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転生したら乙女ゲームの主人公の友達になったんですが、なぜか私がモテてるんですが?  作者: 山下小枝子


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13/24

13~20話

こんにちは、いつも読んで下さりありがとうございます。


諸事情により、一話ごとの更新ではなく、10話ずつのアップで今日で更新を終わらせることにしました。


話は完結していますので、ゆっくり読んでいただければと思います。


こちらの都合でこのような形になりすみません。


何か間違ってる箇所やルビがなくて読めない箇所等ありましたら教えて頂ければ修正いたしますので、よろしくお願いいたします。


それでは最後まで楽しんでいただければ幸いです。

13.父のほほえみに七斗エンドを決意すも、まだ見ぬ最推しに心をはせる・・・くっ!皆に幸せになって欲しい!!!




私がカタカタしながら中腰でそのまま硬直していると、


「ほら!彩衣!帰るよ!!もー!」


と、鈴ちゃんが引っ張ってくれた、しかし足がうまく動かない。

足がもつれ・・・・・あ、ごめん、鈴ちゃん。


「きゃあ!」

「へぶっ!」


私は変な声を出して、階段の上から鈴ちゃんに乗りかかる形で鈴ちゃんもろとも階段から落ちた。


「いった~!」

「いたた・・・。」


私たち二人は階段から落ち、賽銭箱の横で重なり合いながら苦悶の声を上げていた。

賽銭箱の横に何か縁あるな。


と、思っていたら・・・・



「おやおや、パンツ見えるのはおじさん嬉しいけど、かわいいお嬢さんたちが怪我して傷残るのはおじさん悲しいかな。怪我ない?」



頭上から・・・・父親とは別の・・・・攻略したい!!!なんで攻略不可なの!!!

と、思っていたイケオジの声がして・・・・・私はうつむいたまま黙っていた。

すると、


「ちょっと!彩衣!いつまで乗ってんのよ!早くどいてよ!」


鈴ちゃんが怒り頂点で起き上がろうとしている・・・・

私はしぶしぶ・・・・



いや、見たいんだけど!見たいし話したいんだけどね!



無理じゃん!無理じゃね?そうでしょ!?



体を起こし、顔を上げ、九五さん・・・・神薙くんのお父さんで、攻略不可キャラのイケオジキャラを見た。



「あららー、血出てるね二人共。救急箱持ってくるから待っててね。」



そう言うと、九五さんは笑顔で家の中へとゆったりと去って行った・・・・。





「ひーーーー!!!!!!九五っさん!!!!!イケオジに出会えた!!!!

しかも手当!!!手当してもらうとか!!!!!!無理!!!」




私が立ったまま顔面に手を当て、仰け反りながら叫んでいると。



「ちょっとあんたね!!!わけわかんないこと叫んでないで謝んなさいよ!!!!」



おっと鈴ちゃんの怒りがMAXだ。やべぇ。

立ち上がりながらスカートや服の砂をはらいつつ鞄を持ち直して髪を整えている。


あ、膝から血出てる。



「ごめん!ごめんね、鈴!」



私はさすがに血を見て申し訳ないことをしたと謝る。


「まったく!おかしいおかしいと思ってたけど、最近のあんたほんとおかしいわ!」

「あ、あはは・・・まぁ、前からほら、テンション高めのキャラだし・・・・。」

「それとこれとは別!」

「すみません・・・・・。」

「って!あんたも血出てんじゃない!」

「え?両膝と左手の手のひら!あたしより酷いのに何元気にしてんのよ!」

「あー・・・いや、多分、アドレナリンが大量放出されて・・・・。」

「はぁ?」

「まぁ、ほんと・・・ごめんね・・・・。」


私がしゅんとすると、


「・・・・まぁ、いいけど。あんたがバカやるのは前からだし。」


鈴ちゃんはどうやら許してくれたらしい。


これに懲りて、もうあまりゲームのことに夢中になるのは控えよう・・・・。

いやでも九五さんに会っちゃったら硬直しちゃうだろー。

それは仕方ないよ。

うん。


全然懲りてねぇな、あたし。


まぁ、これからは人を巻き込むのはやめよう。うん。


すると、ガラガラという音と共に九五さんが救急箱を持ってやってきた。



おっふ!九五さん!!!ヤバイ!にやける!!!




「救急箱持ってきたよ~」



九五さんは軽い感じに救急箱を上げて近づいてくる。



近づいてくるーーーーーー!!!!!!!



「ほらほら、階段で悪いけど座って。」



私たちが立っていると、九五さんが、座って。と、促してくれる。


「すみません、ほんと。」


鈴と私は座る。


私は九五さんをガン見していた。



やべぇ・・・本物の九五さんだ。



ゲームの、画面で、何で攻略できないのーーーー!!!!!



と、ジタバタもがいでた九五さんだ・・・・イケオジ・・・・。



はぁ・・・白髪混じりの短髪かっこいい・・・。


シワのあるお顔も素敵です!息子さんに少し似てますね!あ、息子さんが似てるのか!


