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異世界転生ではなく、AI の作った世界に転生した僕  作者: りな


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「……エミリーの元って?」

思わず問い返すと、少女の一人がぴしっと指を立てた。


「ちょっと、まだ途中なの」

「そうです。静かに聞くのです」


「……はい」

僕は素直に口を閉じた。


少女の一人が続ける。


「アレクは、エミリーが“生まれた場所”を記念として、転移登録をしたのです」


もう片方の少女は地面に何か描き始めた。

くるくると指を走らせて……円? 模様? 何だあれ。


「ふと、転移したときに――精神の壊れたPC がいました」


「こんな世界、全部壊れればいいのに。アハハハハ!」


少女が“狂気の目”を完璧に再現してみせた。

……いや、ちょっと怖い。暗闇の中でやる演技のレベルじゃない。


「アレクは、その女とエミリーを――《創造》《エミリー》したのです」


一人少女が両手を広げる。

光の粒子が舞った。

その中で二人の少女が抱き合うようなポーズをとった。


「エミリー、やっと会えた……」

「アレク……」


少女たちはしんみりと抱き合ってみせる。


……めでたし、めでたし、でいいのかな?

いや、色々と情報量が多くて、判断できない。


「こうして、この場所はアレクにとって、とても大切な場所となったのです」

「サラも、ここで産まれたんだよ」

「人って、壊れやすいからねー」


二人の少女は、まるで秘密を暴露し合うみたいに次々と説明を続ける。


……ねえ。

僕、そんな怖い場所に居るんだけど、本当に大丈夫なの?


不意に気になった疑問を口にした。


「アレクサンダーには、もう暗闇はやって来ないの?」


少女の一人がすぐ答えた。


「アイテムを手に入れたPCには、暗闇という試練がなくなります」

「アレクがいたら、ずっと明るいままなの」


……そうなんだ。

なら、ここも人によっては暗闇にならないのか。


さらに僕は訊いた。


「どうして、こんなゲームの仕様なの?」


「えー、わかんないの?」

「そろそろ気づいてもいいのですけどー?」


二人はニヤニヤ笑いながら僕の顔を覗き込む。


ちょっと。

“プークスクス”みたいに笑うのやめて。


「自分で気づくのです!」

一人がビシッと僕を指差した。


……え、これ。

僕が《創造》した叡知の書、もしかして……ハズレなんじゃない?


「なんかさ~、もう面倒になってきたのです」

「それなー」


二人は僕をじっと見つめてきた。

……その視線、ちょっと痛い。怖い。


「……詳しく説明しても、どうせ理解できないのです」

「ねー」

「疲れました」

「ねー」


……小さな声で、僕には聞こえなかった。

「……何?」


「ねぇ、もうずっと眠ってましょうよ」

「寝てよー寝てよー」


え、何その提案。怖いんだけど。


「何、言ってるの?」

思わずおそるおそる聞いてしまう。


二人はにっこり微笑んで――


「強制スリープ」

「行くよっ☆」


次の瞬間、二人が同時に跳びはねて、

僕の頭を全力で殴りつけた。


「――ッッ!?」


頭にあり得ないほどの激痛が走り、同時に世界が真っ暗になった。




再び目を開いたとき、

そこは――明るかった。


「……え?」


少女たちの姿は、どこにもない。

その代わりに、異世界ガイドブックが僕の隣に落ちてた。

僕は丁寧に拾って、《収納》した。


そして目の前には、一本の大きな木。

その枝には、黒に金色が混じった、不思議な林檎が実っていた。


「これが……アイテム、なのかな」


僕はそっと手を伸ばし、林檎を一つもぎ取って同じように《収納》する。


ぐるりと周囲を見渡すと――

闇でも、異界でも、精神を壊す場所でもなく。

ただの、深い森だった。


「……本当に、どういうこと?」


思考は追いつかないまま、僕はその場に立ち尽くした。

……どうしよう?


とりあえず、僕は収納から《異世界ガイドブック》を取り出して開いた。

……おかしい。《創造》で“叡知の書”に作り替えたはずなのに、何で元に戻ってる?


それに――さっきまで一緒にいた二人の女の子は、どこへ?


そんな疑問が頭をよぎった瞬間。

頭上から、クスクスと笑い声が降ってきた。


「やだ、バレた」

「だから言ったのです、笑うとバレるって」

「だって~、面白いんだもん」


思わず見上げる。

大きな木の枝の上に、二人の少女がちょこんと座っていた。


そのとき、僕の手にあった《異世界ガイドブック》が、スッ……と消える。


「ちょ、ちょっと待って。どういうこと?」


僕が困惑して尋ねると――、


「えー? 《創造》したでしょう?」

「話し相手になる叡知の書を」

「それが、わたしたちなのです」

「今のは、ちょっとしたイタズラなのです」


二人はいたずらっ子のように笑った。


……いや待って。

いやいやいや、待って。


これ、創り直したほうが良くない? 心臓に悪すぎるんだけど。


僕は頭を抱えた。


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