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80話 念の極意

「ルルもさっさと終わらせろよ!」



 ソラ君に発破をかけられました。


 ソラ君は、かろうじて勝ったものの、既に体力の限界みたいで、意識を失いかけていました。


「あんたの勝ち方は反則じゃないの!」


 レィナちゃんも意識を失いかけていたのに、ソラ君への減らず口だけは欠かしません。


「へっ!勝てば何でもいいんだよ!」


 既に体を動かせない程疲れているのも関わらず、二人は意識を失いかけながらも言い合いを続けながら、それぞれ、対戦した門下生の人達に運ばれて行きました。




 そんな二人を横目で見送りながら、ボクはラナさんに意識を集中し直しました。 


「では遠慮なく行きます」


「ええ、かかって来なさい」



 ボクはこれまで僅かな『念』を使って身体能力を少しだけ向上させて戦っていました。


 その『念』の量を少しだけ増やしてみます。


 それと同時に、今まではレイピアには『念』を込めていませんでしたが、レイピアに『念』を送ります。


 そう、ボクのレイピアは『念』を込める事により攻撃力が上がるのです。




 ・・・ただ、ボクの場合、それに加えて別の効果も発生します。




 ボクはそれを過去に二回使っていますが、いずれも自分の意志で発動したわけでは無く、偶然使えただけでした。


 しかし、それから鍛錬を重ね、その時ほどの威力はありませんが、ほんの少しだけなら使えるようになってきているのです。




 ラナさんの片刃剣に向かって、ボクは真正面からレイピアを打ち付けます。


 全身に巡らせた『念』を増加させたために、体が軽くなり、自分の動きが速くなったのを感じます。


 レイピアの剣速もこれまでより数段速くなっています。


 そして、正面からぶつかり合った片刃剣とレイピアは、本来の質量差を無視してボクのレイピアが押し勝ち、ラナさんの片刃剣を吹き飛ばしていました。


 おそらく、ラナさんの片刃剣も何らかの魔法強化が掛けてあったのでしょう。剣が切断される事はありませんでしたが、ボクの打ち込みの威力に打ち勝つ事は出来なかったようです。




 剣を跳ばされたラナさんが驚いた顔をしています。


「何なの?今の技は?全く見た事の無い技だったわ」



 ・・・『念技』の事も『魔女』の事も話すわけにはいきません・・・



「すみません、今の技の事は・・・話す事が出来ません」


「まあ、そうでしょうね。流派によっては、その極意は門外不出だったりするものね」


「ごめんなさい・・・色々複雑な事情がありまして・・・」



「あっちの子と同じ種類の技も使っていたみたいだったけど、あなたのはそれだけじゃないわね?何か・・・全く別の力も同時に感じたわね」


 ・・・ラナさん、鋭いです。


 ボクとソラ君が、同じ『念技』を使っている事に気がついたみたいです。



 ・・・そして・・・もう一つの力の存在にも。



「そう・・・まるで、『勇者』の力の様だったわね」



 ・・・当たらずしも遠からずといったところです。


 『魔女』の力と『勇者』の力は似ているところも多いのです。



「『勇者』の特性は一代限りで子供には受け継がれないって話だけど・・・親が『勇者』だからって事ではないわよね?」


「・・・すみません・・・本当に、これ以上は言えないので・・・」


「ああ、ごめんなさいね、詮索してしまって。でも、まだその力を自由に使いこなせないみたいね?」




 ・・・ラナさん、本当に鋭いです。




「立っているのが辛そうだけど・・・疲労の限界ってわけでもなさそうね?」




 ・・・そうです・・・実は、ボクは『念』の制御を少し失敗してしまったのです。



 最近は、『念』の制御もだいぶ上達して、精神を集中し、制御できるレベルをキープしながら、ある程度自由に使いこなせる様になってきました。


 でも今は、普段の制御可能なレベルより、ほんの少しだけ強く『念』を使ってしまったのです。


 ラナさんに打ち勝つためには必要だったのですが、その出力を、今のボクは完全に制御する事が出来ませんでした。



 そう・・・余剰に作り出して制御しきれなかった『念』が、ボクの体の『あの部分』に集積されてしまったのです。



 最近は自在に制御出来ていると思って油断してしまいました。


 ボクの体は、なぜか『あの部分』と『念』との相性が良くて、完全にコントロールできていないと『念』が自然にそこに集まってしまう習性があるのです。



 以前に『木馬』と戦った時は、ありったけの全ての『念』を技に乗せて放出したために、全く『念』が残っていなかったので問題無かったのですが、今は、威力を制限しないとラナさんを殺してしまう可能性があったので、中途半端に技の威力を抑えようと意識してしまったのです。


 そのために、行き場を失った『念』が体内に残ってしまったのでした。



 その、余った『念』が全て流れ込んでしまったため、ボクのそれは、限界ぎりぎりの興奮状態になってしまったのでした!



 前にも何度か経験したのでわかりますが・・・これは・・・かなり危険な状態です!


 ほんのわずかな刺激でも与えたら、限界を超えてしまいそうなのです!




 ラナさんとキラさんが見ている前で、絶対にそんな事になる訳にはいきません!




 ボクの附加装備は女の子用のデザインなので、体のあの部分にゆとりがありません。


 その中で、ボクのそれは限界まで膨張しようとしているのです。


 普段は本当に小さいので全然問題が無く、戦闘中にこの様な事態になる事は想定していませんでした。

 でも、今は、ものすごい圧迫感で、一歩でも歩こうとしたら、その刺激で全てが終わってしまいそうな状況なのです。


 これを切り抜けるには、このまましばらくじっとして、鎮まるのを待つしかないのですが、それはそれで、絶対に二人に変に思われてしまいます。



「ねえ、ほんとに大丈夫?さっきから足が震えているし、顔色もかなり悪くなってきたわよ?」


「だ・・・だい、じょうぶ、です。しばらくしたら治まります」


「呼吸も荒いじゃない。部屋を貸してあげるからそこに行って休んでいいわよ?」



 ・・・本当に、今は歩く事さえできないのです。


 部屋に行って休もうにも、体にほんのわずかな刺激でも与えたら本当に危険な状態なのです。




 しかし・・・




「わたしが部屋まではこんでさしあげます」




 キラさんがそう言って、ボクを抱きあげてしまったのです!



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