丸い眼鏡が素敵なんだよな~~~~!!!!神主さんなのに!!!


そしてなんといっても、あご髭・・・・無精ひげっぽい、短い少し白髪混じりのあご髭が



た ま ら な い ~~~~~~~~!!!!!!



ジョリジョリして!!!ジョリジョリして!!!!



などと思いながらガン見していると、



「で、そっちのお嬢さんはオジサンに何か興味があるのかな?女子高生に手を出すのは少しいけないんだけどな~。」



あっはっは。と、笑いながら鈴の手当をしている九五さんは言う。


え!?てか鈴手当してもらってんの!?

え!?


あ、それより答えなきゃ!


私は慌てて答える。


「あの・・・・神薙くんのお父さん・・・かな?って思って。」


と、咄嗟に嘘をつく。わかってるけど。


「お、七斗知ってんの?同級生?」


はい、君は終了。と、言いながら今度は私の方へやってくる。


「うわー、君、凄い血だらけだね。大丈夫?」

「え?あ、はい!大丈夫です!」

「・・・ははは!元気でよろしい!」


九五さんはそう言って、




私の



頭に




手を




乗せた。






(おああああああああああああああああああああ!!!!!!)





必死に叫びだしたいのを堪えて意識を飛ばした。


「じゃあ、膝からやるよ、しみるからねー。」


なんか足に痛み感じてたけどそんなもの意識を飛ばすのに必死でほぼ感じてないも同然だった。



なんとか心を沈ませてた時には私の両膝には、ガーゼがぺたりと貼られていた。


「あとは左手だね。」

「あ・・・はい。」


さっき、マジマジと見ていたせいもあり、時間が経過したおかげもあり、だいぶ私は九五さんに慣れてきた。


でも間近で見るイケオジマジイケオジ。尊いよー。涙出る。


「で、七斗の同級生?」


九五さんが聞いてくる。


「あ!はい!同じクラスです!」


私は慌てて答える。


「へーそうか。あいつ暗いから友達いないだろ。」

「え・・・えーっと。」


私は鈴を見る。


「そんなことないですよ。毎日みんなでお昼ご飯屋上で食べてるみたいですし。」


あー・・・鈴、それは・・・・。


「・・・・そう。」


九五さんは少し低い声で返す。


「で!でも、一凛っていう女子と仲いいんですよ!付き合うのも時間の問題かなー。」


私は慌ててフォローする。


「そうか・・・仲良くやってんのか・・・。」


ふっと・・・九五さんはどこか嬉しそうな表情をした・・・。



九五さん・・・七斗くんのこと心配してるんだな・・・・。



これは七斗君エンドに向けて私も頑張るしかないな!



あ!でも!




そこで私はまだ見ぬ最推しのことを思い出した・・・・。




そう・・・・隠しキャラである、最推しこそ、私的に一凛と最も幸せになってほしい彼なのだ・・・・。






そして私はいつの間にか鈴と一凛を心の中でも呼び捨てで呼んでいる・・・。

慣れって恐ろしい。




続。




14.最近の攻略キャラ遭遇率に賭ける!!!!!!




「一番言っちゃわるいがどうでもいいのが麻日くんなんだよなー・・・・美空先輩にはちょっと幸せになって欲しい・・・で、神薙くんには幸せになって欲しいし・・・・・・でもなーーー!!!やっぱ一番は!!!!!なんで一凛4人いないの!!!!」



私は勉強していたはずなのに、ノートに色々と書きながら髪をぐしゃぐしゃとし、無茶な注文を叫ぶ。


「みんなに幸せになって・・・・ほしいよなぁ・・・・。過去のトラウマとか・・・・思い出とか・・・・傷とか・・・・一凛に癒してもらったり・・・精算してもらって・・・・・・。」


と、私は天井を見上げて思う。


でも、それは無理。


選べるのは一人だけ・・・・。


それはバッドエンドか、ノーマルエンド・・・・・。



「はぁ~あ・・・・。」



私は頭を抱える。


そばにあった時計は8時だった。

まだ8時かー・・・・近くにコンビニあったよな、なんか買ってこようかな。

転生前の悪い習慣が出る。


私はまだ5月でうすら寒いので、薄手の上着を羽織り、お財布を持ち、美女母に許可が下りるかリビングに下りた。




「お母さんー、コンビニ行ってきていい?」

「え!こんな時間に?」


案の定、美女母は驚いている。


「勉強してたんだけど、外の空気吸いたい・・・・」


私は気だるく言う。


「ん~~~・・・・まぁ、いいけど。早く帰ってくるのよ!」

「はーい。ありがとう。」


前の彩衣ちゃんもこういうことたまにしてたのかな?案外簡単に許可が下りたぞ?

