睡眠欲。
このサークルで生きることだ。
このサークルは変わらない。
黄金のトライアングルだ。
しかし、このトライアングルのため、雌で性欲を満たしてしまうと、すぐにその雌を食べてしまう。
つまり繁殖はほとんど成功しない。
生き物としての失敗作。
あと先を考えない。
欲望に溺れしモノ。
コッタはもちろんそのことを知っていた。
つまりここで、私が処女を散らしてしまうと、
そのまま私はオーガのお腹にまっしぐらな訳か……
それはゴメンだった。
王宮を出てすぐの私だったら、案外この状況を受け入れていたのかもしれないけど、
時期が悪かった。
所詮、恋なんてタイミング。
今の私は、勇者様の事で頭がいっぱいなのだ。
コッタは、そのやわらかい肢体を舐めまわしているオーガの舌を掴んだ。
近くに勇者様がいて、ピンチの私を助けて~
なんてシチュエーションがあるなら、もう少し待つけど。
どうやらその可能性は少ないように思えた。
それもそのはずだ。
ここ数日。
勇者がいるというこの森に着いてから、
似たような事をしてはギリギリまで待ってみたが、
一回も勇者は助けに来なかった。
感じている気配から、わかっちゃいたけどね。
けどやっぱり期待してしまう。
女の子だもん。
ちなみに今、周囲にいるのは、魔物だけ。
人間の気配は無い。
勇者は助けに来ない。
……だったら私が倒すしかない。
コッタは手に魔力を込めた。