01.社畜アラサー女から、二次元乙女ゲーム女になれました!!
「彩衣ちゃん、彩衣ちゃん!」
「!」
私はハッと目を覚ました。
そこは夕暮れの学校……目の前には……。
「え!?」
ガタッ!と、私は驚いて椅子から立ち上がる。
「どうしたの?彩衣ちゃん?」
その子……見覚えのある……私がモニター越しに毎日見ていた少女、山田一凛は驚いた表情をしている。
「え、え!?」
私は辺りを見渡した。
そしてハッと気づいた、さっきまでの出来事を……。
そう、私は田舎に住むごく普通の20代後半の実家住みの社畜だ。
帰宅しようと結構車の多い道を走っていた。
そこに猫だかたぬきだかが飛び出してきたのだ。
家で愛猫もいる私に、引けるわけもない。
「ぎゃああああ!」
と、叫びながらハンドルを切った。
そしたら、まぶしい光と共に多分あれ、トラック。
ガッシャーンって大きな音と衝撃……。
記憶があるのはそこまでで……気づいたら彩衣ちゃんって起こされて、ここ……多分、私が最近プレイしてた乙女ゲーム。
『宝玉の記憶~目覚めし少女と4人の退魔師~』
の世界……に、え、最近ネットで読んでる、流行ってる、転生ってやつ?
いや、まだ生きてて見てる夢かなぁ……それともがんばって働いてたから神様からのご褒美でちょっと乙女ゲーの世界体験させてくれてるとか……?
え?なんなの?ほんとなんなの?
正直、今、私は、とても混乱している。
「もー、彩衣ちゃんどうしたの?早く帰ろう!暗くなっちゃうよ!」
一凛ちゃんは机に両手をついて、むくれた表情をしている。
(うわーうわー、二次元だ。一凛ちゃんだ……顔が二次元だ。でも、平らじゃない……ぬるぬる動いてるし……人間みたいに……)
私はこのゲームの主人公、プレイしていた少女、一凛ちゃんをまじまじと見てそう思う。
しかし、そこでハッとした。
「か、鏡!鏡ある!?」
私は一凛ちゃんに問う。
「鏡?……はい」
一凛ちゃんは鞄をごそごそとあさり、手のひらサイズのコンパクトミラーを渡してくれた。
私はつばを飲み、その鏡を恐る恐る開く。そこに写ったのは……。
「おわーー!!!!私!私!二次元!!!彩衣ちゃんだ!!!」
思わず満面の笑みで大声で叫んだ。
一凛ちゃんが驚いてドン引いている。
しかしそんなことには構わず、私ははしゃぎまくる。
「すごーい!彩衣ちゃんだ!目でっか!すご!二次元!え、どうなってんのこれ!あ、いた!目に手入れると痛い!」
「あ……彩衣ちゃん……?」
そんなことを立ち上がりながらくるくる回って歓喜しながらやっていると、一凛ちゃんがドン引きしながらも、さすがに恐る恐る声をかけてきた。
「…………」
私はパタリ。と、鏡を閉じる。そして鏡を一凛ちゃんに渡しながら、
「帰ろっか。」
と、何事もなかったかのように、笑顔でほほえんだ。
「う、うん……」
一凛ちゃんは動揺していたが、私はなんだかわからないが、社畜のアラサー女から、二次元乙女ゲー女子高生に、たとえ主人公じゃなくともなれたのなら!これは楽しむっきゃない!と、心の中で思ったのだ。
よーし!二次元生活楽しむぞ~~!!!