と、思いながら私は靴を履く。


溺愛兄がいなくて助かった。

いたら絶対ついてくる。

最近、彩衣ちゃんがうざいと蹴っ飛ばしてたのがわかった。

イケメンでもあれはうざい。めんどくさい。


「いってきまーす。」


いってらっしゃーい。気をつけてねー。

と、小さな声が聞こえるのを聞きながら玄関を閉めて鍵を閉める。




「ふぅ・・・・。」


住宅街を歩き出すと、夜風が気持ちいい。


ふと、私はそういえば。と、思う。

ゲームでは、穢れや魔物が一凛視点で町の至る所に見えたが、私は見えない・・・。

やはり一般人設定だからだろうか。

まぁ、その方がいい。


でも、一般人も被害に遭う事件は起こるから、麻日くんが言ってた廃墟や薄暗い所には近寄らないようにしよう。

ま、今、夜だからどこも暗いんだけどねー。


ははは。と、笑いながら私は近所にある、子供が遊ぶ小さな公園の前を通り過ぎようとした。



ガサッ



と、音がした。


え、やだ。思ったそばから穢れか魔物?

私はビクッとして、おそるおそる遠巻きに公園から離れるように道の端を歩く。




「っ・・・クソッ!」




しかし、私は小さく聞こえたその声に、目を見開き、ピタリと足を止めた。



え・・・・?



うそ・・・・。



私は公園の方を見る。



え?うそでしょ?



いるの???



私は、近寄るか近寄らないか迷う。



その場で目を凝らして探す。



その姿を・・・・。




「っは!」




ブランコの後ろの草むらに、人影がいた。


でも『彼』かどうかはわからない・・・・・・。



どうしよう!どうしよう!!!



でも・・・・でも!『彼』の声を聞き間違えるはずはない!!!!


あと最近の攻略キャラとの遭遇率!!!!!!



行こう!!!!!



私は意を決して公園へと足を向けた。







続。




15.最推しが死にそうなら助けるのは当たり前だろうが!!!!(号泣)




私は、そーっと、そーっと・・・・足音を消して、呼吸も小さく近寄っていく・・・・。

もし、違ってもダッシュで逃げる体勢で。



「っ・・てぇ・・・・・」



草むらに横たわり、小さく聞こえた、刺のある鋭い野性味のあるその声・・・・。


そのつぶやきで・・・・私は・・・・私は確信した・・・・。



体を起こし・・・・とぼとぼと歩き・・・・近づいていく・・・・。



「っ!誰だ!!!!」



とっさに上半身を起こし、身構えた・・・・・その人・・・・彼・・・・・・


私の・・・・最推し・・・・・・・




彪斗あきと・・・・・くん・・・・・・。」




私はぽたぽたと涙を流しながら立ち止まり、信じられない。という表情で、彼の名をつぶやく。


「あ?誰だてめぇ・・・何で俺の名前・・・つっ・・・!」


彪斗くん・・・・私の最推し、不知火彪斗しらぬいあきとくんは、私を睨みつけてそう言いながら苦悶の表情で草むらに顔をうずめた。


「!」


私はハッとする。

公園の街灯で少し見えるだけだが、彪斗くんの体の下には血だまりが出来ていた。


「彪斗くん!!!魔物にやられたの!?怪我!!??大丈夫!!??」


私は泣きながら駆け寄る。


「・・・あぁ?なん・・で・・・魔物のこと・・・・てめぇ・・誰・・だ・・・・」

「そんなことはいいから!!今、救急車呼ぶから!!!!」


私はスマホを取り出す。


「やめ・・ろ・・・・よぶ・・・な・・・・」


彪斗くんは私の手を払い、スマホがカシャンと地面を滑る。


あ、そうか・・・彪斗くんは公には出ちゃいけない存在なんだ・・・どうしよう・・・九五さんに・・・・いやでも間に合わない!


