囮
金木犀が菫に話をした次の日から、菫は姿を消しました。
城中の者たちが、銀木犀と共に菫を探しましたが、結局見つかりませんでした。
金木犀によって騙されたことを菫が知ったのは、三日後だった。
睡眠薬で眠らされた彼女は、全く知らない城の中にいた。
「ここ・・・・・は?」
大量の薬で頭痛がする中、くらくらしながらも菫は立ち上がった。ここにいてはいけない・・・・・
そう思ったからだ。
「おっと、勝手に出て行かれては困る。君は私が買い取った・・・・つまり人身売買というものさ」
部屋から出て行こうとした菫を止めたのは、一人の男性だった。
人身売買・・・菫を彼に売ったのは、勿論金木犀だろう。
「貴方は一体何をする気ですか?私を買ったりして・・・・」
「貴方、より名前で呼んでもらいたいね。私の名前は紫苑だ。女っぽいかもしれないが、この花が私は気に入っているのでね。なかなか良いと思っているよ」
全く質問とは違う答えを返しながら、紫苑は少しずつ近づいてくる。菫も後ろに下がったが、壁に当たってしまい、身動きが取れない。
「さて、」
菫の手を優しくつかみ、紫苑は静かに語った。
「君には私と結婚してもらう。勿論、側室としてだが・・・・・そして、囮になってもらう」
「囮・・・?」
「そう、私は君の故郷の国が欲しい。そのためには戦をしなければならない。あの国の世継ぎである銀木犀は、君の事を気に入っているらしくてね。その君が私と結婚したとなれば、必ず攻め込んでくる・・・・」
「私を、戦の道具にするつもりですか?」
「そういうことだね♪」