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異世界転生ではなく、AI の作った世界に転生した僕  作者: りな


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莫大な経験値が、身体の奥底にどっと流れ込んでくるのが分かった。

 熱いような、冷たいような、でも確かに“力”だとわかる何かが、血管の一本一本にまで染みわたっていく。


 ――すごい……これが、レベルアップ?


 扱える魔法の数が、一気に跳ね上がった。

 自分がどこまで出来るのか、逆に想像が追いつかない。


 僕は、震える手を見つめた。

 何でも出来る。そんな根拠のない自信が、胸の奥から湧き上がってくる。


「まだ身体に馴染んでいない。少しずつ試すんだ」


 アレクサンダーがそう言ったが……“試す”って、何を?


 草原。

 湖。

 そして、アレクサンダー。


 ――特に動く物なんて――


 そのときだった。


 頭上を、影が横切った。大きな鳥か、魔物か。

 考えるより先に、身体が動いた。

 右手から、何かが出でる感覚。


《風魔法》《鎌鼬》


 瞬間、ごうっと風が巻き起こる。

 鋭い風の刃が上空を走り、何かを切り裂いた。


 バサッ。


 僕の目の前に、羽根の生えた魔物が落ちてきた。


「……え。今の、僕が?」


 誰に問いかけるでもなく、呟きが漏れた。


 そうだ。

 僕だ。


 僕が、魔法を――考えるよりも早く、使ったんだ。


僕がさっき仕留めたのは、鋭い嘴を持つ魔鳥だった。僕よりも身体が大きい。アレクサンダーがヒュウと口笛を吹いた。


「グレイバードだ。結構、強い奴だぞ」


 羽根が散り、光の粒になって消えると同時に、経験値が身体に流れ込んでくる。


「もう少しで目的地なんだが……寄り道しすぎたな。夜が来る」

 アレクサンダーは空を見上げて、ため息をついた。


 ……もう、そんな時間なんだ。


「転移宝玉は持ってるな?」

 僕は頷いた。


「じゃあ、明日の朝、迎えに行くよ。ここに転移のマーカーをしておくように。――良い夜を。《転移》」


 言いたいことだけ言い終えると、アレクサンダーの姿はふっと消えた。

 ……相変わらず、一方的だな。


 でも、明日はここから始まる。

 それが、少し嬉しい。


 僕は収納から転移宝玉を取り出した。

 使い方は――教わっていないのに、自然と理解できた。


 左手に宝玉をそっと握る。


《転移》《登録》


 ぽう、と足元と宝玉が淡く光った。


 ……よし、帰ろう。


《転移》《自宅》


 次の瞬間、視界がゆらぎ、僕は自分で作った家の中に立っていた。



僕は家に戻るなり、ベッドに飛び込んだ。

全身がどっと沈む。身体中に、おもりがついているかのように、動けない。疲れた……でも、良い一日だった。


 ――僕に合う装備って、なんだろう?


 ふと気になって、異世界ガイドの本を開いた。ページの向こうには、いつもの二人の女の子がいた。


「経験値大量ゲット〜! やったね〜!」

「わ〜、パチパチパチパチ」


 ……なんだか、一人、妙にテンションが高い。


「……ちょっと、嬉しそうじゃないけど?」

「え、いやいや……幸運のクリスタル持ってたら、勝手に敵が転んで自爆したり、苦手な敵には100%逃げられるとか、あったけど……良かったのかな〜?って」


「もう破壊した後に言うな〜!」

「だって言う前にもう砕いてたんだもん」


「……あ、そっか」


「それより、装備だよね?」

「そうそう! 手軽で最強装備ヨロ〜!」


 ひとりが胸を張って言った。


「戦闘スタイルにもよるけど、子供とか女の子なら――《ウィンダーフレーク・レザー》と《ルミナス・ショートボウ》が王道かな」


「その心得は?」

「軽くて、扱いやすくて、遠距離から安全に敵を倒せる。特に初心者にはピッタリ!」


 僕はそっと息をのんだ。


 ――《ウィンダーフレーク・レザー》

 ――《ルミナス・ショートボウ》


 二つの名前を、しっかりと頭に刻んだ。


ページをめくった先で、またあの二人組の女の子がわちゃわちゃしていた。


「はいはい。で、剣とかナイフは?」

「うーん……瞬歩を覚えて《破壊》できるなら、大体それで倒せるん?」

「ヤダ。カッコよくない」

「わがまま言うな~」


 ……瞬歩、っていうのがあるんだ。

 瞬間移動みたいな技なのかな?

 ということは――僕にも使える可能性があるってことだよね?


 それに、《破壊》ってそんなに強力になってるの?まるで、《破壊》出来ないモノは無いみたいな会話だけど、まさか、そんな事はないよね。

 《瞬歩》かあ。今日の戦闘でも強かったけど……まだ伸びしろがあるってこと?


 明日、試してみよう。


 あれこれ考えていたら、気づけばまぶたが落ちていた。

 疲れていたはずなのに、妙に胸が高鳴ったまま――そのまま眠りに落ちた。


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