12.町も歩けば攻略キャラに当たる。(攻略不可キャラにもだけど)
「チッ……ったく、久しぶりに来たら店は潰れてるわ魔物はいるわ……これも全部七斗のせいだかんな……」
麻日くんはブツブツ言いながらガンガンと看板を蹴っている。
え……え……?
麻日くん……?
私、低身長で、幼いし、生意気であんまり興味ないキャラだったけど、実物見ると結構かっこいいな……。
と、思っていると。
「おい、あんたら怪我ねぇか」
麻日くんは一応心配してくれている。さすがツンデレ。
「あ、はい……私は……鈴は?」
「……私も……」
「そうか……ならあんまもうここには近寄んなよ。あと、閉店した店とか、廃墟とか、薄暗いとことか」
「あ、はい……」
「じゃあ……ちょっと、あっち向いてろ」
「え?」
「早くしろ!」
「あ、はい」
そう言われて私と鈴ちゃんは後ろを向いた。
「おらこっちだ!こい!」
するとそう声が聞こえて……
「ん?あ!」
私は振り返った。
そこにはもう、麻日くんの姿はなかった。
きっとそこにいた魔物を人気のない所で退治するために連れて行ったのだろう……。
はー……さすがツンデレ……デレが響くわー……。
私がそう思って放心していると……。
「な、なんだったの?彩衣の知り合い?」
「え!あー……いや、多分初対面」
私は、あはは。と、答える。
「でも……名前呼んで……というか叫んでた……よね?」
「んー?多分、人違い。しかし、看板落ちてきて危なかったねー。あの人が助けてくれたんだね。今度お礼しなきゃ」
「そうだね」
「行こ」
私と鈴は立ち上がってスカートをはたくとその場を立ち去った。
「で、ラストは神内神社。もうここで終わりでいい?」
「いいでーす!ありがとうございました!」
その後、私たちは私がマップ選択で選んでいた公園や美術館などを周り、最後に神社へとやってきた。
どの場所も背景絵で見た通りの場所で、私はきゃっきゃっとはしゃいでいたのを鈴は不思議そうに見ていた。
「で?神社に来て何するの?お祓い?おかしいから」
「お祓いじゃない!少しじっくり見て、お参りして帰るだけ!」
「そう……」
はー!神内神社!!!聖地巡礼!聖地中の聖地!!!!
境内もいいけど……この中に宝玉が奉られてたんだよねー……。
私は賽銭箱の裏に周り、今はないけれど宝玉が奉られていたとおぼしき、あのスチルの場所を見ようと格子の曇りガラスになっていない部分をのぞき見ようとする。
「ちょっと彩衣!何してるの!やめなさいよ!」
鈴が注意してくるが……見たい!!!
幼い日、一凛ちゃんと七斗くんが、一凛ちゃんが引っ越すのが悲しくて、この宝玉を飲めばまたきっといつかまた会えると宝玉を飲んだあのスチルの場所を!!!
物語の始まりの場所を!!!!!!
と、覗いていると……。
「おや~?かわいい泥棒さんかな?」
私の心臓がドクンと跳ねた。
その言葉にではない……。
その声にだ。
だって……
その……声……は…………。
「あ、すみません!神主さん!すぐやめさせますので!」
神主……さん……。
それは……つまり……。
私の心臓はドクドクと張り裂けそうだった。
ヤバイヤバイヤバイ!
今日、二人目!!??二人目!!!!????
しかも攻略不可だけど、このキャラは!!!!!
「ん~?そんなとこ覗いて何してるのかな~?」
この声は!軽い調子で渋い声のこのキャラはーーーーー!!!!!!
私は意を決してゆっくり振り返る…………
鈴の横で、袴姿の白髪混じりの短髪あご髭眼鏡の
その……その……イケオジは…………
(九五さんキターーーーーーーーーー!!!!!!!!)
私はその場で目を見開いて硬直して動けなかった。
ひょっとしたら一番の推しキャラかもしれない。
そんなキャラだった。
九五さん……イケオジ……いる……そこにいる……。
今日はなんなんだ……麻日くんにも会うし……九五さんにも会った……。
町を歩けば攻略キャラに当たるのか……九五さんは違うけど……。
私は泡を吹いて倒れそうだった……。