「彪斗くん!とりあえず傷口見せて!薬局行って出来る限りの手当出来る物買ってくるから!!!」


私は最推しに会えたのに、最推しの顔面に嬉々とする余裕もなく、いや、最推しに会えた嬉しさと、最推しが死にそうなこの状況に、ぼろぼろと涙を流しながらそう言っていた。


「・・・いい・・・ほっとけ・・・・」


しかし、彪斗くんはそんなことを言って立ち上がろうとする。しかし、うめいてまた崩れ落ちる。


「いいから!!!!年上のおばさんの言うことは聞きなさい!!!!」


駆け寄って体を支えると、大声で怒鳴る。


「おば・・さん・・・・って、お前・・・・・」

「とりあえず、そこのベンチに移動しよう!」


私は重い彪斗くんの腕を肩に回し、支え、引きずるようにすぐそばのベンチに移動させる。


「どこ怪我したの?」


そしてまだぼろぼろと泣きながらもベンチに仰向けに寝た彪斗くんに声をかける。


「・・・胸・・・ざっくりやられた・・・・・」


そう言われて見た胸は確かに服が破れている。


「服破るよ。」


私は必死で、血まみれの服をビリビリと破く。

みると傷は大きな一本の爪で引っかかれたような物だった。

でも、傷は浅いようだ。

でも、血はドクドクと出ている。


「だい・・じょうぶ・・・だ・・・・傷は・・・浅い・・・・」

「うん、そうみたいだね。よかった。」


私もほっとする。


「じゃあ私、これから薬局行ってくるから!ここから動かないでね!絶対だよ!!絶対動かないでね!!!」


彪斗くんに向かって、私は泣きながら、必死な形相で言う。



「お前・・・・何で・・・そこまで・・・・・」



彪斗くんが怪訝な顔つきで言う。

私が怪訝な顔つきで即答した。




「最推しが死にそうな状態でいたら助けるのは当たり前でしょう!!!何言ってんの!!!!」




「・・・・さい・・おし・・・?」

「行ってくるよ!おとなしく待っててね!!!」


私は涙を拭いながら立ち上がった。


「へんな・・・・おんな・・・・・」


背後で小さくそう聞こえた気がして、乙女ゲーあるある、『変な女』頂いちゃったよ!次は『おもしれー女』か!?と、思いながら、私は薬局へと全力疾走するのだった。





続。




16.本当の私は、本当の私の名は・・・・。




薬局につくと、中にいた人達は私を凄い目で見た。

そりゃそうだろう。

血まみれでぜぇはぁ言っているのだから。


そんなことに構わず、私は財布を握り、かごを持ち、何が必要かと考える。


消毒液・・・ガーゼ・・・脱脂綿の方がいいか?・・・あと包帯・・・・・大量に・・・・お金足りるかな・・・。


そんなことを思いながらまたあふれてきた涙を拭いながらかごに入れていく。

あ!痛み止めと、可濃止めと、解熱剤も買っていこう!

あと食べ物と飲み物!!!


私はレジに行き、案の定お金が足りなくなったので、足りる分になるだけ、食べ物を削り、両手にビニール袋を下げ、公園へと急いだ。


店員さん凄い顔してたな。とか、彪斗くんまだちゃんといてくれるかな。とか。いろんなことが頭に浮かぶ。



お願いだからいて!!!!



と、思いながら必死に両手に食い込む痛さを堪えて早足で公園へと急ぐ。





「いた!」


思わず声が出た。


彪斗くんはベンチに寝てくれていた。


よかった・・・と、私はまた涙があふれ、その場に崩れ落ちそうだったけれど、何とか踏ん張って彼のもとへ行く。



「戻・・・戻ったよ・・・・。」

「ああ・・・・。」



彪斗くんは目を開く。


公園の街灯で、改めて見た私の最推しは・・・・最推しだった。



退魔師の一人だけど、一匹狼で、世間には隠れ、世間には認知されない存在。

一凛ちゃんを影から守り続ける・・・・ぶっきらぼうで不器用で・・・・だけど過去の罪に苦しむ優しい人・・・・。



「っ・・・・」



私は涙があふれてきた・・・・。


「あんだ・・・どうした・・・・。」

「ううん!ごめんね!手当するね!」

「いい・・・自分で出来る・・・・金払う・・・・。」

「いいから!おばさんに任せて!!!!寝てて!!!!」


私はしっかりしなきゃと彪斗くんと押さえつける。


「・・・・お前・・・さっきから・・・・。」

「いいから黙ってて!手当に専念するから!!」

「・・・・・・・・。」


彪斗くんは黙ってくれた。

こんなに人のいうこと素直に聞くキャラだっけ?

弱ってるからかな?

と、思いながら私は公園の水道でタオルを濡らし、彪斗くんの血まみれの体を拭く。

うめき声を少し上げたが、ごめんね、ごめんね、といいながら拭いた。

かまうな。と、言って耐えてくれる。まぁ、耐えるよね。これくらい。彪斗くんなら。


その後、消毒液を傷口にかけ、脱脂綿で消毒する。

これもうめき声を上げるが、私はもう何も言わなかった。


その後、脱脂綿をあて、包帯でキツく巻いて・・・・私の出来る応急手当はここまで。


「はい・・・私が出来るのはここまで。あとは、九五さんの所にでも行ってね。行きたくなかったら、化膿止めと、痛み止めと、解熱剤と、食べ物飲み物出来るだけ買ってきたから・・・・何とか乗り切って。」


