表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生ではなく、AI の作った世界に転生した僕  作者: りな


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/34

33

僕は女の子二人をポケットに入れ、再び階段を登り始めた。


鳥は僕の少し前を飛びながら、時々突然現れる魔物を、ためらいもなく黒焦げにしていく。


……もしかして、この鳥、アレクサンダー並みに強い?


僕は一度も魔法を唱えることなく、ただ黙々と階段を登り続けた。


ふと、鳥と目が合った。


鳥は一瞬だけこちらを見て――

「任せろ」とでも言うように、軽く羽を打った気がした。


……気のせい、かもしれないけど。


「ここで、寝るのです」


突然、ポケットの中から声がした。


「……なんで?」


僕は思わず聞き返した。

まだ、歩ける。疲れてはいるけど、進めないほどじゃない。


「先が見えない、ということは、今は無理なのです」 「つべこべ言わずに、寝る」


二人して、容赦なく僕を責めてくる。


……ちょっと、酷くない?


僕は諦めて、パンと干し肉を食べ、収納していた毛布にくるまった。


女の子たちは僕の足元に、服を使って小さな寝床を作った。

鳥は、何も言わずに僕のすぐそばへ降りてきて、寄り添うように丸くなった。


……なんだろう。


塔の中なのに。

魔物が出る場所なのに。


少しだけ、怖さよりも安心を感じている自分がいた。


僕は、いつの間にか眠っていた。


ふと目を覚ますと、女の子たちも、鳥も、静かに眠っていた。


……大丈夫だ。


そう思って、僕はもう一度、目を閉じた。


僕は、塔の中で何回眠ったのか、もうわからなくなっていた。


言われた時に眠り、

言われた時に食べる。


……いつまで、これが続くんだろう。


そんなことを考えた、その時だった。


突然、天井が――明るくなった。


……もしかして、終わり?


胸が跳ねた。

考えるより先に、僕は走り出していた。


「待って!」


胸のポケットから、女の子たちの声がした。

でも、その声は、僕の耳に届かなかった。


もう少しで――

そう思った瞬間。


突然、背中に強い衝撃を受けた。


「――っ!」


前へ転がり込む。


「痛っ」


そう思って、反射的に振り返った。


その瞬間、全身が凍りついた。


僕が立っていた場所に、

赤々と燃える火柱が、天井から落ちていた。

……間に合わなかったら、僕が。


火柱の中に、影が見えた。

羽を広げた――あの、鳥の影。


……え?

胸が、ぎゅっと締めつけられる。


……もしかして。

僕は、その場に座り込んだまま、

燃え盛る火柱と、鳥の影を、呆然と見つめていた。


「待って、って言ったのに」


女の子の一人が、ぽつりと呟いた。


僕は、何も言えなかった。

ただ、震える手を、ぎゅっと握りしめた。



僕は、火が完全に消えるまで、動けなかった。

鳥がいた場所には、

ただ――黒い灰の塊だけが残っていた。


「……嘘」


自分でも驚くほど、感情のない声で、そう呟いていた。


女の子たちは、何も言わない。


僕は、ふらりと立ち上がり、

黒い灰の塊の前で、膝をついた。


……どうして。

あの時、走ったこと。

声を聞かなかったこと。

後悔が、遅れて胸を締めつけてきた。


「早く、するのです」


女の子の一人が、静かに言った。


……今、何て言った?

僕は無言で二人の女の子をポケットから出して、床に置いた。

そして、暗い目で女の子を見た。


二人は、並んで、僕をまっすぐ見ていた。


「……何、だって?」


震える声で、僕は聞き返した。


「早くしろ、って言ったのです」


その瞬間。


視界が、真っ赤になった。


「……なんで」


そう言いかけて、二人に向かって手を伸ばした――その時だった。


背中から、強い光が溢れ出した。


……何?


僕は、思わず後ろを振り返った。

眩しくて、何も見えない。

しばらくして、ようやく光が収まった。

そこにいたのは――

白銀の鳥だった。


さっきより、少しだけ大きい。


「ようやく、成体になったのです」


「良かったね~」


女の子たちは、二人そろって拍手をしていた。


白銀の鳥は、ばっさばっさと羽ばたき、

その声援に応えるように鳴いた。


……なんですか、これは。


僕は、状況についていけないまま、ただ座り込んでいた。


白銀の鳥は、ふわりと羽ばたいて女の子たちの元へ飛んでいった。


「綺麗になりましたね」


「うんうん。長かったねえ」


二人は、まるで昔からの友達のように、鳥と仲良くしている。


……あの。


僕、ここにいるんだけど。


鳥が、くいくいと嘴で女の子たちをつつき、こちらを示した。


「あー、いたわ」


……ちょっと、扱いが雑じゃない?


「この鳥はね、魔物でも最強クラスの“不死鳥”なのです」


「さっきの炎で、大人になったね」


「あのままじゃ、弱すぎですからね~」


白銀の鳥は、二人の言葉に誇らしげに頷いていた。


……え。


あれより、強い?


じゃあ、僕は……?


考えるのが、急にどうでもよくなった。


……こんな塔、結局ただのふざけた悪戯じゃないか。


そう思った、瞬間だった。

世界が、暗転した。


足元も、天井も、すべてが消える。

ただ――一筋の光だけが、差し込んでいた。


その先に、一本の木が立っている。

……実が、なっている?


……もしかして。

これが、最後のアイテム?

僕は、息を呑んで、その光を見つめた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