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ボスの話

 轟音 暴風


 戦闘の激しさを体の全五感で感じた終えたアルトの達の目の前に現れた光景は、

 光り輝く勇者ライトの姿だった。

 勇者と戦闘を行っていたはずのクラウンスライムの姿はそこには無い。

 勇者が全て消し飛ばしてしまったのだろう。

 (これほどとは……!)

 アルトも一か月前に一度だけライトの奥義を見ていたが、改めてその激しさを知る。

 (もう、私の手の届くところから離れてしまったのか)

 アルトは先ほど感じたモノよりも一層強い焦燥感を感じてたが、

 気にしないように前を見る。

 (いや、誇るべきだ、彼がココまで強い男になった事を)

 しっかりと勇者の姿を見ていたアルトは、

 勇者の背後の地面が盛り上がり始めた事を知る。


 「ライト!!」

 慌てて勇者の元へ駆け出すアルト。

 勇者ライトが疲労で片膝をついた瞬間。

 地面からスライムが飛び出した。

 クラウンスライムが放った水流攻撃から生まれたスライムだ。

 

 突然の敵の出現に、反撃しようとした剣を構えた勇者だが、

 ポロリと剣を落としてしまう。

 スライムが口を大きく開ける。

 勇者の顔面をスライムの口が覆う。

 

 (間に合わない……!)

 アルトも全力で走るが、勇者との距離まで10メートルはある。


 「ライトォ!!」

 アルトが叫ぶ。


 そしてスライムが勇者の全身を覆うとした瞬間。


 強力な突風が勇者とスライムを引き剥がした。


 「最後の最後で油断とは……情けない」


 村の入り口の方から、一人の女性が歩いてきた。


 黒くてウェーブのかかった長い髪は、彼女の動きに合わせてなびくのだが、

 その動きは良く訓練された兵士の行進のような美しさがある。


 彼女の歩く姿はまさに優雅で、まるで空気が全て彼女に頭を垂れているかのような静けさだ。

 

 「……かあさん」

 勇者ライトはつぶやく。


 彼女の名前はマグダラ。

 勇者ライトのお母さん。



........................

.....................................


 暗い場所。

 二人の人影。

 男性と女性が話している。


 「クラウンスライム2体がやられたんですか」


 「はい。それぞれ一対一の戦闘で敗れています」

 

 「ほう。さすが勇者の村……という事か」


 「ええ、どうされますか?こちらから踏み込みますか?」

 

 「いや、必要ないでしょう。それほどの手足れならば、我々の位置などすぐに掴むはずです」


 「そうですか。では、一応迎え撃つ準備はしておきます」


 「ええ。所で、倒したのは男性ですか?」

 

 「男女それぞれ一人づつですね。男の方は勇者ライト。女性の方は情報がありません」


 「そうか、それは楽しみです。ところで、知っていますか?サキュル。この世で一番おいしい食べ物は何か?」


 「いえ、存じません」


 メガネを上にあげて答えるサキュル。

 その額には2本の角が生えている。


 「それは、人間の雌ですよ。強くて、若くて、美しいほど美味しい」


 むしゃりと何かをほおばる男性。それは人の手のように見える。


 「クラウンスライムを倒すほどの人間の雌。どれほど美味なのか」


 くっくっくと笑う男性。 

 その後ろには、人間の女性の死体が山のように積まれていた。

 

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