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70話 新たな旅と新たな問題

 この国の王都には3本の街道が繋がっています。




 一つ目はボクたちが来た南側の海辺の町に繋がる南の街道。


 二つ目は、北側の国へとつながる北西の街道。


 三つめは東側の国へと繋がる東の街道です。




 ソラ君の国はこの大陸の一番東の果てにありますので、ボクたちは東側の街道へ進みます。




 移動は魔動馬を使いますが、キラさんの魔動馬は無いので誰かと二人乗りする事になります。




「ルルさん、すみません。ルルさんの馬に乗せてもらう事になってしまって」


「いえ、仕方ありません。それにボクには何も負担はかかりませんから」


「お礼と言っては何ですが、魔動馬の魔力補充はわたしにやらせて下さい」


「それはありがたいですが、キラさんの魔力は大丈夫ですか?」


「はい、普通に移動する分には全く問題ありません」




 キラさんを誰の魔動馬に乗せるか、という話になった時に、レィナちゃんが真っ先に手を上げました。


「あたしがキラを乗せるわ!あんたたち二人は恋人同士なんだし、一人身のあたしが乗せるが一番問題ないでしょ?」


 レィナちゃん・・・あきらかに下心が見え見えです。


「そうですか、それではレィナさんお願いします」




 ・・・そうして最初はレィナちゃんがキラさんを乗せていたのですが・・・




「すみません、ちょっと無理かもしれません」


 レィナちゃんの手綱捌きは例の通り荒っぽく、キラさんには少しきつかった様です。




「じゃあ、オレが乗せてやる」


 次にソラ君が名乗り出ましたが、やはり無理だったみたいです。


 ソラ君も魔動馬に乗ると性格が出てしまってどうしても走りが荒くなってしまうのです。


 キラさんに乗ってもらえなかったレィナちゃんがムキになってソラ君を煽ったので、ソラ君がのってしまったというのもあります。




 そういう理由で、キラさんはボクが乗せる事になったのでした。




「ルルさんの魔動馬は乗り心地が穏やかですね?」


「はい、ボクも激しく揺れるのは苦手なので、出来るだけ揺れない様に操っています」


「それなりに速度が出ていても滑らかに走るのですね」


「馬体が安定する様に足場を選んで走らせています」


「そうなんですか、ルルさんは器用ですね」


 キラさんに褒められて、なんだか少し嬉しい気分になりました。




 東側の隣国へ向かう街道は、それなりに通行人が多いため、魔動馬はあまり速度を上げる事が出来ません。


 今は普通の馬の早足程度の速度で移動しています。


 ソラ君とレィナちゃんはそれがストレスらしく、無駄に左右に飛び跳ねたり、加減速しながら魔動馬を走らせているのです。


 前みたいに道ではないところを走れればいいのですが、この街道は森の中の一本道で、街道以外に魔動馬が走れる場所が無いのです。




「隣国へ抜ければこの森は無くなります」


 不満を抱えた二人に、キラさんが教えてくれました。


「そうだったな。そうしたらペースを上げられるぜ」


「それならあと少しの辛抱ね」




 もうすぐ国境の町に到着します。

 そうすればその先は森が無くなるという事です。



 国境の町は森の外れにありました。


 この国と隣国の国境は、森が終わりその先が山岳地帯に変る地点です。

 山岳地帯の向こうが隣国になります。


 唯一の通り道である街道の、護りの要として城壁に囲まれたこの町があるみたいです。



「今日はここで泊りましょう」


 キラさんが提案しました。


「そうだな、この先はしばらく山道で町が無いからな」


 この町を出たら、一気に山を越えるか、野宿するしか無いみたいです。


「じゃあ、この町で宿を探しましょう」




 ボクたちはこの町に一件しかない宿屋に来ました。




「今日は客が多くて、2部屋しか空いてないよ」


 宿屋の主人に言われました。


「それじゃ、あんたたちは前みたいに一緒の部屋でいいわよね?あたしはキラと一緒に寝るわ!」


 レィナちゃん、いきなりの大胆な発言です!

 一気に大人への階段を駆け上るつもりでしょうか?


「いや、さすがに年頃のお嬢さんと一緒の部屋で寝る訳にはいきません。ここは男女に分かれるのが自然ではないでしょうか?」


「オレは別に構わないぞ」


 ソラ君は全然構わないみたいで、普通に承諾していました。




「だめです!ソラ君がキラさんと一緒に寝るは絶対だめです!」


 でもボクは咄嗟に叫んでしまいました。



 ソラ君は、体は女の子なのです。

 キラさんと一緒の部屋で寝たら秘密がばれてしまうかもしれません。


 それどころか万が一間違いがあったら・・・ってそれはボクも同じかもしれませんが・・・


「どうしたのよルル、ソラが取られるのがそんなに嫌なの?}


「ええと・・・それは・・・」


「別に問題ないでしょ?男同士なんだから!まあ、キラが男好きって言うなら話は別だけどね」


 レィナちゃんが際どい事を言いました。

 レィナちゃんは、ボクとソラ君が男の子の体どうしてそういう関係だと思い込んでいるのです。




「・・・いえ、実はわたしは、男性も女性もどちらも愛してしまう体質なのです」




 ・・・ いきなりキラさんからとんでもない発言がありました!




「ええ?それじゃ、ソラと一緒に寝たらやっちゃうって事?」


 ・・・レィナちゃん・・・ダイレクト過ぎです。


「いえ、男性も女性も好きになる事があるというだけで、誰でも構わず襲う事はありません。当然、お互いに愛し合って、同意が無ければそのような事はしませんよ」




 ・・・まあ、普通に男女の関係でもそれは当たり前の事でした。




 でも、問題はさらに複雑になってしまいました。




 結局この日は、二人っきりにならなければ良いという事になって、ボクとレィナちゃんとソラ君が、三人で同じ部屋で寝て、申し訳ないですけど、キラさんには一人で寝てもらいました。




 ちなみにレィナちゃんは、ソラ君がいてもかまわず全裸で寝ようとしたのですが、それだけは説得してやめてもらいました。


 ソラ君も、相変わらずレィナちゃんがいるのに全裸になって着替えたりと、色々ハプニングはありましたが、ようやくみんな寝静まりました。



 ・・・でもさっき、ソラ君がキラさんと一緒に寝るという話になった時・・・


 ボクは、ソラ君が取られてしまう気がして嫌だったのは間違いないのですが・・・




 ・・・同時にキラさんがソラ君のものになってしまうのではないかという事に対しても、なぜか不安を感じていたのです。




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