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入学準備

長い時間列車に揺られ、とうとう終点へたどり着いた。

 

 「まもなく、終点、マリー・マリーンズ貿易学園前。」


 キリキリと車輪と線路に強い摩擦音が車内を通っていく。大空と大海の水平線路を走った列車は意外にもどこにでも建っていそうな真っ白いコンクリートで包まれた駅に停車する。ここが終着点だ。しかし青春の日々を、目いっぱい楽しんでいる学生たちが多く駅内を賑わせていた。


 「明星ほたる様、長旅お疲れ様でございました。こちら春夢ノ運河線片道特急列車は、マリー・マリーンズ貿易学園を終点に現在停車準備を進めております。」


 気づけば、横には出発時に荷物を運んでくれた駅員が立っており、淡々とほたるに列車の長旅を労ってくれた。


 「長時間のご移動お疲れになさっているでしょうから、こちらの荷物は改札口までご一緒させていただきます。」


 「すみません。わざわざありがとうございます。」


 ほたるはそそくさと席を立ち、身なりを軽く整えて駅員と共に出入り口まで向かう。緊張、不安、そしてそれらを包み込むような大きな期待がほたるの小さな体をふるふると武者震いさせる。列車内を歩く足取りはスキップをするみたいにふわりふわりと進んだ。

 列車の乗降扉に辿り着き、明星ほたるはとうとう未知の世界へと一歩、その足を踏み入れる。彼女の目の前には、前の世界とは全く違った光景が広がっていた。

 

 「わあ、すごい!」


 大人という大人は全く見当たらない。初々しい女子生徒達の賑わいを見せ、駅のホーム内は活気と青い空間で満たされていた。ここで子供たち、少年少女は青春の日々を成しうる限り謳歌し、思い出のアルバムを作っていくのだろう。

 ほたるは期待と想像で胸を膨らませ、思わず息を呑んだ。


 「明星様?」


 「あっ、ごめんなさい……!つい魅入ってしまって。」


 ほたるの子供らしい身振りを微笑ましく思う駅員は彼女に対して言葉を続ける。

 

 「初めて来られる生徒の方々は、皆同じご反応をしてくださいます。」


 さ、どうぞ。足元にお気をつけて。荷物を持った駅員は、ほたるより先に列車を降りてほたるに優しくエスコートをする。そこからは、改札口までホーム内を見渡しながら歩いていた。どこもかしこも自分の歳に近い学生らが、あるいは下校時、友達と列車を使って帰るために。あるいは放課後、流行り物の服やコスメ、プチプラを買いに行くために。あるいは帰りに友人と食事をとって談話をするために。この駅を利用するために、さまざまな目的があって集うのだろう。制服もそれぞれ違う。いろんな学校の生徒たちがいるのだ。

 そうこうしているうちに、あっという間に改札前まで着いてしまった。ほたるは駅員から荷物を受け取り、


 「ありがとうございます。」


 と感謝を述べて改札口を通る。


 「それでは、明星ほたる様。あなたの青春がより良いものとなりますよう、駅員共々切にお祈り申し上げます。」


 改札口の窓口から、見回りをこなう職員、駅の関係者達がほたるに向かいザッと規律正しいお辞儀をし、ほたるを旅立たせる。照れ臭く感じながらも小さく会釈をして、彼女は駅を後にする。ほたるが見えなくなるまで、駅の職員たちはお辞儀をし続けた。

 彼女が見えなくなった瞬間、春夢ノ運河線の時間は再び動き出す。


 改札口から出てしばらく歩いたのちに広場と見られる噴水のある場所で休憩をしようと足を止めた。ほたるは荷物から案内書を取り出し、次にしなければならないことを確認した。


  駅前にあなたを担当する教職員を迎えさせます。

    お手数ではございますが、しばらくお待ちくださいませ。


 「教職員……先生?。」


 「先生……いい響き。」


 「えっ?。」


 案内書から目を離すと、先ほどの噴水の石造りの場所にはまるで漆黒に身を包んだカラスが羽を休めるように長身の黒髪の女性が足を組んで座っていた。


 「こんにちは。明星ほたるさん。」


 挨拶を済ませた彼女は、髪と同じくらい長いトレンチコートを羽ばたかせて立ち上がる。


 「えっと、あなたは?。」


 「ああ、ごめんなさいね。マリー・マリーンズ貿易学園で教職を務めているわ。私は風間ルカ。案内書に書かれていたでしょう?。」


 ほたるは案内書とその教職員を二度見し、照れながら

 

