表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/15

ランスの話

 「なんでこんな場所にあんな大物が……!」

 コッタは慌ててクラウンスライムの元へ行く。

 クラウンスライムの透明な体内に、神父服を着たイケメンなおじさまが浮かんでる。

 

 子供向けのおとぎ話では一人の人間から1匹のクラウンスライムが生まれてきたが、

 実際は1匹のスライムがクラウンスライムになるのに100人は犠牲が必要だ。

 100人の村人が死んだのだろうか?

 いや、ここの村人はそんなにヤワじゃない。


 魔王の影響か……

 

 王宮で魔物についてはかなり詳しく教えられた。

 

 クラウンスライムは8段階の危険度で上から3番目。3級の魔物。

 通常のスライムは6級。


 3級までの魔物までだったら、あなたなら、戦っても何とか勝てるでしょう。

 ってメイド長はおっしゃっていたけど。


 今のコッタの状態は万全から程遠い。

 通常の状態を100とするなら70くらいだ。

 メイド長の話からするとコッタは3級の魔物と互角くらいらしい。

 実際、王宮からトロンまでに王宮で3級と教えられた魔物と何回か戦ったが、

 かなり苦戦した。

 もう、回復薬飲みまくり。エリクサーとか浴びるように飲んでなんとか倒した。

 死ぬかと思ったわ。

 

 そんな魔物と戦わないといけないなんて冗談じゃない!


 けど。


 コッタは頬を両手でパチンとたたいて気合いを入れる。


 まず一つ。

 なんか、ナイスミドルなおじさまがクラウンスライムに飲まれている。

 これは助けなくてはいけない。

 私はイケメンなら年齢を差別しない。

 0歳から墓場まで。

 イケメンならどなたでもウェルカムだ。

 そして二つ目は、


 コイツを倒せばイケメンの手作りケーキが食えるからだ!!

 しかもハーブティー付き!


 コッタは氷で槍を作りだし、クラウンスライムへと駆け出した。


 「ぴきぃぃぃぃぃぃ!!」


 クラウンスライムの周りにいたスライム達がコッタに襲いかかる。


 「邪魔ぁ!!」


 コッタは氷の槍を振り回す。


 弱っていたスライムは槍に切り裂かれ、切断面から凍っていき、

 切れなかったスライムも、氷の槍から魔子を送り込まれ、

 過冷却によって壁にぶつかって落ちて粉々に砕けた。


 一瞬のうちに10数匹のスライムを倒すコッタ。


 氷の結晶の中でコッタのおっぱいがプルンと揺れる。


 「いっくよーーーー!!」


 コッタはさらに魔力を込めて氷の槍を巨大に強大にする。


 先端が根元にいくにつれて太くなっていく円錐状の槍。

 騎馬兵などが突撃する時に使う槍。

 ランスだ。

 コッタのそれは長さ3メートルを超えていた。



 コッタからクラウンスライムまでの間に氷の道が出来る。

 コッタは勢いよく駆け出した。

 「はぁあーーーーーー!!!」


 スケートで加速したコッタはクラウンスライムの右頬に氷で出来たランスを突き刺す。

 「!?」

 しかし、先端が50センチほどめり込んだだけで、それ以上中に入って行かない。

 「くっ!」

 ならばとコッタは魔子を送り込んでクラウンスライムの分子を停止させようとしたが、

 

 なんで!?上手く魔子を操作出来ない!?


 「ぷぃいぃぃぃいぃぃいぃ!!」


 クラウンスライムがその体を大きく震わせる。

 「うわぁ!?」

 

 コッタは吹き飛ばされ、教会の壁にぶつかった。


 「つつっ……!」


 ぶつけた腰をかばいつつコッタは立ち上がろうとしたが、

 クラウンスライムが口をすぼめているのに気付き戦慄する。


 「ヤバッ!!」

 

 すぐにその場を離れるコッタ。

 コッタが離れたと同時に、コッタがいた場所に穴が開いていた。


 「この攻撃は確か……」

 

 コッタはとっさに、教会周辺の地面を全て凍らせる。


 クラウンスライムが吐き出す水は、地中でスライムになって地面に出てくる。


 それを防ぐためにコッタは周囲の地面を全て凍らせた。


 さっきからスライムが急に増えたりしたのはコイツのせいか。


 クラウンスライムが水中からスライムを増殖させていたのだ。


 ちょっとココからさっきの姉弟がいた所まで距離がありすぎる気がするけど……


 そんなコッタの思考をクラウンスライムがさえぎる。


 ピッ ピッ ピッ

 と連続で口から水流を吐き出すクラウンスライム。

 


