戦
紫苑の言うとおり、銀木犀に婚約の話が伝わった途端に戦が始まった。平和な国に戦火がよぎります。
戦が起こったことにより焦ったのは金木犀でした。戦、ということは銀木犀の命が狙われると言う事です。自身の部屋で、金木犀は後悔に溺れておりました。
「どういうことなの!?彼女の言うとおりにしただけなのに・・・」
「嘘をつかれた、ということ?」
「このままでは・・・・」
少しずつ、金木犀の精神は病んでいきました。戦は平行線の一途をたどり、終る様子も見えません。
「私が、あんな事をしなければ・・・・」
多くの者が傷つき、死んでいきました。多くの家々が焼かれ、食料が減っています。
しかし、紫苑は平気で戦を続けておりました。
敵を殺し、少しでも自身の領地を増やしていく為です。そんな中、菫はこっそりと姿を消しました。何処へ行ったのか、何があったのかも分からないまま・・・・・
それでも戦は収まりません。戦の原因にもなった菫が姿を消した事は、秘密にされておりました。
二つの国は、一人の女性が原因で滅びようとしておりました。
竹藪の中、ひっそりとその小屋はあります。本当に小さく、人一人がやっと暮らせるような小屋。
その小屋の中に、私は住んでいるのです。
竹を掻き分ける音がして、彼女がやって来ました。やっぱり、彼女は私の所にいるのが一番なのよ。
息を荒げながら小屋に入ってきた彼女は、美しい顔をぐしゃぐしゃにして泣いていました。
「笹・・・あなたなの?」
「何のことか分からないわね」
もちろん、嘘ですわ。
「金木犀を騙し、戦を起こさせた。すべては貴方の手の内・・・・・と言うことでしょう?」
よくお分かりね。やっぱり彼女は頭が良いわ。
そんなことは言わずに、私はニッコリと微笑みました。ここに彼女が来てくれた事だけがとても嬉しくて。
「何で・・・・そんな事をしたの?そんなにもあの人の事を怨んでいたの?」
そうに決まっているわ。
「何故、貴方があいつの事を怨まないのか、その事の方が不思議に思えない?あいつは貴方を、そして私を裏切り、殺した」
そう、ちょうど一年前、私は死んだ。しかし、もう一度この世に蘇った。笹として。精霊として・・・