表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生ではなく、AI の作った世界に転生した僕  作者: りな


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/34

24

夜。サラからもらったハーブを枕元に置き、僕は天井を見上げていた。


――何か、できないかな。サラが、喜ぶようなこと。



《収納》の中を意識して探る。

あまり物は残っていない。食料はアレクサンダーに返したし……。


その時、ふと思い出した。

――材木が、あったよね。


僕はほんの少しだけ材木を取り出し、左手に乗せる。


《創造》《折紙》


木材は、さらりとした感触の紙へと姿を変えた。しかも、色とりどりの、カラフルな折紙だ。


……うん。これなら。


翌朝。


「ハーブ、ありがとう。とってもよく眠れたよ」


そう言うと、サラは少しだけ、はにかんだように笑った。


「よかった」


「ねえ、折紙って知ってる?」


「……おりがみ?」

サラは首をかしげる。


「こういうの」


僕は折紙を取り出し、黄色の一枚を選んだ。

指先で、すっと折り畳み、形を作っていく。


サラは、すぐそばで息をひそめるように見ている。


「ほら、蝶々だよ」


完成したそれを見せると、


「……うわぁ」


サラは目を見開いた。


《創造》《蝶の髪飾り》


折紙の蝶々をもとに、僕はイメージを重ねる。もっと綺麗で、髪に飾れて、前に渡した花のそばにも添えられる――

そんな、小さな蝶。


僕の手のひらに、淡い光とともに、明るい黄色の蝶々が現れた。そう、モンキチョウに似ている。でも、質感は硬い。プラスチックに似ている。


「……すごい。綺麗」


サラは、蝶々から目を離せないまま呟いた。


「あげるよ。お礼」


「……ふぇ」


「髪に飾っても、可愛いと思うんだ」


サラは、両手でそっと蝶々を受け取った。


「飾ろうか?」


そう聞くと、サラは顔を真っ赤にして、ぶんぶんと首を振る。

そして、そのままエミリーのもとへ走っていった。


……嬉しかったのかな?

正直、よくわからない。


「ケント、何をしているんだ」


突然、頭上からアレクサンダーの声が降ってきた。思わず肩が跳ねる。


僕は、そろりと振り返って答えた。


「サラに……ハーブのお礼を渡したんだけど……」


……ちょっと。

そんなに睨まなくてもいいじゃないか。

本当に、何もしてません。


アレクサンダーは、深くため息をついた。

やれやれ、といった様子だ。


……何なんだろう。

僕、何か地雷踏んだ?


「まあ、いい」


そう言って、話題を切り替える。


「ケント、アイテムを取りに行けるか?」


「行けるよ。いつでも」


……望むところだ。


「少し厄介かもしれんが……まあ、何とかなるだろう」

アレクサンダーはそう言うと、僕の手を取った。


「近くまで転移するぞ」


次の瞬間――


《転移》


視界が歪み、僕たちはその場から消えた。


……ちょっと待って。少し、厄介って。結構問題なのでは……?と思った時は既に遅かった。


視界が開けた瞬間、熱気が肌を叩いた。


僕の目の前に広がっていたのは、草木一本生えていない荒れ果てた大地。

遠くでは、赤く煮えた溶岩が脈打つように流れている。


……これ、火山地帯だよね?

というか、めちゃくちゃ暑い。


立っているだけで汗が噴き出し、喉が一瞬で渇いた。


「ここはな、溶岩が生き物のように襲ってくる場所だ」


アレクサンダーが、いつもの落ち着いた声で言う。


「このずっと先に、目的のアイテムがある」


……待って。

聞き捨てならないこと、今さらっと言わなかった?


溶岩が、襲ってくる?

しかも、この熱さ。


装備も対策も、何もしていません。

無理です。普通に死にます。


「……僕が、一人で行くんですか?」


恐る恐る聞くと、アレクサンダーは即答した。


「そうだ。これも試練だからな」


……あ、はい。

やっぱり、そうですよね。


僕はしばらく黙り込んだまま考えた。

このまま突っ込むのは、自殺行為だ。


そして、ひとつ思いついた。


「……どこかで、大量の水は手に入りませんか?」


アレクサンダーは顎に手を当て、少し考える素振りを見せたあと――


「あるぞ」


そう言って、僕の手を取った。


《転移》


次の瞬間、目の前に広がったのは――

どこまでも続く、巨大な湖だった。


僕は慌てて《収納》を使い、可能な限りの水を詰め込んでいく。


これでもか、というほど水を確保したところで、


《転移》


再び、灼熱の大地へ戻ってきた。


……よし。

これで、何とかなるかもしれない。


僕は、じっと溶岩の方を見つめた。


赤く煮えた溶岩が、時折うねり、弾ける。

まるで太陽のフレアみたいに、不規則に動いていた。


……あれが、襲ってくるのか。


今の装備では、まず歩くことすら不可能だ。

一歩踏み出した瞬間、焼け焦げる未来しか見えない。


僕は、ふっと息を吐いた。


そして、《収納》から折紙を取り出す。


……そうだ。


紙飛行機を折り始める。

手は自然と動いた。


《創造》《飛行機》


イメージしたのは、一人乗りの小型機。

軽くて、操作が簡単で、空を飛べる――はずのもの。


僕の経験値は、もう十分ある。

《創造》も、昔に比べてずっと自由に扱える。


……はずだった。


――何も、起こらない。


「……無理か」


容積の問題?

それとも素材? 構造?

考えれば考えるほど、原因は多すぎた。


いい案だと思ったんだけどな。


僕は肩を落とし、気持ちを切り替える。


次に折ったのは――スノーマン。

雪だるまの形を、折紙で丁寧に作った。


そして、先ほど《収納》しておいた大量の水を意識する。


《創造》《スノーマン》


次の瞬間、地面が震えた。


白い巨体が、ぐぐっと盛り上がる。

水が瞬時に凍りつき、巨大な雪の人形へと変わっていった。


……で、でかい。


「僕を乗せて、向こうまで連れて行って」


恐る恐る、指示を出す。


スノーマンは無言のまま僕を肩に乗せ、ゆっくりと歩き始めた。


……ちょっと待って。


高い。

高いって!?


「うわっ……!」


視界が一気に持ち上がり、足元が遠くなる。


揺れる。

揺れる揺れる揺れる!


落ちたら、死ぬ。

確実に。


「ちょ、ちょっと! ゆっくり! 慎重に――!」


溶岩の熱気が下から立ち上る中、

僕は必死にスノーマンの頭にしがみついた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