04.世界は今日も美しい。
「え……何?」
神薙くんの声が聞こえる……聞こえる!!!!ゲームと同じ声優さんの少し低めの落ち着いた声が!!!!!
私の心臓はバクバクともう、爆発するんじゃないかという位の速さで鼓動していて、顔は熱い。きっと真っ赤だろう。
一凛ちゃんと神薙くんが何か小声で話してるのが聞こえる……きっと私が、穢れか魔物に取り憑かれているんじゃないかという話だろう。
ザリッと、足音が聞こえた。
ザリッザリッっと、境内の玉石を踏んで、誰かがこっちに来る……。
え、え?まさか神薙くん??嘘……神薙くん!?ちょっと待って!まだ心の準備が!!!!
「……速水……さん?」
頭上から声がした…… 神 薙 く ん の 。
うつむいている私の足元に、もう暗いけど影が落ちている、顔を上げたら神薙くんを見上げる形になるだろう……え……私、死ぬじゃん。
「あの……ちょっと一応、目を見せて欲しいんだけど……」
穢れや魔物なんて見ればすぐ分かるじゃーーーん!!!
私、知ってるんだからね!!!!知ってるんだからね!!!!ほっといてよ!もうわかってるでしょ!
そう思いながらも、私もそろそろ覚悟を決める。
私だって、神薙くんが見たい。
大きく息を吸い、吐いた。
そして……恐る恐る賽銭箱の横で体育座りしている体勢で、左側にいる神薙くんの方に……顔を……上げ……た。
「…………」
何と言えばいいんだろう……。
体に電流が走った?
そして、時が止まった?
硬直した?
体がビリビリしたまま動かない。
そして涙が出そうになった。
そして頭に浮かんだのは……。
尊い…………。
「うん……ありがとう……あの、大丈夫……?」
神薙くんが私に話しかけてくれている……。
神薙くんがそこにいる……。
私の涙腺は決壊した。
「あああああああ!!!!神薙くんだあああああああああ!!!!!!!!」
「!」
顔を伏せ、絶叫しながら大泣きしだした私に、神薙くんはビクッとし、おろおろと慌てる。
そう、神薙くんは大人しくて気が弱い……というか、自分のせいで街に穢れと魔物が蔓延るようになってしまったと、責任を感じながら育ったから、暗い性格なのだ。
だから、長い黒髪の前髪で目を隠している……でもさっき、下から仰ぎ見たから、ハッピーエンドのラストで見ることができる、髪を切ったイケメンの、前髪がない瞳が見える神薙くんの様な素顔を見てしまった。
さっきメカクレ神薙くんなら大丈夫かな?って思ったけど、玄関で無理!って、逃げたけど、顔上げたらメカクレじゃない神薙くんとか無理でしょーーーー!!!!推し二番目だよ!!!??ねぇ!!!!!私、あのラストのスチル何時間眺めてたと思うの!!???
もう今、涙腺決壊!!!!
もう今、死んでもいい!!!
いつ死んでもいい!!!!
あ!私、死んでここに来てた!!!!
ありがとう!!!
誰に感謝すればいいのかわからないけどほんとありがとう!!!!
ありがとう世界!!!!
世界は今日も美しい!!!!!