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67話 討伐報告

「この調子で次々行くわよ!」


「じゃあ今度はオレがとどめを刺す」


「まあ、いいわ。ルルはまたサポートでいい?」


「ボクはずっとサポートでもいいです」


「何言ってんだ、その次はルルがやるんだぞ」


「・・・はい、じゃあそうします」




「ふふっ、三人は本当に仲がいいのですね」


「ルルとだけだ!」

「ルルとだけよ!」




 ・・・ほんとに息がぴったりです。




 次の魔物は『鱗猿』でした。


 『鱗猿』は猿の様な体形の魔物ですが、全身が堅い鱗に覆われて通常の武器では刃が絶たず、両手の長い爪は全てが鋭い刃物の様になっています。


 この爪が厄介でしたが、附加装備のレイピアなら簡単に切り落とす事ができました。

 レィナちゃんの大剣も、『切断特性』が附加されているので、問題ありません。


 ボクとレィナちゃんで左右の手の爪を切り落としている間に、ソラ君は正面に回って右胸を切り裂いて魔結晶を取り出そうとしています。


 しかし、胸の肉が厚くて、手こずっているみたいです。


「何してるのよ!まだなの」


「奥の方にあってなかなか出て来ねえんだ!」


 時間がかかると、魔物は傷が修復してしまいます。


「ええい!直接もぎ取ってやる!」


 ソラ君は剣を左手に持ち替えて、それを『鱗猿』に刺して胸に取りつき、空いた右手を『鱗猿』の右胸の切り口に突っ込みました!



 ・・・そして・・・魔結晶を手掴みで無理やりもぎ取ったのです!



『鱗猿』は活動を停止し、その場に倒れて消滅し始めました。



「無茶な戦い方するわね」


 レィナちゃんが呆れています。


「この義手、思った以上にすごいな」


 金属製の義手は、鱗猿の体に突き刺しても全く壊れていませんでした。


 ・・・さすがお母さんのお手製です。


「お見事でした。その義手を作ったのは、あの馬を作った人と同じですか?」


「はい、そうです。お母さんが作りました」


「すばらしいですね。自分の手の様に自在に使えるだけでなく、耐久性も高い。それに・・・何か特殊な力を秘めていますね」


「特殊な力?」


「はい、先日ルルさんが放ったものと同じ・・・というかソラ君の剣からも感じましたが、わたしの知らない未知の力ですね?」


 ・・・『念』の事です。


「それをこの義手からも感じたのか?」


「はい、今ソラ君がその力を右手から放っていました」



「そうか・・・」


 ソラ君は右手を見つめて考え込んでいます。


「ああ!なるほどな!」


 ・・・今、ソラ君は『念』を義手に流し込みました。


 『念』は特殊な処理をした物にしか流す事が出来ません。


 ソラ君の義手は『念』を流し込めるように作ってあったのです。


 お母さんはあの短期間でそこまで『念』の解析を進めていたのです。


「こいつはおもしろい使い方が出来そうだ!」


 ・・・ソラ君はおそらく、なにか新しい戦い方を思いついたみたいです。




 その後、同じ方法で残りの『中級の魔物』三体も討伐出来ました。


 ボクの番の時は『三頭熊』でした。

 『三頭熊』は三つの頭のどれかに魔結晶があるので、結局三人で三つの頭を同時に切りおとしました。



 そして、最後の魔物にとどめを刺す時、ソラ君は剣を使わずに最初から義手を魔物の体に突き刺して魔結晶を直接もぎ取っていました。


「思った通りだ!この義手は『念』を込める事で、力を増す事が出来るんだ」


 ソラ君はボクにだけ聞こえる様に小声で話しかけてきました。


「それって、ソラ君の『剣』と同じってことですね?」


「ルルの剣にもその処理がされてるみてえだな。ルルも剣に『念』を込めてるだろう?」


「はい、少しずつ剣に念を込める事が出来る様になってきました」




 そう言えばキラさんが言っていました。

 ボクの剣に未知の力を感じると。


 ・・・そしてボクの場合は、剣に『念』を込めると一緒に『魔女』の魔力も乗せてしまうみたいです。


 キラさんはごまかしましたが、キラさんが感じたのは『魔女』の魔力と『念』が合わさったものです。


 『念』込めた剣などを通してのみ、ボクは『魔女』の魔力を使う事が出来るみたいなのです。




「とりあえずここは片付いたけど、『中級の魔物』はこれで全部なのかしら?」


 レィナちゃんの言う通り、他の場所にもいるかもしれません。


「この森全体から強い魔物の反応はもう感じませんので、「中級の魔物」は残っていない様です。他の『中級の魔物』は別の冒険者が討伐したみたいですね。おそらくこれで最後です」


「キラさんはこの広大な森全体の魔力が検知できるのですか?」


「正確な事はわかりませんが、『中級の魔物』クラスの強い魔力はもう感じません」


「じゃあ、ギルドに討伐報告に行こうぜ」


「そうね!『中級の魔物』5体の討伐なんて、あたしたちのパーティではこれまでで最高の成果よ!」





 王都の冒険者ギルドに戻ると、やはり他にも『中級の魔物』を討伐したパーティーが何組かいて、討伐までのいきさつを自慢げに話していました。


 そんな中、ボクたちも受付で討伐の報告をしました。




「『中級の魔物』5体と『下級の魔物』200体以上ですか!」


 ボクたちが並べた魔結晶を見て受付のお姉さんが大声を出しました。



 すると、それを聞いた他の冒険者たちが集まってきました。


「おいおい、冗談を言っちゃいけねえよ。俺らベテランのパーティでも『中級の魔物』1体を倒すのに命がけだったんだぜ。お前たちみたいなガキだけのパーティーで5体も倒せるわけねえだろ」


 キラさんは一応大人なのですが、この人たちから見れば子供同然という事でしょう。


「君たち三人は下級冒険者ですよね?中級冒険者のキラさんが一人で全部倒したんですか?」


 受付のお姉さんがボクたちに尋ねました。


「いいえ、わたしは囮をやっただけで、実際に魔物を倒したのは彼らです」


「ええっ!下級冒険者の子供だけでですか!」



「おいおい、そんなわけねえだろ!こんなべっぴんの嬢ちゃん二人と、ちっせえガキだけで『中級の魔物』が倒せるわけねえだろうが!」


 

「おい!あんた!ちっせえガキって言ったな!おもしれえ、そのガキとさしで勝負してみるかい?」




 ・・・今の発言でソラ君の闘志に火がついたみたいです。


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