私はベンチに横たわる彪斗くんを、ベンチの前に正座で座りながら少しほっとしながらも、心配でいっぱいな表情で見つめた。


「あんた・・・・速水彩衣だろ・・・・。」

「へ!」


いきなり名前を呼ばれて、私は心底びっくりした。


「え、な、何で!!??」


私が慌てていると、


「一凛の身辺調査はしてたからな・・・思い出した。いつも一凛と一緒にいるやつだ・・・・。」

「あ・・・・・。」


そうか・・・と、私は納得した。

そうそう、彪斗くんはストーカーの様に、遠くから一凛を見てるんだよね。

だから私も見てたのか・・・だから知ってたのか・・・・。




でもね、彪斗くん・・・私は・・・本当は・・・本当の私は・・・・・。




涙があふれてきた。



「お、おい・・・何泣いてんだよ・・・・!」



彪斗くんが焦っている。


いや・・・いい。



今は・・・・というか、会って、会話が出来るだけで、ありがたいと思わなきゃ。



「なんでもない!彪斗くんが元気になったみたいだから嬉しくて!」



私は、へへ。っと無理して笑顔を作った。



「・・・・変な女。」

「ふふ・・変な女二回目いただきましたー!」

「・・・ッチ・・・さっきの聞こえてたのかよ・・・・。」

「やっぱり言ってたんだ・・・あ!もうこんな時間!やばい!私コンビニ行ってくるって家出たんだった!帰らなきゃ!」

「・・・・・・・。」

「・・・・・ずっとそばにいてあげたいんだけど・・・ごめんね。」



怪我や病気したときは・・・心細いよね・・・と、思いながら私は言う。



「そんなんじゃねぇよ!早く帰れ!」


「ふふ。」



彪斗くんらしいや。

あ!


私は血まみれになってしまったが着ていた少し薄手の上着を脱ぎ、折りたたむ。



「彪斗くん、これ、枕に使って!上にかけた方がいいならそうして!」

「・・・いらねぇよ・・・。」

「いいから!おばさんのいうことは聞きなさい!!」

「・・・・お前、俺より年下だろうが。おばさんじゃねぇだろ。」

「いいの!ほら!頭の下に敷いたらきっと楽だから!敷いてみな?」



私は無理矢理彪斗くんの頭を少し上げ、その下に滑り込ませる。



「あ!てめ!・・・・・・。」

「・・・どう?」

「・・・・・悪くない・・・。」

「ほらー。」

「早く帰れ!・・・って!」



ムキになった彪斗くんが起き上がり、傷口が痛んだらしく、うめいて、ベンチにまた仰向けになった。



「あああ!帰る!帰るね!!!それじゃあ、お大事にね!!!隠密活動もほどほどにね!!!」



私はガサガサと荷物をまとめ、離れながら言う。


そして、言おうか言うまいか悩む言葉を思い切って口にする。




「またね!」






その後、血まみれ、財布の中は空、上着なしで帰宅した私を、美女母と帰宅していたイケオジ父、溺愛イケメン兄が何事かと大慌ててで出迎えたのは言うまでもない。

言い訳は~・・・・怪我していた野良犬らしき大型犬の手当をしてあげた。と言った。


あながち嘘ではない。はは。





続。




17.嵐の前の平穏な青春。




「あ~・・・昨日は大変だったなー・・・。」



私はそんなことをつぶやきながら歩く。


野良犬手当説明を中々信じてくれず、信じてくれた後もじゃあ保護に・・・という家族を引き止めたり、服や体は血まみれで・・・でも、彪斗くんの血・・・と、ちょっと変態チックに嬉しかったり。ふはは。


風呂場で少し舐めたのは秘密です。



朝、通りがかりに公園に行ったら、ベンチはもぬけの殻。


まぁ、いるわけないか・・・・あの警戒心の強い彪斗くんが。

無事だといいけど・・・・。



そうこうして歩いてると、



「彩衣ちゃーん!」



お、一凛。


「おはよー!一凛ー!」


今、一凛はどの辺まで進んでるのかな?

誰ルートに向かってるのかな?


私としては彪斗くんか神薙くんを幸せにしてあげて欲しいんだけど・・・。


と、思っていると。


「あの・・・彩衣ちゃん・・・・。」

「ん?」


会ってそうそう一凛は思いつめた表情をしている。


「あの・・ね・・・・今日の放課後時間ある?あの・・・相談があるんだけど・・・・。」

「・・・・・・。」


あーーー!!!なんかあったあった!!!友達に電話で相談するやつね!はいはい!!!

ん?でも電話じゃないっけ?直接?まぁいいけど。


「いいよー!鈴も呼ぶ?」


と、私が返すと、


「あ、彩衣ちゃん・・・だけに・・・・。」


え・・・なんで?

あー・・まぁ、選択肢も電話でどっちかだったから・・・まぁいいか。


「じゃあ、放課後どっかでお茶しながら話す?」

「んー・・・できれば人のなるべくいない所で・・・。」


んん?


「んー・・・じゃあ公園いこっか!あのー・・・神内中央公園!あそこ広いからどっかのベンチで!」

「あ、うん!」


一凛の表情が少し明るくなった。

よしよし。これで今誰ルートに進もうとしているのとか聞き出せるぞー。

私としても得だ。


「じゃあ、鈴には二人で帰るって言わないとねー。」

「あー・・・うん。」

「まぁ、鈴ならわかってくれるか!あ、でもお昼たまには一緒に食べたいって言ってたよー。」

「え!あの鈴ちゃんが!?」

「そう!あの鈴が!・・・だから今度時間あったら三人で食べよ。」


私は笑顔で言う。


「・・・うん!みんなに相談してみる!」


一凛は嬉しそうに笑顔で返してきた。


青春青春。


「私がなんだってー。」


「おっと鈴ー!」

「あわわ!鈴ちゃん!」

「何話してたのよ。」

「いやー・・・そう!今日の放課後二人で用事あるから鈴は仲間外れにしちゃうねー。って。」


私は笑いながら言う。


「・・・あーいいですよ。仲間外れは先に行きますよ。」

「あー!鈴ちゃんごめんね!ほんとにごめんね!今日だけだからー!」

「あははは!」



私は平穏な青春を満喫していた。




これから巻き込まれるはずもない展開に巻き込まれる、



嵐の前の静けさだとも知らずに・・・・・・。






続。




18.これは百合ゲーではありません!



