悩み
彼女、菫が来てからもう数日が経ってしまった。
彼女自身を憎いと思ってはいないわ。ただ、この関係がつらいだけ。
私の自分勝手かもしれないけれど、何かをしなくてはいられないのよ。
菫を追い出す。
この城から、銀木犀の下から・・・・・
でも、その為には一体どうすればいいのか。それが分らなくて酷く嫌な気分になる。
こうしている内に、私の方が何かの病気にかかってしまいそうだ。
「はぁ・・・・・」
重く、長い溜息。縁側で庭を眺めながら、私は悩んでいた。
「何かお困りのようね」
ふとそんな声がして、気づけば庭には女が一人。
喩えるなら夏の笹のような、爽やかで美しい女。どこか、菫に似ている気もしてくる。
「あなたは・・・・・誰?勝手にこの城に入り込んで、兵を呼びますよ」
「そんなに怖い顔をしなくてもいいわ。面白いことを教えてあげに来たのよ。あなたの悩みは分っている。彼女を追い出したいんでしょう?」
・・・・・・・当たっている。
何故、そのことを知っているのか。疑問を口にする前に、女は私に耳打ちした。
『隣国の紫苑。彼に彼女を売りなさい。そうすれば、彼女はここからいなくなる。金ももらえて、少しはこの国が豊かになるわ。このままここに彼女がいるのと、私の言う通りに事を起こすのと、どちらが良いか・・・・・・分るわよね?』
隣国の紫苑・・・?
聞いたことがある。詳しくは知らないが、確かなかなかの強国の王子だったはず。
確かに、そうすれば菫はいなくなる。それに、金も手に入る。
彼女の言う通りにすれば、全てが幸せに・・・・・・・・
女に返答しようと顔を上げたが、すでに彼女の姿はない。
「まぁ、どうするかはあなたの自由ですけど」
どこからか、そんな声が聞こえた気がした。