 「よろしくお願いします!。風間先生。」


 と挨拶を交わす。


 「うん。いい返事。このあとは確か……。」


 「あの、先生……私。」


 「ん?。」


 ほたるは困ったように両手に持った大荷物を彼女に見せる。ルカは「ああ、それもそうね。」と口をこぼす。

 すると彼女はゆるりと静かに手を荷物に向ける。ほたるはそれが荷物を先生自身に渡すようジェスチャーをしているのだと思い、力いっぱい腕を上げて渡そうとするのだが、ルカの手の位置はあまりにも高く、腕が細い彼女では到底上げきれない。

 

 「せ、先生……おも……い!。」


 顔を顰めながらルカの顔を覗くと、彼女はなぜか自慢げな笑顔をほたるに向けたかと思えば、もう片方の手で彼女は伸縮する指示棒をシャキンと取り出し始めた。

 ルカは指示棒を荷物に向かってくるくると回す。ほたるは一体何をしているのか理解できなかった。すると、持っていた荷物はカタカタと震え始め、手に強くかかった圧力は徐々に弱くなっていく。ルカが指示棒を回せば回すほど、羽毛のように軽くなり始めていった。


「手を離してみて。」


 先生が指示棒をパチンと両手で収縮させ、ほたるにそう告げる。

 疑心暗鬼が渦巻く中、恐る恐る離してみると、その荷物はなんとプカプカと浮遊していた。糸で吊るされている訳でもない。本当に浮いているのだ。


 「えっ⁉︎えっ!?これ、なんですか!?どうなってるんですか!?ど、どうやったんですか!!??。」


 目をキラキラと輝かせながらほたるは好奇心いっぱいに質問をする。


 「うふふ。大人は不思議な力を持っているの。これなら疲れないでしょう?」


 満更でもないルカは、キラキラで眩しく輝くほたるを尻目に「旅の続きをするわよ」と入学準備の手続きのために話を続ける。入学前に揃えないといけないのは夏と冬用の、それと体育用などの制服の発注、リストに書かれた教科書の注文、最後に入学証明書を学校に提出。ルカは用紙に向かって睨みつけている。


 「この時期、マリーンズでは制服の販売はやってないのよ。」


 信じられないことを口にし、ほたるは驚愕した。制服が買えないと入学できないわけではない。その場合、以前使っていた前の学生服を使うだけなのだが、荷物は最小限に抑えるためにその制服は持ってきていなかった。ほたるはだんだんと頬の血色が悪くなっていくのを感じた。


 「え……じゃあ私、入学できな……」

  

 絶望しきったほたるの顔を見てルカは思わず吹き出してしまう。


 「あっはは。極端な子なのねほたるは。大丈夫よ。当てはあるから。なんならマリーンズで買うよりもっといい制服になるわよきっと。」


 「ほんとですか?よかったあ〜……」


 「でも少し歩かないといけないわ。少し休んでから行く?」


 ほたるは周りを見渡す。見たことのない街、人通り、いつもと違って感じる青空。疲れなんて感じないと思えるほど、胸の高鳴りは止まらなかった。


 「いえ、大丈夫です。」


 好奇心でいっぱいの彼女の顔はほのかに笑みを浮かべていた。強がってるわけじゃない。それほどまでに若者が持つ強い探究心は誰にも止められない。これなら大丈夫だろう、ルカは安心し、彼女のいう”当て”へほたるとともに向かう。浮かんだ荷物たちも、彼女たちに置いて行かれんとばかりにふわふわと着いていった。

 駅の近くの広場から出て、ほたるがついて来れるように、ルカはゆっくりと街道を進む。初めて都会へ来た田舎娘のように、人波から建物へ、建物からビル群へぐるぐる首を振った。