「で、相談って何?」



私と一凛は放課後、歩いてこれる神内中央公園の、人気のないベンチにジュースを買って座った。


「うん……えーっと……えっとね……」


オレンジジュースをごくごくと飲みながら、私は切り出されるのを待つ。


何だ?恋愛の相談だよな?

誰の話だろ。


「あの……彩衣ちゃん……穢れとか……魔物って……信じる?」


「ブハァ!!!!」


私は盛大にオレンジジュースを噴いた。


「彩衣ちゃん!大丈夫!?」

「ゴッホ!ゴホ!!!」


そ、その話!!??え???そんなこと話すイベントあった???彩衣に。

私は混乱する。


「え、えーっと……なんかー……この町では都市伝説的にあるよね!」


取り繕って私は口元を拭いながら笑顔で言う。


「あのね……私もうたえられなくって!!!一人じゃ抱えきれない!!!神薙くんとか先輩とかみんないるけど!!!もう無理!!!」


え、何々???どうしたの?

顔に手を当てて膝に突っ伏す一凛に私は驚く。


「あのね!!!!穢れとか魔物って本当にいるの!!!いつもお昼食べてる神薙くんとか美空先輩とか国木田麻日くんとか……あともう一人いるんだけど……その人達とかが退魔師として退治してくれてこの町の平和が保たれてるの!!!で、その原因が私と神薙くんで!私と神薙くんが小さい頃神社の宝玉飲んじゃったから!守り神がいなくなっちゃったから!!だからこの町に穢れや魔物が……っ!」


少し大きな声で必死に私に言葉を伝えると……何か色々限界だったのだろう……一凛はぽろぽろと涙を流し、うぅ……と、泣き出してしまった……。


……正直……私は困っている。二回目だな。



こんなイベントは全ルートやったが、ゲームにはないイベントだ。



た、たぶん。




彩衣に穢れや宝玉のことを一凛が話すイベント……なかったよなー……と、思いながら、私はハッとして、慌てて目の前で泣いている一凛の背をさする。


「い、一凛、大丈夫?」

「信じて……もらえないと……思うけど……」


泣きながら絞り出したその声……いやいや信じますよ。だってプレイしてたんだもん。

でも、ここで信じるって言っていいのかな?

でも、信じないで、何言ってるの?頭大丈夫?とか言えなくない?それ最低じゃん。


仕方ない。流れに乗りますか!



「大丈夫、一凛。信じるよ。私は信じる。」



私はしっかりとした声でそう言った。


一凛はおそるおそる顔を上げた。

涙でぐちゃぐちゃでもかわいいなー、ヒロイン。


「あい……彩衣ちゃん!ありがとう……!!!」


おっと!抱きつかれた。

よっぽどなんか……一人で抱え込んでたのかな……?

ゲームではちゃんと強く道切り拓いてたんだけどなー……。

ていうか、男キャラ何してんのよ!!!

支えあって頑張れよ!!!!


「誰か……神薙くんとか、先輩?とか話聞いてくれなかったの?」


私は背中をぽんぽん叩いて、それとなく話を聞き出そうとする。


「みんな……みんな……私によくしてくれるけど……私の力が目的だし……私……もっとがんばらなきゃがんばらなきゃって……もう限界で……相談したいけど……誰に相談したらいいかわからなくて……本当は……いけないけど……彩衣ちゃんなら……彩衣ちゃんになら話せると思って……」


んんー?何でそこで私が出てくる?そこで相談した相手ルートになるんだろ?


「なんで……私になら……って思ったの?」


試しに聞いてみる。


「わかんない……頭に浮かんだの……」


ええーーー、なにその理由ーーー。


「彩衣ちゃん……いつも明るいし……ちゃんと言うことはっきり言うし……笑顔で……明るくて……頼もしくて……」


ねぇ……ちょっと待って……さっきから思ってたんだけどさ……これ……百合ゲーじゃないよね?


「だから、彩衣ちゃんに相談しようって思って……たぶん……あとですごく怒られると思うけど……彩衣ちゃん!」


一凛が私から離れた。



「私と一緒に!神薙くんやみんなと!穢れや魔物退治して!」




「え……えええええええええええ!!!??」





私はまさかの展開に、静かな公園で、絶叫していた。




続。




19.私の命は明日の昼までかも知れない・・・どうしてこうなった!




