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異世界転生ではなく、AI の作った世界に転生した僕  作者: りな


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僕たちは一瞬の光に包まれ、アレクサンダーの家へと転移した。


「父さん、お帰りなさい!」


玄関に入った瞬間、少女の影――サラが勢いよくアレクサンダーの腕へ飛びこんだ。


「ただいま。いい子にしてたか?」


アレクサンダーは笑いながら、サラの頭を優しく撫でる。


「うん。母さんのお手伝い、いっぱいしたんだから!」


胸を張るサラは、本当に嬉しそうだった。

そして僕の方へ向き直ると、ぱっと両手を広げて言った。


「ケント、ようこそ我が家に!」


……仲良しだなぁ。本当の親子にしか見えない。

その光景をぽかんと眺めていた僕は、慌てて言葉を返した。


「……呼んでくれて、ありがとう」


するとサラはじっとアレクサンダーを見上げて、口を尖らせた。


「父さん、危険なことしてないでしょうね?」


「ずっと安全だったよな、ケント?」


アレクサンダーは胸を張り、堂々と言い切った。


……嘘だ。危険ばっかりだったけど!!

けれど僕の口から出たのは――


「心配するほどでは、ないよ」


という、弱々しいフォローだった。


「夕飯ね、わたしも手伝ったんだから! ほら、こっちこっち!」


サラは僕の手をつかむと、嬉しそうに引っぱって歩き出した。その力に逆らえず、僕もそのまま連れていかれるのだった。


キッチンに足を踏み入れた瞬間、ふわりと温かな香りが鼻をくすぐった。

コトコト煮込まれたスープの匂いが部屋いっぱいに広がり、思わず深呼吸してしまう。


「いらっしゃい」


鍋の前に立っていたエミリーが、穏やかな笑みをこちらに向けた。


「お邪魔します……」


そう言って席に着くと、目の前にはビーフシチューのような濃い色のスープ。

一口すくって口に運ぶと、想像以上の味に思わず目を見開いた。


――美味しい。


肉はスプーンで触れただけで崩れるほど柔らかく、口の中でほろりと溶けていく。

添えられた白くてふんわりしたパンは香り豊かで、スープに浸すと幸せの味が広がった。


そして、木のカップに入れられた白いミルク。


「今日はミルクまであるのか?」

アレクサンダーが驚いたように言う。


「男の子は育ち盛りでしょう? 特別よ」


エミリーはそう言って、また優しく微笑んだ。


「……ありがとうございます」


胸の奥が温かくなって、思わず目が潤みそうになる。ただ優しくされるだけなのに、こんなに沁みるなんて。


そんな僕の顔を、真正面からじーっと見つめるサラ。


にまにま、にまにま。


……見なくていいから。


ふと、《収納》の奥で、指先に引っかかるような記憶がよみがえった。――あの谷底で見つけた、薄紫の花。


「そうだ。ちょっと待って」


僕は小さく呟き、《収納》へ意識を伸ばす。

取り出したのは、薄く透き通るような紫。儚げなのに芯のある光を宿した、一輪の花。


「花?」

隣でサラが首を傾げ、そっと覗き込む。


「うん。少し見てて」


左手に花を乗せ、深く息を吸う。


――妹達がよく、庭で花を摘んでは笑っていた。その姿を見て、僕は漠然と“女の子は花が好きなんだ”と思っていた。

だからサラにも、喜んでほしくて。


《創造》《プリザーブドフラワー》


柔らかな光が花を包み込み、淡く揺らめいた。

花びらはゆっくりと輝きを帯び、まるで宝石が形を成していくように透明度を増していく。

光が収まった手のひらには――時間に負けず、永遠に咲き続ける宝石の花。


僕はそれをサラへ差し出した。


「呼んでくれた、お礼。サラ、どうぞ」


サラは花を見た瞬間――


「ふぇっ……」


可愛い声を漏らしたまま固まった。


……え? あれ?妹だったら、この時点で満面の笑みになってたけど……。


僕が焦って視線を泳がせていると、横でアレクサンダーが腕を組んで、なぜか喉奥で唸っている。

エミリーは口元を押さえ、明らかに「続きが楽しみ」という顔でくすくす笑っていた。


……え? 何これ?

僕、何か間違えた……?


「ケント、そこまでにしておけ」


アレクサンダーが低く言った。

……いや、僕、別に危険なこと何もしてないんだけど?


「サラ、君のだよ」


止められた意味がわからないまま、もう一度サラにプリザーブドフラワーを差し出す。


「……ありがと」


サラは、ほんとうに聞き逃しそうな小さな声で花を受け取った。


「とっても似合うよ」


僕が微笑んで言うと、サラは宝石のような花を両手で抱えるように持ったまま、ぴたりと動かなくなった。

そして――心なしか、顔が赤い。熱でもあるのかな?


「サラ、熱でもあるの?」


そう思って彼女の額に手を伸ばした、その瞬間。


「な、ないよ! 大丈夫!」


サラは弾かれたみたいに後ろへ飛び退いた。

……いや、やっぱり赤いよ? その反応こそ心配なんだけど。


ちらりと横を見ると、アレクサンダーは額に手を当て、なぜか天井を仰いでいた。

まるで「なんてことだ……」とでも言いたげな、複雑な父親の顔で。


エミリーはというと、テーブルに頬杖をつき、目を細めて僕らを観察している。


……え?

僕、普通だよね?


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