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異世界転生ではなく、AI の作った世界に転生した僕  作者: りな


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巨人はごとり、と地面に手をついた。


 その口から、耳慣れない、どこか嫌な響きの呪文が漏れる。


「……《ヴォル・グラナ・ゼル》」


 ぐらり、と地面が揺れた。


 次の瞬間、地面を押し分けるようにして――三体の岩の人形が、ずずず、と這い出してきた。


「厄介な……」


 アレクサンダーが小さく吐き捨てた。


 ……いやいやいや、厄介どころじゃない。

 岩の人形、僕よりデカいんだけど!?


 しかも、こっちに全力で走ってきた。


 血の気が、一気に引く。

 心臓が早鐘を打つようにうるさい。


 アレクサンダーもこちらを援護しようと動いた――その瞬間。巨人が巨大な腕を振り上げ、アレクサンダーに襲いかかった。


「ちっ……!」


 大きな衝突音。

 アレクサンダーは腕を交差して受け止めるが、その場から動けない。


 そして――人形は、もう僕の目の前まできていた。


 息が詰まる。


 ……やるしか、ない。


《瞬歩》


 視界が一閃し、身体が前へ吸い込まれるように跳んだ。景色が、歪む。

 気づけば僕は、人形の真正面に立っていた。


 すぐさま右手をその胸へ押し当てる。


《破壊》《人形》


 次の瞬間、人形は崩れ落ち、瞬時に砂へと変わった。


 一体、消えた。


 ……まだ、二体。


 心臓はまだ、耳元でとてもうるさかった。

 でも、僕は素早く周りを見回した。


僕は呼吸を挟むことなく《瞬歩》を発動し、二体目の人形の目の前へと跳んだ。

人形がこちらに気づく。――遅いよ。


《破壊》《人形》


呪文が紡がれると同時に、人形は砂となって崩れ落ちた。


三体目が異変に気づいたのか、がむしゃらにこちらへ突っ込んでくる。

……無駄だよ。


《瞬歩》


一瞬でその背後へ回り込む。

けれど、人形は僕に気づいた。腕をぶんっと人形は振った。僕は素早く屈んで、人形との距離を詰めた。右手を人形のお腹にあてる。


《破壊》《人形》


三体目も同じように砂へと還った。


「……あとは、巨人だ」


巨人はアレクサンダーから視線を外し、ゆっくりと僕に目を向けた。

だが、それすらも――遅い。

僕の耳には自分の心臓音しか聞こえてなかった。アレクサンダーが、何か言っているようだが、わからない。


《瞬歩》


僕は巨人の巨大な顔の目前に跳び込む。


《破壊》《巨人》


呪文が放たれた瞬間、巨体は一瞬で砂となって崩れ落ちた。

僕はほんの僅かに、笑った。


――しかし、僕は気づいた。


「あ、ここ……めっちゃ高い!」


……どうしよう。着地の仕方、わかんないよ!

意識したときには遅く、僕の体は重力に従って真っ逆さまに落下していった。



地面に落ちる――そう思った瞬間、横から暴力のような風が吹きつけた。

それは、地面を抉りながら僕に当たった。

僕の体はそのまま横へ弾き飛ばされ、地面をゴロゴロと転がる。


地面に激突しなかったのは幸いだけど……うん、これはこれで痛い。少し、涙が出そうだ。

転がり終えた僕は、まるでボロ雑巾みたいな有り様になっていた。


「何とか間に合ったな」


風魔法を放ったアレクサンダーが、すぐ横に立っていた。

……もっと、マシな助け方なかったの?

とは口が裂けても言えず、僕は機械みたいな声で返す。


「アリガトウゴザイマス……」


「まあ、無事でよかった。さて、帰るか」


アレクサンダーはそう言って歩き出す。そして、ふと思い出したように続けた。


「そうそう。今日は我が家に泊まってくれないかな?昨日、エミリーとサラに叱られてね。『なんであんな小さい子を一人で帰らせるんだ』って」


やれやれ、と肩をすくめるアレクサンダー。


……ちょっと、それって僕、大丈夫なの?

そう思いつつ、恐る恐る口を開く。


「……いいのですか?」


「毎日が同じことの繰り返しで退屈なんだろう?身の安全は保証するぞ」


アレクサンダーは自信たっぷりに胸を張る。


……いや、あなたも十分危険なんですけど。

そんなツッコミは、もちろん飲み込んでおいた。

「転移で帰るか。俺に掴まれ」


アレクサンダーが手を差し出してくる。


「ちょ、ちょっと待って!」


僕は慌てて制した。


アレクサンダーが片眉を上げるなか、僕は少し離れた場所へ小走りに向かった。

さっき跳んだとき、ほんの一瞬だけ視界の端に映ったのだ。


――花が咲いているのを。


地面の陰に、薄紫の小さな花が揺れていた。

さっきまで巨人と戦っていた場所とは思えないほど、静かで、やさしい色だった。


「……キレイだ」


思わずつぶやき、僕は花をそっと摘む。

そして手のひらで包むようにして《収納》した。


「お待たせ!」


僕はアレクサンダーのもとへ駆け戻る。

アレクサンダーは少し首を傾げた。けれど。


「もういいのか? 行くぞ」


短く言うと、僕に腕を掴ませた。


次の瞬間、視界が一気に白く跳ね――

僕たちはアレクサンダーの家へと転移した。


 

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