「いや・・・退治・・・って・・・・私、何もできない・・・よ?」


目の前でぼろぼろと涙を流す美少女に、私は困りきって言葉を返す。



「大丈夫!いてくれるだけでいい!いてくれるだけでいいから!!!」



なにそのお守り的な、置物的な・・・マスコット的な?


「でも・・・みんなにも了承得ないと・・・・・。」


私がそう言うと、


「うん・・・それは・・・・申し訳ないんだけど・・・・・明日のお昼に!一緒に来て!私が説明して説得するから!」


「ええ!!??」


ええーーー!!!いやーーーー!!!!そんなん絶対修羅場ってか、怒られるじゃん!!!

麻日くんとかめっちゃ言ってくるに決まってるじゃん!!!!いやだよーーー!!!



「もう町の秘密も話しちゃったんだし!きっとみんなも許可するしかないよ!きっとそう!」



ちょ、何、既成事実作っちまえばこっちのもんみたいな・・・・。

一凛ちゃん?あなた本当に一凛ちゃん???


私はほとほと困り果てていた。


「ね!お願い!!私もう一人はたえられない!」


あなたの周りには頼るべく攻略対象の四人の男子がいるでしょうにーーーー!!!!

なぜそいつらを頼らないで私を頼るの!

おばちゃんちょっと意味がわからないよ!!!



私は頭を抱えた。



「・・・・やっぱり・・・ダメ・・かな・・・。」


頭上から小さく悲しげな声が聞こえた。



私は考える。


まぁ、明日の昼は修羅場だろう。


で、どうなる。


NGなら私は殺されるのか?どこかに幽閉されるのか?

おいおい勘弁してくれよ~。

楽しい二次元女子高生青春送ってたのに・・・・。


ん・・・・でもOKなら?



OK・・・なら・・・・あの・・・・一凛でプレイしたルートを実際に体験・・・出来る?



屋上でみんなでご飯食べて?



みんなで町で穢れや魔物倒したり?



何とか神薙くんや一凛の中から宝玉出す方法見つけ出そうとしたり?

まぁ、私は知ってるんだけど。




やば・・・・平穏青春も楽しいけど、そっちの青春も楽しそうだな・・・・。




私の好奇心が顔を出した。




「ん~~~~~~~まぁ!じゃあとりあえず、明日の昼にみんなに聞いてみようか!」




それ次第だしな!私はどこかに幽閉されるかもしれないけど!


「ありがとうーー!!!!彩衣ちゃーーーん!!!!」


一凛がまた泣きながら抱きついてくる。

だから百合ゲーじゃないぞ!






続。




20.命は繋がったが、クソ麻日うぜぇ!




「彩衣ー、お昼食べよー。」


鈴が声をかけてきた。

私と一凛は神妙な面持ちで鈴に向き合う。


「鈴・・・ごめん・・・今日・・・だけ・・・だと・・・思うんだけど・・・私、一凛について行って、屋上行かないといけないんだ・・・そのままお昼食べるかはわからないんだけど・・・・ごめん!今日は一人で食べて・・・くれる・・・?」


その言葉に鈴は・・・・


「・・・・理由は?」


真顔でいう。


「・・・い・・言えない・・・んだ・・・・。」


鈴は大きくため息をついた。


「今日だけだといいけど。いってらっしゃい。」


そういうと鈴は手を振って背を向けた。


「鈴ー!!!ごめんねーーー!!!仲間はずれじゃないよ!!!仲間はずれじゃないよ!!!絶対また一緒に食べようねーーー!!!!」


私は鈴の背中に抱きつく。


「ちょっと!大声で恥ずかしい!!わかったから!早く行きなさいよ!」

「行きたくないんだよーーー!!!私殺されるのーーー!!!」

「は!?なんで!?」

「あ、彩衣ちゃん!」


一凛が止めに入る。


「ごめん・・・行ってくる・・・・。」

「・・・・なんかわかんないけど・・・がんばれ・・・。」


鈴は私の頭にぽんと手を乗せ言ってくれた。


がんばる!


修羅場がんばる!!!


