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異世界転生ではなく、AI の作った世界に転生した僕  作者: りな


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「男の子から花を貰うなんて、初めてね」


エミリーが、いたずらっぽく微笑みながら言った。


……え、そうなの?

妹たちにはよく摘んであげたけどなぁ。タンポポとか。綿毛なんて渡しただけで、無茶苦茶喜んでたし。


「そっか。また綺麗な花を見つけたら、摘んで来てあげるよ。髪に飾ると、可愛いし」


自然とそんな言葉が口から出る。

だって、妹たちはよく髪に花をさして遊んでた。すぐ落ちるんだけど、それでも嬉しそうだった。


サラは――


コク、コク、コク。


両手で花を持ったまま、まるで壊れた人形のように、首を縦に振り続けていた。顔は真っ赤のまま。


……そんなに嬉しいのかな?

だとしたら、花ってすごい。


「……ケント。ちょっと、男だけの話をしないか」


急にアレクサンダーが真剣な声で言ってきた。


え。なんで?

さっきから目がやけに鋭いんだけど。


「ちょ、ちょっと!?」


僕が抵抗する間もなく、アレクサンダーに腕をつかまれ、そのままズルズルと別室へと連れて行かれた。


……なんでこうなるの?

アレクサンダーの別室に連れ込まれた僕はそのまま延々と、

「女の子は大切にするものだ」

「軽々しく貴重な物を渡すんじゃない」

「他人には簡単に触ろうとしてはいけない」

などなど、父親らしい説教(?)を聞かされ続けた。


……うん?プリザーブドフラワーって、貴重なのかな?でも、女の子は大切に、は、わかる。それは僕、十分知ってるんだよ。


妹たちに少しでも手を出そうものなら、母さんが稲妻のような勢いで飛んできて僕は叱られるし。

それに――妹たちは口がとんでもなく悪くて、本気で口喧嘩したら僕が負けそうなくらいなんだけど。……でも、笑うとすごく可愛いんだ。

生意気でも、大切な妹たちなんだ。


「……大切な人は、いつだって笑っててほしいよね」


ふと漏れた僕の言葉に、アレクサンダーは黙り込んだ。


重い沈黙がしばらく流れ――

そしてようやく、小さく答えが返ってくる。


「……そうだな」


ぽつりと呟いたあと、アレクサンダーはふっと視線をそらし、


「……明日もある。寝るぞ」


と、なぜか照れ隠しのように僕を寝室へ連れて行った。


……結局、なんだったんだろう。最後までよくわからないまま、布団に入った。


一方その頃


サラは、ケントからもらった花を両手で包むように抱えながら、小さな瓶にそっと差した。


瓶は、ベッドの枕元へ。

花を見つめると――自然と口元がゆるみ、たまらず両手で顔を覆ってしまう。


「ふ、ふぇぇ……!」


自分でも理由がわからないくらい、胸がくすぐったい。


その様子を見たエミリーは、まるで宝物を見つめるような優しい目で、そっと娘の背中を撫でていた。



翌朝。

朝食を終えたタイミングで、アレクサンダーが突然、僕に向き直った。


「次のアイテムを取りに行くぞ。目的地は――漆黒の森だ。一週間分の食料は収納してるか?」


……え。……そんな、冒険者みたいな準備、してないんだけど。なぜ急に? と頭が追いつかないまま、僕は正直に答えた。


「持ってません」


「仕方ないな。後日、返せよ」


アレクサンダーは溜息をつきつつ、収納を開いた。次の瞬間、僕の目の前のテーブルに――一週間分の食料が、山のように積み上げられた。


「えっ、多っ……!」


その様子を見ていたエミリーが、不安げに眉を寄せる。


「アレクサンダー、ケントには……まだ早いのでは?」


アレクサンダーは豪快に笑った。


「大丈夫だ。ケントは見た目より強い」


大丈夫って何だろう……。

僕、まだ全然ついていけてないんだけど。


そのとき、サラがおずおずとアレクサンダーの袖をつまんだ。


「父さん、すぐ帰ってくるよね?」


アレクサンダーはにっこり微笑んで、優しく言う。


「もちろんだとも。ケントを案内したら、すぐ戻るさ」


……えっと。

サラの心配してるのは、“僕”じゃなくて“父さん”の方なのかな?よく分からないけど、とりあえず食料を《収納》した。


「転移するから、掴まれ」


そう言われ、僕はアレクサンダーの腕をがっしり掴んだ。


次の瞬間――

視界が白く弾け、二人はそのまま転移した。


目を開けた時、僕の目の前には深い森が広がっていた。

「……この場所は、度々問題が起こるからな。転移ゲートを《創造》して作ったのさ」


アレクサンダーは周りをぐるりと見渡した後、まるで普通の事をしたように軽く言った。


……転移ゲートなんて、知りません。ていうか、どうして《創造》で転移ゲートが作れるのですか!?ところで、これ、普通の森……なのかな?


見た目は森なのだけれど、空気が重い。

まるで空気そのものの密度が高くて、呼吸するたびに胸が圧されるようだ。


北も南も分からず、方向感覚も削がれる。

どこを見ても木々の壁、木々の影。

まるで森全体が“外に出す気がない”ようだった。


そんな中で、アレクサンダーは周囲を見回し、静かに呟いた。


「……変わらないな、ここは」


少し懐かしむような声だった。


そして次の瞬間――

アレクサンダーは僕に向き直り、さらりと言った。


「さて。俺が去ると、ここは闇に包まれる。

 一週間、ここで一人だ。時間が過ぎれば、アイテムが自動的に現れる。……頑張れよ」


その言葉と同時に、彼の姿が《転移》でふっと掻き消えた。


本当に――何のためらいもなく、あっさりと。


「……えっと」


残された僕は、風の音だけが響く森のど真ん中で立ち尽くした。


「僕……捨てられた……?」


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