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9話 小さい頃の冒険

 あれはボクとレィナちゃんが10歳の頃です。


 レィナちゃんが王都の城壁の外に出てしまった事があるのです。




 ボクたちが住んでいる王都は三重の城壁で守られています。



 ボクやレィナちゃんの家は一番内側の城壁の中にあります。


 ここは王城や、貴族たちのお屋敷がある地区です。


 一応、ボクの両親もレィナちゃんの両親も貴族という事になっています。


 全然、それっぽくないのですが・・・




 城壁の一つ外に出ると、そこは商業地区です。商店街や学院はここにあります。


 商会の人や研究者、技師の人などが住んでいます。




 さらにその外側の城壁をくぐると、そこは一般市民の住居や、農作地、一部自然なままの森林などがあります。



 もう一つ外側の城壁の外に出ると、そこは完全に王都の外です。



 城壁の中で魔物に遭遇する事は、まずありませんが、最後の城壁の外側は、いつ魔物や盗賊に遭遇してもおかしくない場所です。




 その日、ボクは家の前を走り抜けていくレィナちゃんをたまたま見かけました。


 それ自体は結構よく見る光景だったのですが、その日は少し違ってました。



 ・・・レィナちゃんの目からは涙がこぼれ落ちていたのです。



 ボクは、レィナちゃんが泣くところをめったに見た事がありません。


 気になったボクは、家を出てレィナちゃんを追いかけました。



 家を出た時には既にレィナちゃんは走り去っていたのですが、レイナちゃんが走り去った方向は、城門の方だったのでボクも城門に向かいました。


 城門の衛兵さんに尋ねるとレィナちゃんの事は覚えていたらしく、商店街の大通りに向かって走って行ったと教えてくれました。


 その後も、道の途中で人に尋ねると、レィナちゃんは目立つので大抵の人が覚えていて、レィナちゃんの行先を教えてくれました。


 そうして、レィナちゃんの足取りを追っていくと、一番外側の城壁の城門のところにたどり着きました。


 城門では、衛兵の人たちが何やらざわついていました。


 ボクは衛兵の人に尋ねました。


「ここに赤い髪の女の子が来ませんでしたか?」


 すると衛兵さんたちは一斉にボクの方を見て、その中の一人が答えました。


「ああ来たとも!その子が城門の外に出てしまったんだ。それで今から捜索に行こうとしていたことろだ!」


「だが、その子供は大人よりも足が速かったんだ!今から追いかけて追いつけるかどうかわからない。それで対策を相談していたんだ」




 大変な事になりました!


 王都の最も外側の城壁の外側は、普通に魔物に遭遇してもおかしくない場所です。


 子供が一人で出ていく事は、まずありません。




「その子はどの方角に向かったか分かりますか?」


「城門の上から見ていた見張りの話じゃ、街道からそれて左側の森の中に入って行ったって話だ。街道沿いだったら追いかけて連れ戻す事も出来たが、森に入られると捜索するだけでも大変な人手が必要だ」



 ・・・左側の・・・森の中?



「ボクが連れ戻します。これを貸して下さい」


 城門の詰め所には有事の際のために武器が多めに用意されています。

 ボクはその中のレイピアを一本手に取って、衛兵さんたちの間をすり抜けて城門の外に出ました。


「うわっ!お嬢ちゃんまでなにするんだ!」

「また武器を持って行かれた!」

「この子もなんて速さだ!」


 後ろで衛兵さんたちが叫んでいます。


「すみません!レィナちゃんを見つけて必ず連れ戻しますので!」


 ボクは走りながら衛兵さんたちにお詫びを言いました。




 ボクは街道を走り、左手に見えてきた森の中に走り込みます。


 それほど鬱蒼とした森ではなく、視界は悪くありません。


 このあたりだと、まだ、危険な獣や魔物は出てこないはずです。



 そう、ボクは何度かこの森に来た事があります。


 ボクの両親やレィナちゃんの家族と一緒に何回もピクニックに来た事があるのでした。




 危険度が少ないとはいえ、ゼロではない場所です。

 普通は子連れでピクニックに来る場所ではないのですが・・・



 ボクの両親とレィナちゃんの両親がそろっているのです。


 多少の魔物が出ても・・・最悪『上級の魔物』が出たとしてもたいした問題とは思っていない人たちです。



 休日になると、王都の城壁の中にある小さな森は人で混雑してしまうので、ボクたちの両親は平然と城壁の外に出かけていたのでした。



 この森にはきれいな景色の場所がいくつもあり、よくお母さんに案内してもらったのです。



 それから、レィナちゃんとボクとお父さんの三人で探検ごっこをした事もありました。


 おそらく、レィナちゃんが向かったのはそれらの思い出の場所のどこかだと思います。




 ボクは思い当たる場所を順番に回ってレィナちゃんを探す事にしました。



 ・・・それにしてもボクはいつもレィナちゃんを追いかけてばっかりだなと思いました。



 それらしい場所をいくつか回ってみましたが、レィナちゃんはいませんでした。



 ・・・後は・・・


 レィナちゃんとボクとお父さんの、秘密の場所です!




 ・・・でも、その場所は、この森の中で最も魔物との遭遇率の高い場所でもあるのです。


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