私と一凛は屋上に向かった。




おーおー、この階段背景で見たー。あ、この扉も・・・・。


この先に・・・この先にあの光景が・・・・・。


「じゃあ・・・彩衣ちゃん・・・行くよ・・・・。」


一凛がいう。


「うん・・・・。」


私もぐっと腹に力を入れた。



ぎぃっと屋上の扉の音が鳴り、一凛が扉を開いた。



そこには・・・・・・



「遅かったねー、一凛ちゃん・・・っておや君はこの間の・・・。」

「おせーぞ!・・・って、誰だてめぇ。」

「え・・・速水・・・さん?」



おおー・・・スチル通りの光景・・・・・。


屋上に、机を間隔をあけて置き、各々座ってる。

一凛の席は神薙くんの近く。


麻日くん相変わらず大量の惣菜パン食ってんなー、体に悪いぞ。


と、思っていると、一凛が私の手を握った。

しかたないなーと、私はぎゅっと握り返してあげる。


「あの・・・あのね!みんなに話があるの!」


一凛は三人に向かって話し始めた。


「昨日の放課後、私・・・この子、昔、幼稚園が一緒で、高校で再会したんだけど、親友の速水彩衣ちゃんっていうんだけど、」


おっと、私、親友なのか。

と思いながら続きを聞く。


「彩衣ちゃんに・・・・穢れのことも、魔物のことも、退魔師のことも宝玉のことも、全部全部話しちゃったの!ごめんなさい!」


一凛は頭を下げた。


「ああ!!??何考えてんだてめぇ!!そいつ一般人だろ!!!」


すると案の定、麻日くんが椅子から立ち上がり怒声を放っている。


「ごめんなさい!!!・・・・だけど・・・だけどもう私たえられなくって!!!!つらくて!!彩衣ちゃんに相談しないとこれから戦えなくて!」

「別にお前は俺たちに触れてりゃいいだけだろ!何そんな悩んで一般人に話す必要あんだよ!」

「麻日・・・・。」


うわー案の定、麻日くんの怒鳴り声うるさ・・・だからこのキャラあんまり好きじゃなかったのよね・・・。

まぁ、生い立ちはかわいそうだけどさ・・・生い立ち故のこの気性なのかもだけどさ・・・。


私は一凛の手を、更にぎゅっと握った。


「そ・・・そうなんだけど!私も・・・毎日・・・戦いには出て・・・周り気にしたり・・・みんなの邪魔にならないようにとか・・・ちゃんと力引き出せてるかなとか・・・たまにどんくせぇとか麻日くんに言われるし・・・・。」


一凛は泣きそうだった。

なんか原因は麻日くんにありそうだなーこれ。


「ボクたちには・・・相談できなかったんだね・・・・。」


美空先輩が悲しげな微笑みで言う。


「君たちはとても信頼し合っているんだね。いいね・・・ボクもそんな女性がほしいよ・・・・。」


美空先輩がポツリと最後、悲しげな表情でつぶやいた。

あー、美空ルートが消えたぞこれ。

どうなんだこれ。

誰ルートだ。


そう思っていると。



「ま、とりあえず九五さんに相談しようか。」



と、美空先輩が言った。


え。と、私は思う。


「はぁ!?こんなん退魔師幹部会議もんだろ!」


麻日くんの言葉に私と一凛の顔がひきつる。


何、退魔師幹部会議って。

退魔師そんなにいるの?幹部?会議?やめて!やめて!!


「まぁ、まずは九五さんに話して見ようよ。ね、神薙くん。」

「・・・はい・・・・山田さん・・・なんか・・・追い詰めちゃって・・・ごめんね・・・。」


神薙くんが申し訳なさそうに謝る。

ああーーーー!神薙くんルートも消えちゃうーーーー!!!


「あ、ううん!私が勝手に!」

「そーだよ!こいつが勝手に悩んで一般人にベラベラ話したんだよ!そもそもお前等のせいで町がこんなになってんのによ!」


どかっと椅子に座り、麻日く・・・いや・・・クソ麻日が大声で言った・・・・。

一凛と神薙くんは、うっと表情を堅くする。


「麻日!」


美空先輩も注意する。

こっのクソ麻日!!!


私は国木田麻日をつい睨んでしまった。


「あ?んだよ。」

「・・・・なんでもありません」


わざとトゲのある言い方で言ってやった。


「ああ?てめぇ喧嘩売ってんのか?」

「売ってません。」


更にトゲのある言い方で明後日を向いて言った。


「てめぇな!!自分の立場わかってんのか!幹部会議にかけたら処分されるかもしれねぇんだぞ!?」


怒鳴るクソ麻日の声がうるさい。

ので、


「じゃあ、九五さんって神薙くんのお父さんでしたよね?相談しといてください。私たちは教室で友達が待ってますのでお昼食べに帰ります。それでは。」


と、一凛の手を引き、私は皆に背を向け屋上から出ていこうとした。


「あ!!おいてめぇ!!!待てよ!!」


あークソ麻日ほんとうるさい。

待てと言われて待つやつがいるか。お前がうるさいからさっさと退散しようとしてるのに。

一凛が思い悩んだのあいつがほぼ原因なんじゃないの?


多分絶対そうだ。

小言・・・ってかツンデレのツンが多かったんだ。


ツンデレとオレサマは実際には絶対、一緒にいたくないからねー。めんどくさい。


「あ、彩衣ちゃん!」


イライラしながら一凛の手を引いて階段を下りた所で、一凛が声をかけてきた。

私はハッとする。


「ああ、一凛!ごめん!なんかあの一年生?がうるさいから話まとめちゃった!」


私は、はははという。



「あり・・・ありがとう・・・・」



一凛は泣いていた・・・・。



私が男だったら一凛、落とせてな・・・うん。



そう思った昼休みだった。





あ、明日の昼までかと思った命つながったじゃん!やったね!




続。

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