表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生ではなく、AI の作った世界に転生した僕  作者: りな


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/34

僕は落ちた。

けれど、落ちた先は――異様に柔らかかった。


ふわっ、と水の中に潜り込むみたいに身体が沈んでいく。

柔らかい何かに包まれながら、ゆっくり地面へと向かっていく感覚がした。


地面の少し手前で、僕はふわりと停止した。

次の瞬間、包んでいた“水のような何か”が消えた。


――テッテレ〜♪


耳慣れない軽い電子音が響き、目の前に透けるスクリーンが現れた。


《キングスライムを倒しました。レベルが7上がりました》

《経験値が入りました》

《火炎魔法を覚えました》

《風魔法を覚えました》

《体力が上がりました》

《知力が上がりました》

《生命力が上がりました》


……面倒。

どうやらレベルが上がったらしいけど、意味がよくわからない。


確か、神様が「特典を適当につけてやる」とか言っていたけど……あれのこと?


僕はスクリーンに指をかざした。

スマホを操作するみたいにスッ、スッと触ると、新しい画面が開いた。


《特殊能力》


そこに表示されたのは――


《右手に破壊》

《左手に創造》


……いや、わからない。

名前だけだと全然イメージが湧かないんだけど。


他に持ち物があるか確認してみる。

持ち物タブを開く。


《靴》

《服》


……それだけか。

お弁当とか水筒とか、ないの?

これ、もしお腹空いたらどうするんだろう。

ゲームだから空腹は無いのかな。いや、それでも不安だ。


僕は、ようやく周囲を見渡した。


岩があって、草があって、木が生い茂っている――森だ。

風の匂いがして、土の感触もする。

どう見ても、ゲームとは思えないほど“本物”だ。


ここから、どうすればいいんだろう。


よくわからないけれど、まずは試してみないと始まらない。

僕は近くの木に歩み寄った。


「能力の確認、だよね」


右手を木の幹に軽く当て、《破壊》のイメージを頭の中で思い浮かべる。


すると、目の前に透けたウィンドウがふわりと現れた。


《レベルが足りません》


……できない、ってことか。

破壊って名前の割には、要求が高い。


次に、地面に落ちていた葉っぱを一枚拾う。

小さくて軽い、いわゆるただの葉っぱ。


これならどうだろう。


《破壊》をイメージした瞬間、葉は――

ぱらぱら、と灰みたいに崩れて、僕の手からこぼれ落ちた。


……怖っ。

軽い気持ちでやるものじゃないな、これ。


次は《創造》の番か。

僕は木に左手を当てて、さっきと同じように力を思い描く。


《経験値が足りません》


……はい、こっちも無理、と。


何ができて、何ができないのか、まださっぱりわからない。


僕は今度は足元の小枝を拾い上げた。

細くて軽い、ただの折れた枝。


よし、テスト対象にちょうどいい。


《創造》《箸》をイメージする。


一瞬、指先が熱くなった。

次の瞬間――小枝が消えて、僕の手の中には“箸”が現れていた。


「……できた」


いや、便利だけど。

便利なんだけど、これで何をしろと?


僕は箸を持ったまま、森をぐるりと見渡した。


どこまでも続きそうな深い森。

静かな風。

見えるのは岩と木と草だけ。


……ここで、僕はどう生きていくんだろう?


僕は箸を持ったまま、てくてくと歩いた。

方向なんてわからない。ただ “前” に進むだけだ。


しばらくして、前方に何かがちらっと見えた。

ゆっくり近づいていくと、それが何なのかだんだんはっきりしてきた。


……二匹の“目玉だけの生き物”が、喧嘩をしていた。


体はない。

大きな目玉がぷかぷか浮かんで、互いに怪しげな光線みたいなものを出して威嚇している。


僕のところまでは光は届いてこない。

ただ、ピカッ、ピカッとやってるだけだ。


暫くぼんやり見ていたら、二匹とも動きがだんだん鈍くなってきた。


……なんだこれ。

飽きたのかな。


僕はそのまま、てくてく歩いて二匹のそばまで行った。


そして、ふと――

二匹が “僕を見た” と感じた瞬間。


僕は箸を強く握りしめ、そのまま勢いよく目玉のひとつを突き刺した。


ぐさっ。


次に、抜いた箸でもう一匹を突き刺す。


ぐさっ。


二匹は小さく震え、すぐに僕の目の前で光の粒になって消えた。


直後、電子音が響いた。


――テッテレ〜♪


透けるスクリーンが目の前に展開する。


《不吉を呼ぶ竜の瞳を倒しました。レベルが10上がりました》

《経験値が入りました》

《火炎魔法(2)を覚えました》

《風魔法(2)を覚えました》

《体力が上がりました》

《知力が上がりました》

《生命力が上がりました》



……うん。

やっぱり、よくわからない。

とりあえず何か強くなったらしい。


目玉が消えた場所を見ると、一冊の本が落ちていた。


僕はそれを拾い上げる。


《叡知の書を手に入れました》


テッテ、テッテレーン♪

再び電子音が鳴った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