 首が痛くなるほど大きく、立派な百貨店達は幾何学的なデザインを施され街を見守るように立ちすくみ、脈のように繋がり、まるで人々が空を歩いているかのような歩道橋の数々。ところどころビルには、街を賑やかさで彩る大きなデジタルサイネージが置かれており……さらに上を見れば、規則正しく列を作って空を飛ぶ小型無人機さえもいた。正しく近未来的な街並みであった。

 どれもこれも、流行にうるさい青少年たちの為の街。それに伴い、この街は古くなることが許されないのだろう。完成などない、常に進化し、変化し続ける。今もなお、建造中の建物や改装中の店がいくつも立ち並んでいた。


桜染美乃町おうせんよしのちょうって言うの。いい街でしょ?元々は小さな町だったのよ。」


ほたるが歩いている場所は、かつてはビルも右手だけで数えられるほどしか建っていないほどの小さな町だったという。今では、都市部と言っても変わらないくらい交通機関や医療施設、公共施設などの都市的施設なども作られ、当時の人からすればこれほどまでの発展は予想だにしなかっただろう。

 

「想像できないです。どうやったらこんなに大きくなるんでしょう……。」


「うふふ。あなたも……。マリーンズに入学したらいずれ分かるわよ。」


「それってどういう……わぷ!」


立ち止まったルカの背中にほたるがぶつかり、着いてきた荷物も追突しそうになる。


「ここよ。」


 ルカが親指でクイッと看板に指を指す。そこには「装飾芸術同好会」と書いてあるのが見えた。建物を見てみると、先程見てきたビル群や建造物、店の建築スタイルとは大きくうってかわり、暖かいレンガや古木などを使用したヴィンテージ感のある外観をしていた。子供は入れなさそうな大人な雰囲気にほたるはたじろぐ。


「あの、制服を買いに来たんですよね……?」


「ええ。もちろん。……ほたる。ちょっとおいで。」


 ルカはほたるに真剣な眼差しを向けたかと思えば、彼女の肩や服を払いだし、手でシワを伸ばし、ほたるの身なりを整え始めた。そしてルカ自身もネクタイを整え、第1ボタンを閉めたりと身だしなみに最新の注意を払いはじめる。


「いい?これから会う子はとー……っても気難しい人だから、粗相しないように!」


 ほたるは固唾を飲み、前髪をさっさと直してから「はい」と答える。

 扉に入るその手は、まるで突入する前の特殊部隊のように緊張感が走っていた。


 リンリン……

 

 ドアベルを鳴らしながら中へ入った。

 中は薄暗く、オレンジ色の控えめな照明で照らされ、静かにジャズミュージカルが流れていて、なんだか眠たくなってくる。古木を使った内装からは、ほんの微かにフィトンチッドの清々しくも優しい落ち着く香りは、先程の緊張が和らいで肩の力がスっと落ちていって気持ちいい。

 奥に目をやるとカウンターテーブルが現れ、カウンターの中には様々な種類の布の生地が垂れ下がっているのが見えた。

 そしてそこには、先程ルカが言っていた気難しいという女性が静かに立っている。

 女性は、ルカに気づくと小さく微笑み、「ごきげんよう。ルカ様」と会釈する。ほたるには一切目を合わせない。まるで誰もいないかのように。


「トライ・アングルのカッターシャツをお召になっていますね。スタンダードなレギュラーカラー、コットンとポリエステル素材、60といったところでしょうか……。私が仕立てたシャツはお気に召しませんでしたか?」


 ほたるでも分かる鋭い質問、いや、もはや尋問に近い。声色に感情を感じとれずとても冷たい。途端に部屋の中はピリピリとした張り詰めた雰囲気で押し詰める。


「とんでもない。あなたが仕立ててくれた服は全て最高の代物よ。あのシャツは、特別な行事で着ようと思っているの。汗や雨で濡らして汚したくないから。」


 ルカも顔色を変えず冷静に対応する。ルカが彼女の尋問に答えた後、その女性は詮索するように静かに黙り込んだ。

 流れていた音楽が聞こえなくなるほど、重く苦しい静寂が部屋の中を包んだ。自分の呼吸音が煩わしく思うほどの緊張感。

 そしてその女性はゆっくりと口を開ける。

 

