86話 主従の契り
「ボクが・・・キラさんの主?」
「はい、以前にも言ったと思いますが、わたしは師匠からの言いつけで、次に出会った魔女に、生涯尽くさなくてはならないのです」
「確かにそう言っていましたが・・・キラさん自身のはそれで良いのですか?」
「・・・わたし自身が、ルルさんを主としてお仕えしたいと、真に願っているのです」
「そんな・・・ボクなんかに・・・」
「わたしは師匠からの言いつけであれば、出会った魔女がどんなに性格が悪く非道であっても、お仕えする覚悟でいました。まさかこれほど素敵な方にお仕えできるとは思ってもおりませんでした」
・・・さすがに持ち上げ過ぎだと思います。
「ただ、一つ大きな誤算は・・・絶対的な主従関係を結ぶつもりだった主に、わたしは本気で恋をしてしまった事です」
「恋って・・・ボクは男ですよ?」
「先ほども言いましたがルルさんの心は女性です・・・いえ、性別など、どうでも良い事です」
・・・それは・・・今なら少しだけ・・・ボクにも理解できます。
ボクも・・・男性の体ですが、男性であるキラさんに恋心を抱いてしまったのです。
「しかしながら、この恋心は今日を持って封印しようと思います」
「・・・それは・・・どうしてですか?」
「わたしは、あくまでもルルさん・・・いえ、ルル様の下僕としてお仕えする所存です」
「そんな!・・・様とか付けないで下さい。それに・・・ボクはまだ覚醒していないので、厳密には、魔女じゃないんです」
「存じております。ですから、まずはその『覚醒』のお手伝いから始めさせて頂きたく思います」
「覚醒・・・出来ないかもしれません。そうしたらボクは魔女にはなれないかもしれないです」
「ご安心下さい。わたしが必ずルルさんを覚醒させてみせます」
「何か、根拠があるのですか?」
「ありません・・・でもわたしはルルさんが覚醒するまであきらめません!・・・それではダメですか?」
・・・何だか強引な理屈ですが・・・勇気づけられた気がします。
ボクの夢を諦めずに応援してくれる人がまた一人増えたのです。
こんなに心強い事はありません。
「わかりました・・・それでは、ボクが魔女になれる様に手伝って下さいますか?」
「では、あなたの下僕と認めてくれるのですね?」
「・・・主とか、下僕とか言われもしっくりきません。お友達ではだめですか?」
・・・すでにお友達以上の関係になってしまっている気もしますが・・・
「あなたがそう望むならその様に接する事はかまいません。しかしわたしにとってあなたが主である事実は変わりません」
とりあえず、お友達として接してくれるみたいなので、安心しました。
「それではこれからも宜しくお願いします」
ボクはベッドに両手をついて頭を下げました。
「こちらこそよろしくお願いします。我が主よ」
キラさんも同じ様に頭を下げました。
・・・一応、これって、主従の契りを結んだ事になるのでしょうか?
その時、ばたんと扉が開きました。
「何してるのですか?あなた達?」
ラナさんでした!
そうです、ここはラナさんの道場でした。
ラナさんが部屋に入ってくる可能性は十分にあったのです。
「あー!ルルってば何キラとエッチな事してんのよ!」
「てめー!ルルはオレのだって言っただろ!」
ラナさんだけでなく、レィナちゃんとソラ君も一緒でした!
「ルルさん・・・あなた・・・」
ラナさんに裸を見られてしまいました!
あれが思いっきりそそり立っている状態では、言い逃れも出来ません。
「あ、あの・・・これは・・・」
「ああ、大丈夫よ。あなたが男の子だって事は知ってたから」
「えっ・・・」
「実はあなたが赤ん坊の時に会った事があるのよ」
「えっと・・・それじゃ」
「ええ、あなたのお母さんとは知り合いよ」
「・・・やっぱり、そうだったんですね」
・・・なんとなく、そんな気がしていました。
するとキラさんが、ラナさんの前にすっくと立ちはだかりました。
「ラナさん、一つだけ訂正させて頂きたい。ルルさんは、体は男性ですが、れっきとした女性です。そこはお間違え無き様に!」
・・・キラさん・・・きりっとした表情で決めましたが・・・全裸のままなのです。
「それはわかったけど、あたしのお腹に当たりそうなそれ!何とかならないの?」
・・・キラさんのそれはいまだに大きくそそり立ったままだったのです。
「これは失礼、ルルさんの麗しい体の余韻がいまだ冷めやらず・・・失礼しました」
キラさんが自分の胸の前で手をかざすと、一瞬でローブ姿になりました。
でも・・・ローブの前側が、大きく膨らんだままでした。
「えー!キラのおちんちん、もっとよく見たかったのに!」
・・・レィナちゃん・・・ストレート過ぎです・・・
「ちっ!オレだって負けねえからな!」
・・・ソラ君!・・・・ソラ君にはまだ無いですから・・・
ボクは脱ごうとしていソラ君を慌てて制しました。
「見ろ!ルルだって負けてねえぞ!」
ソラ君はそう言ってボクのを思いっきり握ったのです!
「ああっ!だめです!ソラ君!」
ソラ君に握られて、ボクのは再び大きくなってしまいました!
「ええ、ルルさんのそれはとても美しいです」
「そういう問題じゃなくて!ソラ君!放して下さい!それからキラさん、ボクの服を戻して下さい!」
「ちぇっ!ルルのを使ってキラと勝負したかったのに!」
・・・一体何の勝負ですか?
ソラ君はしぶしぶ手を放してくれました。
「ではルルさん、服を元に戻します」
キラさんがボクの前に手をかざすと、ボクの服と装備が元の様に装着されたのです。
「汚れたところはきれいにしておきました」
「あっ・・・ありがとう・・・ございます」
あそこが大きくなったままだったのでやっぱりきついです。
でも、ようやく恥ずかしい姿を隠すことは出来ました。
「どうやったの?今の?」
見ていたラナさんが、驚いた顔で質問してきました。
「えっと、手品です!手品!・・・キラさんは手品が得意なのです!」
・・・かなり苦しい言い訳です。
「ふーん、たいしたものね。まあいいわ、じゃあ、あなた達、ベッドはきれいにして帰ってよね」
ラナさんはそう言って部屋から出て行きました。
「それじゃ、ルル!さっきの状況がどういう事か説明してもらいましょうか!」
「ああ、そうだな」
しかし今度は、レィナちゃんとソラ君が、ボクに迫ってきたのでした。