 コッタはその連続攻撃をかわしながら、打開策を考える。


 かわした水流地面に当たった瞬間から凍り始め、地面に鋭いツララを生やす。


 基本的に、クラウンスライムが口から吐き出す水は、

 クラウンスライムと同じ体のはず。


 つまり、クラウンスライムもコッタの魔子を流しこまれれば体が凍るはずなのだ。


 確かに、他の3級の魔物と戦った時、魔力の強さが違いすぎて、

 体を凍らせる事が出来ない奴もいたけど、

 クラウンスライムは魔力はたいしたことない。


 それに、あれは魔力の差で無理やり魔子の操作を妨害された感じじゃない。

 あれは、分子が激しく動いているモノを凍らせようとした時に似ている。

 たとえば燃え盛る炎とか。


 そう考えると、コッタはクラウンスライムに飲まれたナイスミドルを見る。


 強そうな十字架の装備……戦闘の跡がうかがえる衣服の乱れ。

 クラウンスライムに飲まれていて探査を出来ないが、

 かなりの強者ではありそうだ。


 あのおじさま……もしかして炎使いなのかしら。


 飲まれているおじさまが、

 クラウンスライムに飲み込まれる直前まで魔子を操作して炎を操っていたのなら、

 その魔子がクラウンスライムの体内でまだ暴れている可能性がある。

 激しく暴れるおじさまの魔子が、

 クラウンスライムを停止させようとするコッタの魔子の妨害をした可能性は高い。

 あの十字架が魔子を貯めて増幅させるタイプの武器なら、

 今のコッタの魔力でその魔子を停止させ、

 クラウンスライムの分子を停止させる事は出来ないだろう。


 だったら、やることは……苦手な事か。


 コッタは。教会の裏側にある登り坂を見る。


 急な傾斜。あれで勢いを付ければ。

 後は、


 コッタは周囲を見る。

 庭の片隅に鉄で出来た無骨なランスが落ちていた。

 飲まれているおじさまが使っていた武器だろうか?

 コッタはクラウンスライムの攻撃をかわしながら、落ちていたランスを拾う。

 

 ちなみにコッタ、今まで全部攻撃をかわしながらの考えていた。

 裏庭はツララで剣山のようになっている。


 落ちていた2メートル程の長さのランスを拾い、

 コッタはどこかで見たことあるデザインだなと思いながらも

 ランスを手に、裏の坂道を駆け上がる。


 クラウンスライムも追いかけようとするが、

 巨体のためやっと裏の坂道の方を向けたと思ったら、

 コッタはすでにかなりの距離を登っていた。

 その距離約100メートル。

 坂道はすでに凍っていた。

 

 「はぁああああ!!」


 コッタは勢いよく駆け出して、氷のそりを作り出してその上に乗る。


 そりは下り坂でドンドン加速する。


 「ぷぅううううううううう!!」


 クラウンスライムはただ直線的に突進してこようとする愚かな挑戦者を迎撃しようと

 口に力を入れて、攻撃をしようとする。


 十分に力を貯め、コッタとの距離が10メートル。

 コッタが回避できないだろう距離に達した時。

 

 クラウンスライムは水流を吐き出そうとした。


 が、


 グシャリ!と上空から直径5メートルはあろうかという氷塊を落とされる

 クラウンスライム。


 コッタが坂道を登り始めた時から作りだしていた氷塊だ。


 氷塊でクラウンスライムにダメージを与える事は出来なかったが、

 目くらましには十分になる。


 コッタはその隙にそりで付けた勢いのまま、目標に向けてランスを突き刺す。


 目標はおじさまの右手にある十字架。


 ランスはクラウンスライムの体を貫き、

 コッタのランスとバスタの十字架を接触させた。


 「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃぁああああ!!!!」


 コッタは思想 思考 感情をぐちゃぐちゃにさせるために奇声を上げる。


 勇者さまの可愛い顔!アルト様の白い肌!

 ライム様のくしゃくしゃしただらしない髪!


 舐めて嗅いで噛んで揉んで抓って叩いて!!


 ぐちゃぐちゃに!!ぐちゅぐちゅに!!


 反撃も良い!!イケメン三人!!ナイスミドルなおじさまもこいやぁああああ!!


 コッタは鼻血を出しながらお子様にはとても見せられない妄想を暴走させる。


 こうするしかない。この状態にならないと魔子を激しく動かせない。


 魔子を動かして、炎を出せない!!


 魔法は魔子の操作で魔子の操作には魔力と精神力を使う。


 魔力は魔子の量を。精神力は魔子の質を決める。

 

 精神が落ち着けば、魔子も落ち着き停止し。

 精神が乱れれば、魔子も乱れ、激しく暴れる。


 


 だから私は炎の魔法が苦手だ。調整出来ない。


 

 コッタのランスから流れた激しい魔子は、

 バスタの十字架にたまっていたバスタの魔子と反応して、強烈な火炎を生み出した。



 「ぴぎいいいいいいいいいいいいいいい」


 クラウンスライムはたまらず炎を出した十字架を、

 その持ち主ごと吐き出した!!



 コッタは吐き出されたバスタを鼻血を出しながら受け止めた。


 バスタの左手がコッタの巨乳に触れる。


 コッタはナイスミドルなおじさま。バスタの様子を見て安堵する。

 「ふう。良かった。自分の魔子も混ざっていたから、

 たいした火傷もしていないみたい」



 クラウンスライムも内部は燃えてはいたが、まだ倒し切れてないようだ。


 「うっ……」


 コッタに抱きかかえられた状態で、左手がコッタの巨乳の上にある状態で、


 元勇者バスタが目覚めた。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