「恐れ入ります。そして、今宵はどのようなサービスをお求めでしょうか?。」


「いくつか服を仕立ててもらいたいの。」


「左様でございますか。では、今回はどのような目的でお召しになる服をお望みでしょうか?。ご要望に合わせて仕立てさせていただきます。」


「いや、今回は私ではなくてね……。」


 ルカが優しくほたるの背中を押す。先程の会話もあってか、表情が固まり目も泳いでいる。ルカはほたるに小さな声で「大丈夫」と囁きかける。

 

「は、じめまして……。」


 カタコトで言葉を絞り出す。ほたるは誠意を見せるために、彼女の目をじっと見続けた。

 女性はというと横目でほたるのことを凝視する。すると、ほんの微かに彼女の眉の力が緩まる。同時にゆっくりとほたるの方へ頭をうごかし、ハキハキと語りかける。


「その髪飾りとネクタイリボン。見たことがありません。どこのブランドのものですか?」


 それは服に関する言及だった。ほたるに関しては、微塵も興味が無い。彼女のほたるへの認識はその程度であった。


「じ……自分で作りました。」


「自分で?生地は何を選びましたか?」


「リボンは、シルクサテンのを使ってまして、髪飾りはコットンのレース生地を使って作りました。」


 女性の顔は徐々に険しい表情から、脱力した自然な顔つきになっていく。愛も変わらず服の話しかしていないが、それでもほたるは自分の作った物を真剣に聞いてくれる事に内心喜びを感じていた。ほたるも次第に緊迫感が抜け、舌が回るようになってきた。


「普段から身につけているようですね。」


「はい!どれも、初めて作ったものなので。愛着があります。」


「素晴らしい。」


 その女性は今まで見た中で1番分かりやすく笑みを浮かべた後、胸ポケットから小さな紙を取り出す。


「私は、装飾芸術同好会の部長を勤めております。マエストロとお呼びくださいませ。立ち話は窮屈でしょう、どうぞカウンター席に。」


 カウンターテーブルに置かれた、黒を基調とした高級感のある硬い素材の紙は、彼女自身の名刺だった。


  聖百合園女学院大学 装飾芸術同好会

  マエストロ

            Tel-○○○-△△△-✕✕✕

 

 そう書かれていた。本名なのだろうか?。

 ほたるは名刺を受け取って高いカウンター席に座ろうとすると、ルカは彼女に小さな声で「よくやった!」と褒めてくれた。


「是非あなたの名前を聞かせてください。」


 マエストロはショットグラスにトクトクと透明なパチパチとした飲料を注ぐ。中にはダイヤカットされた氷が入っており、パキッと音を鳴らしグラスの下には万華鏡のような美しい反射光が煌びやかに映されている。

 彼女はゆっくりとほたるの方へグラスを押して滑らせて渡す。

 ほたるはそれを両手で包み込み、彼女の質問に答える。


「明星ほたるです。」


 ほたるが自分の名前を口にした瞬間、マエストロの顔がクイッとほたるの方に向く。


「もしかして、明星つかさ様のご姉妹の方ですか?」


「お姉ちゃんを知ってるんですか?」


 予想外の人物の名前にほたるは驚く。姉がこの世界に来ていたことは予め知っていたが、まさか早くも彼女を知っている人物に会うとは思ってもいなかったのだ。


「ええ、もちろん。明星つかさ様もここの利用者様です。そして、私はあの方には多大なる御恩がございます。詳しい事は言えませんが、今この店を経営できているのもあの方のおかげでもあります。」


 先程と比べて、マエストロの顔はとても穏やかになっていた。昔を懐かしみ、楽しそうにほたるに思い出話を語っている。姉のことを知っている。そして姉をよく思ってくれていることが何よりも嬉しかった。


 「そうなんだ……。」


 「それでは、今日はどのようなサービスをご希望でしょうか。」


 彼女はほたるに優しい声色で伺う。その顔は先ほど見せた氷のように冷たい表情ではなく、親が子供を見るような愛しさに溢れた顔をしていた。

 マエストロと名乗るこの女性。改めて間近で見るととても整った綺麗な顔立ちをしている。真紅の瞳をじっと見ていると、なんだか、吸い込まれてしまうような。いけない、耳が熱くなるほど言葉に詰まる。ほたるが回答に遅れても彼女はじっと返事を待った。

 そしてほたるはマエストロの問いにゆっくりと自分の要求を彼女に伝える。


「制服を……いくつか、仕立てて欲しいんです。できれば、マリー・マリーンズ貿易学園の指定されているデザインで。」


 マエストロは左手でペンを持ち、小さな用紙にカリカリとメモを始める。

 

「マリーンズでございますね。あの学園は制服のカスタマイズが自由となっておりますが、明星ほたる様は何かご希望はございますか?」


「う、うーん……大丈夫です。オーダーメイドなしでお願いします。」


 淡々と仕事の受注を受ける姿はまさに職人といった様子だった。ほたると会話する時は穏やかな表情で、そして、ペンを走らせる時は顔の力が抜けて真摯な眼差しに変わり、オンオフの差を直に感じられやすい。

 

 「なるほど。モダンデザインがお好きなようで。」


 独り言を呟きふっと一息をついた後、落ち着いた態度でこれからの仕事の計画を伝える。


 「制服は出来次第ご連絡させていただきます。お支払いですが、サービス初回ということでございますので全額無償とさせていただきます。」

 

「え!?い、いいんですか!?」


 ギョッと驚き、ほたるは目を見開く。これには、横で静かに聞いていたルカにも効いたようで、彼女も目を丸くしていた。動揺を隠せないほたるとルカを尻目に、マエストロはつらづらと業務をこなし、「問題ございません」と事務的に答える。服に対してこれほどまでにつよいこだわり。きっとここで仕立ててもらうものは安くはないだろう。高い値になることは覚悟していたが、まさか無償だなんて。


 「あ、ありがとうございます。」

 

 「はい。それではほたる様。またのご利用心よりお待ちしております。」


 マエストロは深々とお辞儀をした。その一連の動作は無駄がなく、本当に美しい。ほたるもすっと肩の力が抜け、彼女が注いでくれた飲み物を目にやると、氷は溶けて結露で下は濡れていた。せっかく入れてくれたのだから、一口ぐらい口にしなければ、とコクっとグラスに唇を当てる。

 薄くなっているが、パチパチとした弾ける舌触り。仄かに香る果汁。くどくなく優しい甘味。これは……


 「(よ、四葉サイダー……。)」



 リンリンリン……


 

 外に出ると、薄暗い部屋の中とは一変して爽やかな青空と陽の光がとても身に染みた。ほたるとルカは大きく息を吸って、「はあ〜〜」と安堵のため息をつく。

 

「すごいわねほたる。あの子と目を合わせて、話すことすら難しいのに。」


「えへへ……ほんとに緊張しました……。」


「初回サービスで全額無償だなんて、私されたことないわよ。」


 ルカは意外なことを口にする。新規のお客さんにはみんなしているものとばかり思っていた。


「そうなんですか?」


「うん。あの子の作る服は高いから、私が入学祝いとして支払うつもりだったのだけれど……相当あの子に気に入られたみたいね。……さてと、制服は買えたから、いよいよマリーンズに向かうわよ。」

お久しぶりです。


この物語は、私が高校時代の頃ちょうどコロナ禍にぶつかり、満足に学生生活を謳歌できなかった経験から描きました。

旅行して足を踏み入れた土地って、現地の人は何気ない日常に思えるのですが、旅行者の我々はそんな風景すら異世界にきてしまったように感じます。

観光地に行くのも楽しいですが、こういう何気ない町を歩いてみるのも大好きです。

私たちが見ている世界は思ったよりも壮大で、いろんな景色に溢れています。

神様からいただいた「感情」とは、そんな景色を美しいと思える、まるで魔法のような贈り物です。


ちょっと不思議で、甘酸っぱい青春物語。


ここまで読んでくれた方、ありがとうございました。

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